2 成功しましたね
段々と意識が目覚めて来た……。
考える事が出来ると言う事は、成功したのかな?
何となく肉体がある感覚はあるので成功はしたのかと思うんだけど、思う様に体が動かない。
目は開けられるみたいだけど真っ暗だな……。
それとなんか水の中にいる気がするんだけど……あっ!
そうか思い出した!
この体の保管と維持をする為に魔力を満たした液体の中に体を封印していたはず。
まずはこの液体を魔力に変換し直して、吸収すれば動ける様になるはずなので、実行をしてみると出来たけど瞬時に液体が無くなった事で浮いていた体が下に落ちるから、いきなり痛い目に遭ったよ。
それにしても真っ暗なんだけど……何で見えないのかな……あっ!
そうだ、この体は魔族では無く人族の体に近い構成で作っているから、明かりが無いと物が見えないんだ!
魔族だった頃の僕は闇の中でも全てを見通す事が出来たから、明るさとか気にした事が無かったのを忘れていたよ。
暗がりでも相手の姿がはっきりと見えていたから、夜に女の子と遊ぶ時は重宝していたのに不便になったかも……。
取り敢えずは魔法の光球で明かりを作り出すと周りが見える様になったので、取り敢えず室内に置いてある鏡で自分の姿を見て見る事にした。
容姿は前回と同じだけど髪の色は黒から青にしてみたけど、悪くないね。
体の基本設定は人族なので魔族とは感知されないはずだけど魔力測定でもされたら、ちょっと異常な子供ぐらいかな?
大人の姿にしょうかと思ったけど、何だかんだでこの姿は気に入っているので容姿はそのままにした。
決して、この姿の方が女の子に受けがいいからではないとは言わないけど、僕はお姉さんが好みなので、甘えるのに持ってこいなんだよね。
設定は子供の姿だけど成長はしないので、人族の姿をした魔族といった所かな?
まずは着る物だけど元の体の時に亜空間に持っていた装備とかそのままあるかな……うん、何も無かった!
僕が苦労をして集めたコレクションも全て失ってしまったらしい……おのれ勇者め!
お気に入りの服や装備もだけど、もっと大事な今までに付き合っていた彼女達との思い出の品が全て無くなってしまうとは、魂は同じなのに何で持ってこれないんだよ!
あの頭のおかしい勇者に仕返しが出来たら、まずは大事な物を奪ってやると心に誓ったよ!
そうなるとここにある物しかないんだけどある程度の物はここに隠していたから、それなりにあるはずなのでちょっと回収するとして、着る物がこれしかないな……。
当時にここで僕の手伝いと恋人を兼ねていた子が用意していた服なんだけど彼女の趣味の服ばかりだけど、たまに人族の村とか町に行っていた時の服も合って助かったよ。
僕がここを封印した時に一緒に城に戻ったんだけど、あの混乱の中では生死は不明だけどもしも生きていたら、ここに来るかも知れないね。
こんな所で取り敢えずは良いとして、まずはあれからどのぐらいの時が経ったのかが知りたいね。
ここはグランシア大陸の最北端の人里から離れた場所で、僕が1人で放浪していた時の隠れ家なんだけど冒険者とかいう者達に既に攻略されたダンジョンの最下層の隠し部屋だ。
出て来る魔物は雑魚ばかりのはずなので、来る者も少ないさびれたダンジョンだけど、まだダンジョンのコアが見つかっていないので、たまに探索に来る者がいるけどこのダンジョンは内部構造だけは広いので労力に見合わないのでコアを回収したい者か余程の物好きしか来ないはず。
まあ、ダンジョンコアは僕が管理しているので絶対に見つからないし、もしも見つけてもこんなショボいダンジョンにあり得ない魔物を配置してあるから、仮に見つけてもそこで全滅が確定だね。
攻略をするなら、勇者クラスを連れてこないと倒せないので、迷宮にうろついている雑魚の魔物を基準にしているなら、まず強者はこない。
そうこうしている内に大分体に慣れて来たけど魔力の方は問題無く使えるみたいだけど体の基準が魔族と違うから、ちょっと大きな魔力の運用が出来ないぐらいか。
この点は体に慣れてくれば調整が可能になるけど、それ程得意とは言わないけど、久しぶりに剣でも使う事にしょうかな?
