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魔王様の隠匿生活  作者: セリカ
17/24

17 実力の違い


 村人の治療の途中で、2階に続くはずの扉の方から足音が聞こえます。

 エリシャさんも気付いたらしく、村人の縄を切るのを止めて扉の方に向かいます。

 足音を立てないようにエリシャさんが近づいたのですが、扉の向こうから聞こえていた足音が止みました?

 もしかしたら、こちらの異変に勘付いて別の入り口か窓などから出ようとしたのかもしれません。

 私は、外部の窓の方を警戒をした方が良いと考えたのですが、エリシャさんはそのまま扉の方に近付くと……突然扉から刃物が突き出てきました!

 そのまま扉を上部から切り裂いて現れたのは、大柄な体格の男性です。

 雰囲気的に村の入り口にいた者達よりも戦いなれている感じがします。

 扉に近付いていたエリシャさんは、そのまま斬り付けようとしたのですが、相手もエリシャさんを斬り付けようとした為にお互いの剣を受ける形になりました。

 しかし、体格と力の差が違い過ぎます。

 まともに受け止めたまでは良かったのですが、押し負けてこちらの方に飛ばされて尻もちをついています。


「エリシャさん! 大丈夫ですか!?」


「もう……痛いわね!!! 私の可愛いお尻に痣とかができたらどうするんですか! あ、でもその時はレン君に優しく撫でてもらえると思うので報告だけはしておかないといけません」

 

 無事でしたが……怪我を口実にレン君に優しくしてもらうことしか考えていないようです。

 そのような不純な考えを見逃す私ではありません。

 どこに怪我をしてもエリシャさんを最優先に癒しますので、マナ切れで疲れている私をレン君が優しく介抱をしてくれる未来しか思いつきません。

 そんなことよりもこの人を何とかしなければ、近い未来もありません。


「せっかくクソ生意気な女に奉仕させていたのにやたらと下が静かになっているとは、こんな小娘に負けるなんて、手下も残しているのに兄貴も大したことがないな」


「貴方ね、扉ぐらい普通に開けれないの?」


 野党と判断したら、扉越しに剣で刺そうとしていたのはエリシャさんのはずです。

 それなのに自分が弾き飛ばされたから、扉を普通に開けるように指摘するなんて、元王女様は我が儘です。

 男が壊れた扉の方を見てからエリシャさんに反論をしています。


「あの壊れている机はなんだ? 扉との位置を考えるとあれで扉が開かないようにしていたんだろ? 俺が気配を殺して扉を軽く押した時に重みがあったので、俺が無理に押し開けようとした時にその手に持っている剣で扉ごと刺そうとしたんじゃないのか?」


「なんでそのことを……そんなことよりも気配を消して扉を開こうとするなんてずるいです! 男性でしたら、堂々とそのまま扉の前に来て扉を開ける努力をするべきです!」


「お前は馬鹿なのか? 扉の向うから殺気を感じるのに馬鹿正直に近づくほど俺は府抜けていないぞ? これでもそこそこ経験は積んでいるのでお前みたいに分かりやすい気配にぐらいは気付けるぞ」


「私に殺気なんてありません! 扉の向こうにいる人型の魔物を倒そうとしただけです!」


「悪いが俺は魔物ではなく人だ」


「女性に乱暴を働く男性はゴブリンと同じです! だから、村の女性を襲っていた貴方達はゴブリンとみなします!」


 エリシャさんの考えはこの人に見抜かれていたようです。

 私には殺気などはまったく分からないのですが、武器を持って戦う人にはそのような気配を感じる能力があるのですね。

 それにしても……あちらの男性をゴブリンに例えていますが、エリシャさんの経験上これからは男性が女性に乱暴をしている所に遭遇した場合は全てゴブリン扱いをされてしまいそうです。

 私はそのような目に遭っていませんので、何も言えませんが……レン君に癒してもらったとはいえ、エリシャさんの怒りの動力源なのかもしれません。


「そうかそうか。なら俺はホブゴブリンとでも思ってくれ。だから、当然お前らを犯しまくってもいいわけだから、死なない程度に痛め付けてやるよ!」


 相手の男性が勢いよくエリシャさんに斬りかかって行きます!

 エリシャさんはいつも通りに相手の剣を寸での所で躱していますが、躱したと思ったら、剣の刃の無い部分で横凪ぎに叩かれて転がされています。

 相手はいつもの練習相手のレン君やスケルトン達と違って大剣を使っているのです。

 上段などからの攻撃は避けられても振り下ろす途中で剣を横凪ぎにしてエリシャさんを叩きつけているのです。

 それでもエリシャさんは相手に向かっていくのですが……少し打ち合ったと思ったら同じようなことをされて吹き飛ばされているのです。

 私が援護の為に魔法を唱えようとすると車線上にエリシャさんが盾になるように移動をするので、私には上手く狙いが付けれないのです。

 もしも、エリシャさんに当たってしまったら……と、思うと何もできません……私は無力です。

 できることと言えば、エリシャさんが私の近くに飛ばされてきた時に少しだけ治癒の魔法を掛けるぐらいなのです。

 それも完全には癒せないので、切傷の出血を止めれる程度か痛みを緩和させている程度なのです。

 ここにレン君さえいてくれたら……。


「大剣を使う人とは初めて相手をしましたが、そんな戦い方があるんですね」


「お前が男だったら、最初の一撃で殺しているんだが、口はともかく中々綺麗な娘だから、手加減をしてやっているんだ。ちょっと着飾れば貴族の娘と見間違いそうだから、町に行ったら奴隷として売ったら言い値が付きそうだしな」


