剣でしか貫けない鎧
スタート:「剣でしか貫けない鎧」って、なんなんですか?
ゴール:だから、文字通り、一切の魔法をはねのけ、物理攻撃も通じなくて、剣以外の武器からも、完全に守ってくれる鎧だよ。
スタート:でも、鎧って、剣から身を守るためにあるようなもんじゃないんですか?
ゴール:まーな。
スタート:それに、なんで、弱点があるんですか?
ゴール:そりゃ、弱点がないとなると、べらぼうに価値も上がるし、作るのも難しい。それに、難しい理屈はよく分らんが、弱点があった方が、魔道具としては、安定するらしい。
スタート:そういうもんなんですか。
ゴール:ああ。
スタート:でも、その鎧、作った人って、完全に遊んでる、っていうか、趣味悪いですよね。
ゴール:それは、俺も認めるよ。
スタート:で、その鎧が?
ゴール:おう、その鎧を、剣の達人が着ている。
スタート:それはたちが悪いですね。
ゴール:しかし、そいつを、倒したい。
スタート:はい。
ゴール:だから、俺たちは、今日から、剣の修業をします。
スタート:……あの、ゴールさんって、絶対、武器とか使うの、苦手ですよね?
ゴール:なんで、分かった?
スタート:いや、性格的に、絶対、そうだと思いました。
ト書き:間を開ける。
スタート:はうっ!
ガシュル:おい、ゴール! まさか、こんな、小娘が、俺の相手になると、思ったわけじゃないだろうな?
ゴール:おい、スタート! 動きがガチガチに硬いじゃねーか!
スタート:はい。
ゴール:いいか? こう考えろ。「なんなら、斬られちまってもいい」。
スタート:はい。
ゴール:「でも、絶対、斬られてやらねぇ」。
スタート:はい。
ゴール:よし! 行け!
スタート:はいっ!
ガシュル:何を言ってるんだ? おまえは?
スタート:はぁっ!
ガシュル:なんだ? こいつ? さっきとは、動きが別人だ!
スタート:はいっ!
ガシュル:くっ! 少しはやるようだが、その程度で、俺に、勝てるとでも、思っているのか?
スタート:はぁぁぁっ!
ガシュル:こしゃくな! はうっ!
ガシュル:かはっ、ゴ、ゴール、てめぇ、後ろから、刺すとは……。
ゴール:卑怯とか、言うなよ? 俺たちは、最初から、2人で1つだった。それを、忘れた、お前が悪い。
ガシュル:ぐあぁ!
ト書き:間を開ける。
スタート:私は、役に立ったんでしょうか?
ゴール:ああ、あいつが、おまえの相手で手一杯になってなかったら、後ろから刺されるなんてことには、なってなかったさ。
スタート:なら、いいんですが。
ゴール:なぁ、この鎧、高く売れるんだが、ここで、つぶすぞ。
スタート:そっちの方が、目的だったんですよね? いいですよ。
ゴール:この鎧は、昔、仲間が使ってたんだ。
スタート:その話、いつか、必ず、聞かせて下さい。
ゴール:ああ、いつか、必ず、な。