メルキオ街
マイル公爵は自問自答していた。
何故、自分はこのような状況に置かれているのだろうか?
何故、簡単なお願いであったはずの依頼が逆に鎖で繋がれ馬の上に米俵のように積まれているのだろう??
本来であれば、こいつらを消して多額の金と例の奴隷を頂き今頃はベッドの上でラム肉の上質なワインを飲みながら心ゆくまでくつろいでいたはずなのに。
思い起こす度に腸がに抉りそうになるのを抑えながら、今は自分がいかにして生き延びるのかを懸命に考えていた。
何故なら、先程まで護衛をさせていたもの達は全て殺されてしまったのだから。
「あのぉ〜、もう用が済んだようでしたら縄を解いて頂きたいのですが・・・。」
「あぁ?!黙れよこの豚野郎が。人を殺そうとしておいておめおめ返すやつがあるか!せめて黒幕が誰なのか突き止めるまではなしゃしねーよ!!」
「ひぃぃぃ、本当に知らないんですよ〜…旦那達が持ってる封筒を奪うだけの簡単な仕事だと言われただけなんで・・・。」
「それが本当なら、それはそれでてめぇの脳味噌は腐りきってやがるがな。どこの国でも腐った頭の貴族はごまんといやがるな。全く、反吐が出る。」
ビクトールもフリックも貴族に対して余りいい印象は持ってないようだ。
かくいう僕も一応貴族の出ではあるのだが、なにせ誘拐されて久しい。
それに父も厳格な人だったので、このような奴と一緒にされても困ってしまうのだが。
「うーん。困りましたねえ……。このまま、持っていくのも邪魔ですし・・・。かといって逃がすのもおいおい面倒くさそうですし・・・。やはり、殺してしまうのが1番早いのでは?」
「やめときな、イージス。こんなんでも一応貴族だ。メルキオに着いた時に色々面倒なことになるぞ。今はなるべく目立ちたくはないんだ。それに黒幕も気になる。暫くは生かしといてもらえると助かる」
先程からプルプルと頭を縦に振りながら青ざめているマイルをとても器用だとイージスは思いながら、仕方ないと言った表情で頷いた。
道中少し揉め事もあったが一行は無事、メルキオ街に到着した。