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序章~魔王の場合~
この世は退屈過ぎた。
全てが我を敬い、全てが我を恐れ、全てが我の思うがままだと。その時が来るまではそう思っていた。
生まれた時から魔王として、魔王であれと生きてきた。まるで、絵に描いた陳腐な幼稚話のようにだ。
当然、周りのことも全て配下がやってくれていた。我がやることといえば、イスに座り許可を与えることだ。それでほぼ問題は片付いた。
今思えば嬉しかったのだ。対等に渡り合える相手を。それが例え相対する敵として現れた―勇者であったとしても。
だから、きっとあの時こんな提案をしてしまったのだろう。
あぁ、この者と違う形で出逢えていればと・・・
そして、小さく囁いたのだった。