人族が沢山いる所で、あまり派手に魔法を使うと怪しまれるから、基本は剣で戦うスタイルで行くことにする。
ちょっとこのダンジョンで練習がてらに地上に出るとして、確か僕の記憶が正しければ森を抜ければ小さな村が合った筈だ。
隠し部屋から出るとスケルトンが何体か徘徊しているので、まずはあれでも倒して見るか。
最下層で、この程度の雑魚しかいないので、このダンジョンは人気が無いのでちょっと強くなれば時間さえ掛ければ最下層に辿り着くので人族の難易度は最低ランクになっている。
僕が近づくと反応をして近づいて来たのでちょっと剣を出して戦って見ると……うん、弱いね!
最初の一体目は剣が強力過ぎたので僕の腕と言うよりも剣の力であっさりと倒してしまったので、何の変哲もない剣で戦っていたんだけど今度は威力が無さすぎるし、僕が体に慣れていないし子供の姿だから倒すのに時間が掛かった……。
仕方がないので、次の時は剣に少しだけ僕の魔力を付与して戦う事にしたので、中々切れ味の良い剣になったけど、こんな使い方をしているとその内に剣の耐久度が下がるから壊れてしまう。
それから、しばらく剣をメインにした戦いをしながら体をならしていったので、随分と体の自由が利く様になったよ。
剣の扱いについてもそこそこは使えたので余程の熟練者でもない限りは多分負けないと思う。
昔は、これでカッコよく暴漢から女性を助けていたのである程度は練習をしておいて良かった。
一応、魔法の方も試して見たけど、やっばり大きな魔法は使うと精神的な疲労が激しいのでこの体で使うのなら、もっと体に魔力を馴染ませないといまの僕には無理だな。
そう考えるといまあの勇者に出会ったらも一撃で殺されてしまうから、絶対に遭いたくないな。
そして、もしも時間があまり経過をしていなかったら、シンシアに見つかったら、多分監禁でもされてしまう可能性が高い。
大人しそうな綺麗なお姉さんなんだけど普段は物静かな感じなのに夜に2人っきりになると別人だからね。
昼間は神に仕える淑女だけど、夜は昼間の姿が想像が出来ない様な娼婦になるんだけど相手は誰でもいい訳ではない。
僕にすごく惚れてくれているので、戦争が始まって離れる時も「このまま結ばれないのでしたら、生涯独身を通します」と言われたんだよ。
久しぶりに再会した時もすごかったんだけど、もしかしてあれで僕の力が決戦前に弱体化したんじやないかと思う。
最後に僕の子供が欲しいなんて言っていたけど流石に魔族とのハーフなんて産んだら、まずいかと思って妊娠はしないように処理していたけど地味に神聖な力を感じたから、何かしていたかも知れないね。
そう考えるとちょっと怖いので、時が流れていた方が良い気もしてきたよ。
この体なら、その制約が無いから、普通に人の子が生まれると思うけど……まあ、いまは考えない事にしょう。
適度に魔物(最下層のスケルトンと同じ強さの)を倒しながら上層階の辺りにくるとなんか悲鳴のような物が聞こえて来たけど多分腕でも鍛える為に来た者達と思うけど行くべきか無視するべきか……。
迷ったけど、助けを求める声が女性だったので行くことに決めたよ!
これが男だったら、絶対に無視するんだけど夜の魔王と呼ばれていた僕には女性の声を無視する事は出来なかった。
声のする方に行くと魔物と人の死体が転がっているんだけど内容は魔物の方はゴブリンの集団と如何にも初心者と思える若者が5人の様だけど既に3人は転がっている死体になっていて、1人は犯されていて、もう1人は既に虫の息といった所かな。
転がっている3人は男なので、当然の様に殺されているけど、犯されている女の子は破れているけど着ている服装から想像すると魔法使いと思う、
もう1人が虫の息で死にそうな女性が神官見習いと思うけど足が潰されていて片腕が無いんだけど多分まともに反応をしないから死体と思われているのかも知れないね。
しかし、このダンジョンにゴブリンなんて居たかな……僕の記憶が正しければもう少しでダンジョンの入り口の筈だから、森にいたゴブリンの集団が住み着いたのかも知れないと思うけど初心者の様な者達が来る事に気付いたゴブリンが待ち構えるのに都合が良いと考えて住み着いたのかも知れないね。
数はそこそこいるけど倒せない数ではないのだけど問題は助けるべき女性が1人はゴブリンの集団に犯されてしまっているし、もう1人は死に掛けなんだよね。
僕にはあそこまで損傷が激しい者を助ける魔法は使えないし、あの犯されている子の目はもう諦めているので助けても心に深い傷を負っているからな……。
よし!
