天空城を司る者
ライコと司る者は兼ね役も可能です。兼ねれば3人で演じられます。……もったいないような気もしますが。
ゴール:見つかんねーなぁ。
スタート:天空城に入ったのはいいですけど、ちゃんと、帰れるんでしょうね?
ゴール:え?
スタート:まさか……?
ゴール:……帰る方法まで、考えてなかった。
スタート:どうするんですか? 家に帰るまでが冒険ですよ?
ゴール:俺たち、「家」、あったっけ?
スタート:そこじゃありません! ……きゃっ!
ゴール:大丈夫か? 今の揺れ、デカかったな? 行くぞ!
ト書き:間を開ける。
ライコ:破! 散!
ゴール:誰かと思ったら、ライコかよ?
ライコ:ゴールか、ちょうどいい。手を貸せ。ラキサールの鱗3枚でどうだ?
ゴール:悪くねぇな。スタート。やるぞ。
ライコ:こっちだ!
ト書き:間を開ける。
ライコ:見えるか? あそこに「司る者」がいる。どうやらそいつが、暴走したらしい。
ゴール:ふーん、ここ、魔法は?
ライコ:使えん。
ゴール:まあ、遠いが、ギリ、届くな。
ライコ:届く?
ゴール:スタート、これから、おまえを、あそこに投げ飛ばす。あそこにいる「司る者」って、奴と話をつけてきてくれ。
スタート:「話をつける」というのが、よく分かりません。
ゴール:ああ、言い方が悪かった。心を込めて、話をしてきてくれ。
ライコ:ちょっと待て、その娘、魔法は?
スタート:すみません、まったく出来ません。
ライコ:……か、格闘技は?
ゴール:出来るように見えるか? それに、今、それ、関係あるか?
ライコ:じゃあ、なぜ、その娘なんだ?
ゴール:いくら俺様でも、あそこまで投げ飛ばせるのは、こいつだけなんだよ。
スタート:むしろ、私が行くしかないじゃないですか。
ライコ:こいつを、信頼しているんだな。
ゴール:信頼はしていない。しかし、期待している。
スタート:なんですか? それ?
ゴール:スタート、お守りにこれもってけ!
スタート:……本当に、お守り渡された。
ライコ:おまえ、ここは、お守り代わりに、何かを渡す場面じゃないのか?
ゴール:ごちゃごちゃ言ってねーで、やるぞ!
ト書き:間を開ける。
スタート:いたたた……。
司る者:誰だ? いったい、どうやって?
スタート:私、スタートっていいます。あなたが、司る者さん、ですか?
司る者:私を止めに来たのか? 無駄だ……。
スタート:お花を見に行きませんか?
司る者:なに?
スタート:サグリア公園のお花が、今、キレイなんです。一緒に、見に行きませんか?
司る者:何を言っている? 無理だ! 私は、ここから、出られない。
スタート:そうですか。それは、困りましたね。
司る者:おまえは、私を止めに来たのではないのか? 花なら、摘んで、ここに持ってくれば、いいではないか。
スタート:それは、ダメです。お花が、かわいそうです。
司る者:かわいそう?
スタート:それに、私は、あなたと話をしてきて欲しいと言われただけで、止めるようには言われてません。
司る者:そんな、バカな。
スタート:お探し物ですか?
司る者:探し物?
スタート:それは、ここには、ないのかもしれませんよ?
司る者:なんの話だ?
スタート:探しに行きませんか?
司る者:言っただろう? 私は、ここから、出られないと。
スタート:出られるように、してもらうのは、いかがでしょう?
司る者:なんだと?
スタート:よく言うでしょう? 「作ればあります」って。
司る者:……ハハハハハ、ハハハハハハハハハハ。造られて以来、初めて笑ったよ。笑うとは、心地いいものなのだな。
ト書き:間を開ける。
ライコ:静まった。
ゴール:終わったみてぇだな。
スタート:ゴールさん、終わりました。降ろしてください。
ゴール:あ……。
スタート:……また、終わったあとのこと、考えてなかったんですね。本当に、あなたって、人は……。
ナレーション:天空城の司る者に「ゴルシカ」という名が付けられた話は、また、別の機会に語るとしよう。