ただ、邪魔だから。
領主とパン屋とナレーションを一人でやって頂ければ、二人で演じることが出来ます。
ゴール:おまえが、領主か?
領主:いかにも、そうだが? なんだ? お尋ね者のおまえが、義賊でも、始めるのか?
ゴール:い~や? ただ、ここを通るのに、おまえが邪魔なんだ。
領主:通行税を払えば……。
ゴール:あいにく、俺は、一文無しだ。
領主:ただにすると言ったら?
ゴール:すまん。あいにく、俺は、今、すこぶる機嫌が悪い。
領主:言っておくが、ここでは、魔法は使えないし、私は、強固な物理障壁で守られている。
ゴール:物理? ぶーつーりーっ! 物理ですか! 実に、いい!
領主:あ? おい、なんだ?
ゴール:いやぁ、ちょうど、ここに来る途中の遊技場のパンチングマシンが、壊れててよぉ!
領主:は?
ゴール:思いっきり、殴りたかったん、「だっ」!
領主:ば、ばかな? この星の3つの月がまとめて直撃しても、ビクともしないはずの物理障壁が?
ゴール:あっれ~? 一撃で壊せなかった~! ゴールちゃん、ショック~!
領主:待て! 話し合おう!
ゴール:もう1回、遊べる、「ドンっ」!
領主:バカなぁ? 跡形もなくぅ?
ゴール:はいっ! スッペア~!
領主:く、来るなぁ!
ゴール:運命の歯車と神世の時計! かのものの時を巻き戻せ!
領主:ばぶぅ。あばばばば。
ゴール:自分は魔法が使えるように、物理障壁の中では魔法が使えるようにしておいたのが、失敗だったなぁ。赤ん坊から、人生、やり直せや!
パン屋:ゴール様!
ゴール:あ、てめぇは、さっき、俺を、玄関払いしたパン屋。
パン屋:さきほどは、誠に、申し訳ありませんでした。
ゴール:あ?
パン屋:助けて下さり、誠にありがとうございます。
ゴール:何の話だ?
パン屋:ですから、領主の圧政に苦しむ我々を……。
ゴール:知らんなぁ?
パン屋:は?
ゴール:俺は、通るのに邪魔なものが、あったから、どけただけだ。
パン屋:ですが、お礼がいたしたいのですが。
ゴール:じゃあ、パン、くれ。
パン屋:はぁ?
ゴール:おまえ、パン屋なんだろう?
パン屋:そうですが、それでいいのですか?
ゴール:いいも、なにも、俺は、パン屋に、「魚をくれ」とか、言わないぞ。
パン屋:分かりました。さっそく、ご用意させていただきます。
ナレーション:まぁ、これは、数ある隻腕のゴールの伝説の、ほんの始まりに過ぎない。