決めた!
取り敢えず助けてから、どうするか決めよう!
ここで女性を見捨てるのは僕の意思に反するからね!
そうと決まればまずは魔法で数を減らして残った奴らを斬り捨てることにするけど、ここは人族らしくちゃんと魔法名を言って置こう。
僕は本来は魔法を使うのに言葉にする必要は無いんだけど高位魔族や歳を重ねた人族の魔導士以外が無詠唱で魔法を使ったら怪しまれるからちゃんと言わないと子供の姿の僕が無詠唱なんて使ったら、怪しさが増すだけだしね。
正直、こんな汚らしい奴らは燃やしてやりたいけど、それだとあの子達を巻き込むから、彼女達に当たらないように調節もできる風の範囲魔法の『エアリアル・ニードル』を使おう。
複数の風の槍を作り出して相手を攻撃する魔法なんだけど、熟練度に応じて数や威力が調整ができる便利な攻撃魔法なんだよね。
「お姉さん! いま助けますね! 『エアリアル・ニードル!』」
別に声を掛けなくても良かったけど、取り敢えず助けに来たと女性にアピールがしたいからです。
これが強そうな相手だったら、せっかく奇襲が出来るのに無駄なるけどこの程度の雑魚なら、問題はないので少しでも好感度を上げたいだけです。
そのまま残った奴らをあっさりと斬り捨てて短時間で終わらせたけど案の定だけど、犯されていた子は精神的にちょっと壊れている感じだし死にかけの子は多分ダメと思いつつも声を掛けると意外とまともに話ができたよ。
「た、助けて、くれて、ありがとう……でも、わ、私はもう助からないと思うので……あの子……だけで……も……」
「あっちのお姉さんですか……」
うーん……正直、あちらは精神的に壊れている感じなので、こっちのお姉さんを助けた方が良いと思うのですが、こちらは体の損傷が激しいので僕の魔法では治せないんですよね。
助かるか分からないけど僕の隠し部屋に連れて行けばこの体を作っていた素材が残っているので、助けられる可能性があるのですが実質はこの体と同じホムンクルスに近い存在になってしまうんですよね。
なので、人に近いけどちょっと違う生き物に該当してしまうので完璧とは言えないのです。
それに魔族の僕の魂を受け入れれるように研究をしていたので、これが人族に適応されるかも疑問なのですが、もしもこのお姉さんが助かりたいのでしたら、賭けになるのですが実行をしても良いと思いました。
最初の声の主はこっちの神官のお姉さんだと思うし、死にかけて血塗れですが、このお姉さんは僕の好みなので助けたいのが本音なのです!
「あちらのお姉さんも助けますが、お姉さんは助かりたくはないのですか?」
「あり、がとう……だけど……わ、私でも助からないのはわかる……けど……た、助かるのなら……い、いきた……」
「分かりました。生きたいと言う言葉は伝わりましたので、僕に可能な範囲で助けたいと思います」
僕の言葉を聞くと意識を失ったのですが、あちらも虚空を見つめているので丁度良いので、ダンジョンコアに働きかけて2人を連れて僕の隠し部屋に移動する事にしました。
このダンジョンだけなら、コアを支配下に置いているので好きな場所に移動が出来るので最下層までは一瞬で行けます。
一応、このダンジョンは下層に行くほど狭くなっているすり鉢状なのですが階層数だけなら、50階層もあるので無駄に広いのです。
これで下に行くほど敵が強くなって、金目の物が手に入ったら、場所的にも着やすいので人気のダンジョンにでもなったと思うのですが最下層の敵ですらスケルトンが徘徊している程度なので、下に行けば行くほど赤字になる碌でもないダンジョンなのです。
唯一の救いは最下層のスケルトンを倒すと一体に付き金貨が一枚だけ手に入るのですが、これが時間と日数を掛けて50階層も降りて来て苦労に見合うのなら、倒した数だけ手に入るけど熟練者が来るところではないですよね?
本当は下層の魔物は結構な強さの魔物だったんだけど、僕がダンジョンコアを支配した時に色々と変更をしたのです。
こうすれば僕の隠し部屋に来る様な者はまずいないので、ここは昔から僕の秘密の部屋として使っていたのです。
さて、まずはこの子を何としてでも助ける事にしましょう。
そして、助かったら……うんうん、楽しみだな~。