点A
家紋武範様主催『知略企画』参加作品です。
少年たちは夜の街を走る。
溢れる興奮を抑えきれないとでも言うように。
その中の1人が、自らが抱える有名デパートの紙袋の中身を時折、チラチラと覗いている。
少年たちは嬉しそうに、そして、時折、顔を見合わせては、少しだけ悪そうな顔で、ニシシと笑い合った。
少年たちは走る。
彼らの通う高校を目指して。
「ようやく出来たな!」
少年たちの中の1人、坊主頭の光彦が息を弾ませながら話す。
「いや~、大変だったよ。
じいちゃんに作り方は聞いてたけど、いざ作るとなると、こんなに大変なんだな」
紙袋を大事そうに抱える、メガネをかけた優太がそれに応える。
「俺は材料費の方が痛かったけどな。
これで正月まで何も買えねえよ」
髪をつんつんと逆立たせた浩平が悪態をつくと、マッシュルームカットでおとなしそうな隆が申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんね、みんな。
僕のために」
「ばっか!
そーゆーことじゃねえよ!」
「浩平は照れくさいだけだよな~」
「はあ!
なに言ってんだ!
ちげーし!」
光彦にからかわれて、浩平が顔を赤くする。
「いやー、でも、間に合って良かった。
隆の転校前に、一花咲かせてやりたかったからな!」
優太がメガネを中指で直しながら、嬉しそうに言う。
「そうそう!
ホントに、一花咲かせるからな!」
光彦がまた悪そうに、ニヤリと笑う。
「……みんな、ありがとう」
「はっ!
そうだよ、おまえは謝るんじゃなくて、そう言っとけばいーんだよ!」
言ってから、さらに顔を赤くした浩平に、他の3人が顔を見合わせて笑い合い、少年たちは夜の街を駆けていった。