驚きと、哀しみと
「リオン様!!息子のイージス様が帰ってきました!!」
街の衛生の1人が領主の部屋にドタドタと入ってきた。その部屋にいた男は、少し眉を訝しむようにあげ突然の来訪者に眉をひそめていた。
そして、男は思い出したかのように慌てて敬礼をし、
「大変失礼いたしました!ノックもせずに入室したことをお許し下さい!ですが、たった今息子のイージス様が・・・」
「なんだと!!イージスが、イージスが帰ってきたというのか?!どうやって?!いや、怪我はないのか??無事なのか??一人で帰ってきたのか??」
矢継ぎ早に質問を繰り返したが、男は我慢できないように政務室を飛び出し
「ええぃ!自分で行った方が速いわ!!」
と、街の衛生兵は見たこともないほど慌てる領主をみて返って冷静になるほどであった。
領主のリオン・マクギリスは齢50を超えたところだが、まだまだ筋骨隆々の偉丈夫がピッタリという外見である。もともと、リオンが納めるマクギリス領は王国の西の辺に位置しており帝国との国境線を守る大事な村である。
あくまでも、村なのでそれほど大きいわけではないがこの辺りの村などでは最も大きく賑わっているといえるであろう。
なので、必然とリオンも若い頃から鍛え上げ王国の国境警備隊にも所属し名を馳せていたのだ。何もなければそのまま王都の近衛兵か王国騎士団の騎士団長になっていただろう。
だが、祖父の容態が悪化し、また長男ということもあり仕方なく領地にもどり領主としてやっているわけだ。
事の発端は8年前の王国聖霊祭。人類を救った英雄レイズを祀り、まだ雪融けの時期に国をあげてのお祭りだ。王都だけでなく、各地もこの時ばかりは仕事を休み、商人が行き交い、他国との交流もある場所では色々な人種が集まり正に王国で最も盛大なお祭りといえるだろう。
マクギリス領も例外ではなく、普段なかなかお目にかかれない出店や各地の商人の怪しい道具売り、ライ麦をコネて薄めて焼いたギョザなど色々な屋台が立ち並び、村は大いに賑わっていた。
普段は厳格なリオンもこの時ばかりはいいだろうと、妻のカナタと当時7歳になったばかりの息子のイージス、祖父のレオンと共に祭りに興じていた。
そこに怪しい一団が紛れているとも知らずに・・・