プロローグ
プロローグ
病弱な人生だった。
子供の頃から健康な時は無く、軽度のALS(筋無力症)なのか力も弱く、体力も思考力もなかった。
どうやら自分で食べ物を消化して作る、糖やタンパク質の形状が間違っていたか、受容側であるミトコンドリアの受容体が間違っていて、正常な生命活動が行えなかった。
大腸過敏などもあって七転八倒する事も多く、大腸全摘出でどうにか凌いだが、生き苦しいのは変わらなかった
アメリカのドラマや映画に出てくる「奴はエネルギーの塊だぜ」と言われる人物の逆。
全く力がなくインドア派で、休みの日には一日中倒れているだけ、学校を出てからも体力がなく年齢を重ねるごとに動けなくなってきた。
働き出してから更に弱り、健康診断でも見つからなかった原因不明の病気で、結局20代で余命宣告、
薬のおかげで30代までは生きたが、結局倒れて入院、せめて病室で痛み止めも与えられて、人間らしく死ねたのだけが良かった所だろう。
死後の世界
役所の窓口のような物が地平線まで並ぶ場所に引き出され、順番待ちの列に並ばされた。
生きてる間も配給の列で、死んでからも並ぶのか? それでも窓口が多いので、やっとこさ順番が回って来た。
「ああ、貴方は何世代か前に戦争に行ってね、他の兵隊と一緒に何の罪もない村を焼き払って皆殺しにした罪から畜生道に落ちてね、今回久しぶりに人間だったけどまだ支払いが済んでなくて苦痛で支払った訳だよ」
どうやら生前に少しだけ自分の人生設計を行えるシステムのようで、前世が終わってからも善行や労役でも支払えず、病気の苦痛で支払うことにしたらしい。
それでも知能が低すぎてあらゆることに失敗する人生とか、どれだけ努力してもIQが足りずに失敗する人生とか、健康でも毎日泣いて苦しんで過ごす人生よりは支払いが速いと思って選んだんだったな。
「貴方はまだ勘定が済んでないからな、楽な人生は選べないよ。DV親に育てられて態度が悪ければ虐待死するとか、ネグレクトで栄養失調か凍死、あらゆる能力が低くて地獄みたいな人生を送る、浮気女と結婚して一生別の男の子供を育てさせられて、娘にも妻にも気持ち悪いだの汚いだと笑われて過ごす人生、碌なのは無いな」
人生のコンサルタントだか、役所の担当者もオススメの人生は無いらしく、ゴミみたいな人生設計しかないと宣言された。
「前回は病院もある世界にしたけど、医者も何もない所だとまだマシだよ」
前は病弱で長く永く苦しむ人生を選んだので、その選択肢は出してくれなかったが、今回はその選択肢があるのだろう。
「はあ……」
「戦争は懲り懲りってことで戦争も無しにしたけど、戦争があって戦場の地獄に行く所ならもう少しマシにできるよ」
「いえ、戦争だけは懲り懲りです、平和な所でお願いします」
参戦前は普通の人間だったはずだけど、殺すのに慣れて行くと、どんな汚い事でも命令さえあれば平気で出来るようになった。それだけは避けたい。
「じゃあ、魔物が支配してる世界で戦争はないけど、人間は奴隷か愛玩動物って世界もあるよ?」
「そこでお願いします」
お約束のようにフェンリルとかベヒモスになって、飼い主に可愛がられるなら良い人生だが、愛玩動物の人間に成れるだろうか?
「病弱のチェックは外れないなあ? 寿命もそんなに長くないし、基本は奴隷だから贅沢なんかできないよ、いいね?」
「はい」
保険の契約とか役所の申請とかと一緒で、俺の次の人生はピザのトッピングよりも簡単に決められ、流れ作業で判子を押されて決定してしまった。
「ああ、魔法が使える世界だから、その才能で選ばれて愛玩動物ってコースにしておくよ」
「はい」
もう次の順番が来て、魂の次の入れ物が決定したらしく早々と追い出される。
「アッーーーーー!」
ボッシュートの穴みたいなのに落とされて、早速地上に落とされた。