繭の中で育つ子供たち。
___普通の人間は?
母親のお腹の中で10か月間、スクスクと大きく育っていく。
母親と父親の愛情を受けながら...。
___特に、母親の愛情は...。
お腹の中にいる赤ちゃんにも強く影響を受けるほど。
母親とは? 赤ちゃんとの最初の大きな絆のはじまりだからだ!
*
・・・だが、しかし!?
高齢化になり、少子化になってしまった今!
子供の数も激減して、このまま行くと?
数年後には、お年寄りしかいない状態になると焦った医学者は?
ある方法で、子供を作る事に成功したのだ!
___それが!
繭の中で、赤ちゃんになる素を入れて育てるという事。
お父さんとお母さんがいない、誰とも関係のない子供たち。
誰の遺伝子も継いでいない子供たち。
血の繋がりが全く関係ない子供たち。
___ただただ、まっさらな子供たちが繭の中で育つ!
その子供を、欲しいと望み親になりたいという夫婦には?
数々の条件が揃えば、その夫婦の元で育てられるのだが!?
*
___一般的には。
この子供たちの役割は? “臓器提供”の為の子供たちなのだ。
年々、臓器提供者が減り多くの人間が死んでいく。
助かる命を救いたい! その願いを叶えるために繭の中で育つ
子供たちを創り上げたのだ。
人の手で、人工的に創られるモノ。
誰とも繋がらない子供たちが、スクスク成長し臓器提供できる歳に
なると? 臓器が欲しいと望む人の所に提供されていく。
___彼ら彼女たちは?
大人になっても知らない者もいるし、知ったところで逃げる者も
いない! 自分の【生】をよく理解しているのだろう。
*
___その中に、マリンとダルという少女と少年がいた。
彼らは? お互い誕生した日も同じで、一緒に成長していき。
ふたりは、恋をしてお互い愛し合うようになった。
『___ねえ、ダル?』
『___うん? どうしたの、マリン?』
『私たち、いつか? この施設の中から出れるのかな?』
『僕らが、大人になったら出れるんじゃないかな!』
『もし? ここから出れたら? ふたりで一緒に住みましょう!』
『大きな庭の一軒家で、子供は二人ほしいね! 僕と君みたいな
可愛い子供たち。』
『___そうね! ずっとこの先も私はダルと一緒に居たいわ!』
『___僕もだよ、マリン!』
___二人は、どんどん成長していった。
少年少女から男性女性と大人の体に変わっていく、、、。
でも? 二人は、一向にこの施設から出る事はなかった。
『___私たち、この先どうなるの?』
『___噂では? 別の施設に移って、何らかの手術をするらしい!
“臓器提供の為の手術”らしいんだよ!』
『・・・その後は、どうなるの?』
『・・・さあね? 僕にも分からないよ!』
『___そんな、私たちはそんな事の為に、この世に生まれてきたの?』
『・・・・・・』
___マリンの悲痛の叫びだった。
ダルも、本当は分かっていた。臓器提供をした、その後どうなるのか。
でも? マリンには何も言えなかった。
マリンの悲しむ顔を、ダルは見たくなかったからだ。
*
___数ヶ月後。
マリンが臓器提供者の為に、自分の臓器を取り出す手術が行われた。
『___ねえ、ダル?』
『___ううん?』
『最後に、私に言ってほしい言葉があるの!』
『やめろよ、マリン! 死ぬ為の手術じゃないんだぞ!』
『でも、言って! “私を愛してるって!”』
『ずっと、愛しているよマリン! 僕は君だけを愛している!』
『・・・私もよ、ダル。』
『・・・・・・』
___マリンは、マリンが言ったようにこの手術で。
マリンは亡くなってしまった。
まさか!? 知っていたのかな、自分の死期を、、、?
マリンの最後の言葉が、今でもずっと僕の頭に残っている。
・・・そして、ダルも手術を受ける日が決まってしまった。
『___マリン、僕も直ぐに、君の元へ逝くよ。待っててね!』
最後までお読みいただきありがとうございます。