学園#7
入学から3ヶ月がたちサバイバルの日を迎える。
あれからというものの俺自身の魔法は上達はしていなかった。
魔物と魔族の違いが未だによく分からない、あの廃墟に何度か訪れたがあのドワーフはいないかった。
教師たちがこのことを知らないわけでも無いはずだが、俺たち生徒には何も言わない。目的が本当にわからない。
そう考えてるうちに集合場所の修練場に着いた。
全クラスが同時に集まるのは、入学式以来だ。
この中で何人生き残るのか、などと考えていたが周囲の生徒らはあまりにも呑気にしていた。
「お前ら!ここから魔族の森でのサバイバルを始める。毎日1回はここに戻ってきて討伐数を報告する事だ。それではこの挨拶を持ってサバイバルを開始とする。」
遂に試験が始まった。いろいろな生徒は徒党を組んでいる為遠足にも見えるものだ。
俺は夏川を2人で森に向かった。
魔族の森はこの学園の北の方にある。しかし森に向かうまでにやはりだが森から出てきている魔物がいた。
出てきているのはゴブリンだ。
片手には剣を持ってるが見た感じこの間のドワーフと違い本当に知能が無いように見える。
「はぁ!」
俺は剣を素早く抜きゴブリンを真っ二つにした。
するとゴブリンが弾けそこから本当にビー玉が出てきた。
「本当にビー玉なんだな。」
「ビー玉が出てくるなんて気持ち悪いわね。しかしこれを集めなきゃいけないのだからあんたが回収して持っておいてちょうだい」
別に気持ち悪いほどのものでは無いが、倒した奴が持っておけよと思ったのは口に出さないでおこう。
「なぁそういや夏川はどうしてシュウ自体の誘いを断ったんだ?ただの足手まといなやつになるとは思わないんだけど」
俺は森に着くまでこの無音に耐えきれずに聞いてしまった。
「そうね、ペアだから教えるわこの森自体に怪しさを感じてるわ、ただの魔物がいるとは思っていない、彼がある程度やるのはなんとなく分かる。だけどイレギュラーが起きた時助けられるのはせいぜいあんただけよ。2人も庇えるほど魔法使いは万能じゃないわ。」
ここにきてまさかの他人思いだったことにすごく驚いてしまった。
「お前ってなんだかんだで優しいんだな。」
「や、優しい?馬鹿言わないで、あんたは地獄を知らないからそんな発言が出来るのよ。」
「地獄言ったって俺らはまだ学生だぜ?」
俺自身も呑気なのかもしれない。
「地獄ってどんなことを経験したらそんな地獄って言葉が出るんだよ。」
はたまた興味本位で聞いた。
「私はね、戦地に行ったことがあるのよ。」
「え?センチ?それはどんなところだよ」
「戦場や魔族と戦ったことがあるのよ。ほら私は夏川だし。」
「いや意味わからんよ?夏川だから戦地に行くってどういうこと。」
「あんたね、はぁ〜そういやあんた外国人もどきだったわね。私たちのように苗字に四季がある人物はね日本の魔法士官の中でも別格と言われてるグループなのよ。」
ま、まじか俺のイギリスにそんなのは無かった。いや、あったのかもしれないがそんなのは初耳だ。
「つまり、お前はその中でも別格の位置にいて徴兵されたというのか」
「えぇそうよ。ただね戦場はね本当に生き残るには結局は1人の自力が問題になってくるのよ。まだ私は10歳の時に行ったのよ。5人パーティでね、そしてどうなったと思う?」
大方予想はつくがあえてこう言った。
「どうなったんだ?」
「私以外全滅よ、そして私は逃がしてもらったに等しい。」
今まで見てきた中で1番の怖い顔をしてそう言った。
「そ、そんなにやばいのか戦争は、、なんか悪いなこうなんて言うか聞いちゃって」
「いえ、問題ないわただ未熟だった私が悪いのだから。」
こうして俺は夏川の話を聞きながら森に近づき入り口に立った。
なんとも物騒な雰囲気で、人なんか入ってはいけないみたい黒い霧のようなものがかかっておりいかにもって感じだった。
