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序章~勇者の場合~
初めからそうだった訳では無い。
いつの頃からか自分を勇者だと言ってくれる人達が増えた。
自分はそんな出来た人間じゃない。もっと弱くて狡猾で残酷で矮小な人物だとレイズは自分をそう認識していた。ただ、それを上手く隠し気丈に振る舞い、そして人よりも少し剣の才能があった。ただ、それだけの事だと思っていた…あの日までは。
この世界は魔族に侵略され人類は滅ぼされようとしていた。長い戦争により人類は疲弊し、資源も使い尽くし、あとはもう全人類と魔族の全面戦争でどちらかを滅ぼさなければならないところまできていた。
そこに一筋の光が現れ、やれ勇者だの、やれ光の戦士だの、散々もてはやされた挙句魔王と対峙することになってしまった。
もともと、正義感は強い方ではあったが、善悪に無頓着で少々好奇心が過ぎるところがあった。
それ故に魔王の囁きについ頷かずにはいられなかった。
そう、お互い転生し来世にてまた会おうではないか・・・と。