「じゃあ行くわよ」
「お、おう」
2人で気合を入れ森に入って行った。
サバイバルとはよく言った物で食料や水自体は持ち込みが可であり、ある程度の魔法使いなら自身の魔法ゲートで大量に持ち込めている。
俺自身はやはり魔法は得意じゃないため、オリジナルの魔道具にてカバーをして多くではないがこの日程を切り抜けるだけのものは収納できている。
辺りは長い草や年季の入っている木などで覆われており、視界は悪い。
まだ魔物の気配は感じないが常に気を張らなくてはならないため。いつも以上に疲れがくる。
「とりあえず寝床を確保しないか?」
「えぇいいわよ。」
「小さな洞穴とか探してみるか?」
「いえ、問題ないわ私が土魔法で小さな基地を地下に作るわ」
そう言った夏川はあっさりとここの土地を変形し始め、地下部屋が完成した。
大きさはワンルームの大きさだが2人で生活する分には問題ない。
「じゃあ俺はそこら辺の石を加工して、強化ドアを作るよ。」
仮にも鍛冶屋の息子このくらいは簡単に出来る。
「なら私は増築するように辺りを改造するわ。」
こうして俺たち1週間のサバイバルは地下部屋制作に始まった。
地上に戻り、それなりの岩や石を集めることにした。
辺りはやはり人の入った形跡は全然無い。
毎年この試験をやっているわけではないのか。
すると近くで大きな石の物体が近づいてきたこれは、ゴーレムというやつだな。
そのゴーレムは5mくらいの大きさであり、早速とこちらに大振りなパンチがとんてきたが、俺は軽く後ろに下がり、持ってきた通常の剣で強化魔法を腕に使い、ゴーレムの脚を斬り、相手がバランスを崩したところ、頭を部分かち割るかのように剣を叩きつけ、頭を砕いた。
首のあたりにビー玉があり、それを手で引っこ抜いて見たらゴーレムは動きを止めた。
「お!大切なのはこのビー玉なんだな。」
そう独り言を呟きながらゴーレムの体を回収した。
ゴーレムくらいの石の量があればドアはかなりいいのが作れるな。
俺は地下室の近くに戻り、ゴーレムのパーツを利用してドアを作った。
(ゴーレムドア) 耐久値4500
おー耐久値5000近くが出来た。
これなら防具とかに使っても問題なさそうだな。
実際俺の使ってる魔法反射のローブは耐久値12000であり、色々攻撃とかを受けたりする前提で作ってあるため耐久値はかなり高めに設定されている。
「おーい夏川ゴーレムのドア作ったぞ!」
どこにいるかわからないため大きい声で呼んだ。
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるわ」
そう言って出てきた彼女はゴーレムドアを見て驚いた。
「あんた魔物でドアってどうやったのよ。てかゴーレムのドアって馬鹿みたいに耐久値高いのね。これなら地下室はいい守りになりそうね。」
「まぁ俺は鍛冶屋の息子だからな、加工くらいは得意だと言っておくよ。」
「それより、ゴーレムなんかいたのね。よく1人で倒せたわね。あれは防御力の化け物よ?物理より、魔法で機能停止させるのが定石なのに。」
「え?そうなのか俺はこの剣でだかち割っただけだ。」
「あなた前から思っていたけどなんでそんなに馬鹿みたいな強さがあるのよ。」
「え?俺が強い?そんなの俺からすると魔法が使えるおまえの方が羨ましいよ。」
実際に剣だけど近接でかなり危ないものであり、だからこその魔法で牽制ができたりしないといけない。
それができないアルフレッドは自分を弱いと思っている。
「魔法が封じられたら、あんたは最強の兵士かもね。」
初めて夏川に高評価をいただけた。
「そういや、1人の時魔物は来なかったのか?」
「いや、たくさんきたわほらね」
そう言った彼女は袋から大量のビー玉を出してきた。
1日目自体は安心して終われそうだな。