「私を奴隷として高く売れると評価してくれるのは見る目があると思います。でも、他の男たちの慰み者にされるぐらいなら、命を絶ちます」


「はーん? お前、もしかして男を知らんのか?」


「十分に知っています。だけど、今は一番大好きな人以外には抱かれる気はないので、貴方にだって御免です」


「なんだ、初物じゃないのか。ちぃと値が下がるが、予定通り俺が遊んでから売るか。初物だったら、我慢するつもりだったが残念だ」


「次で決めます。散々突き飛ばされましたが、手加減をしてくれたお蔭で貴方の動きは大体わかりました」


「ほぅ? それはすげぇな。なら、その自信を見せてもらおうか」


 エリシャさんが相手と会話をしている内に怪我をしていそうな所には大体の回復魔法が掛けれました。

 特に足と腕に出来ていた打ち身の怪我は癒せていると思います。

 エリシャさんに駆け寄った時に腕と足の腫れている所を最優先で癒して欲しいと小声で頼まれていたのです。

 相手の剣の癖は大体は把握ができたので、なんとか懐に入れば手傷を負わせられるとのことです。

 その時に相手が怯んだら、直線形の魔法で攻撃をしてくれれば倒せなくても大きな傷を負わせることができれば私達にも勝ち目があるとエリシャさんは予想したのです。

 まともに剣で相手をするにはエリシャさんの実力では勝てないのは見ていた私にも分かります。

 そして、私もまともなサポートすらできていない状況です。

 それなのに私と違って、私達の力だけで何とか勝てる方法を考えているなんて、年下なのにエリシャさんの方がしっかりとしています。

 エリシャさんは立ち上がると剣を突き出す構えをしています。

 戦いにおいて男性よりも力や体格に劣るエリシャさんに有効だとレン君が教えてくれた攻撃方法です。

 エリシャさんは腕力はありませんが、素早い動きはレン君に素質があると言われて教えられた型をずっと練習をしていました。

 ダンジョン内ではスケルトンに対しては肉体が無いので、運が悪いと骨の隙間に剣が通ってしまって、へし折られていましたが動物系の魔物にはちゃんとできていました。

 この村に入る時も最初の野党をそれで倒しています。

 エリシャさんが間合いを少しづつ詰めて相手が上段から大剣を振り下ろした時に寸前で躱して相手の懐に接近をして攻撃が決まったと思ったのですが、エリシャさんが予定通りに横にずれずにそのまま立ち尽くしています!?

 相手は、そのまま剣を離しているのですから、エリシャさんの攻撃を受けて落としてしまったと思ったのです。

 一体どうしたのかとエリシャさんをよく見れば腹部の辺りから刃物が突き出ています!

 

「残念だったな」


「ぶ、武器を捨てるなんて……」


「悪いな。俺は大剣と小剣の二刀流なんだ。お前は俺が片手で振るっている大剣ばかりに注目していたが、マントで隠れていた左手には小剣が常に握られていたんだ。本気で相手をぶっ殺す時は両手で相手の得物事叩き斬ってやるんだが、お前みたいな非力な小娘相手なら、片手で十分にいなせる。お前がもっと未熟だったら、剣でもへし折って力づくで抑え込むんだが、なまじに剣の腕が半端にあるお前みたいな剣士のまねごとをしている女は適当に痛め付けて油断した所で、ちょっと痛い目に遭わせてやるのが面白いんだよ」


 エリシャさんの手から剣が落ちるとその場に膝をついてしまいました。

 早く治療をしてあげたいのですが、相手に腹部に小剣が刺さったまま状態で羽交い絞めにされてしまいました。

 それも私によく分かるように。


「お腹がすごく痛い……それに体が痺れて……手に力が……」


「この剣には即効性の痺れ薬が塗ってあるからな」

 説明をしながら、首に回している腕に力を入れられて、エリシャさんが苦しんでいます。


「け、剣に……そ、そんな……ものを……塗る……な……んて……ひきょう……ものの……することで……す……」


「なまじに剣なんて使えるからだ。さて、これでお前は当分は動けないが、そこの魔導士らしき女も抵抗してくれるなよ? なにか魔法を使おうとしたら、この娘の首をへし折って殺すぞ」


 私に話しかけると同時にエリシャさんの細い首に手を掛けています。

 あの人の大きな手で力を入れてしまえばエリシャさんの細い首が折れてしまうのは避けられないと思います。

 エリシャさんを人質に取られては、私にはもうどうすることもできません。

 このような時にどのような行動をすれば良いのかが分かりませんが……このままエリシャさんを見捨てて逃げ出す選択肢を考えてしまったのですが、そんなことは絶対にできません。

 ここで逃げたりしたら、レン君は決して私を許してはくれないと思います。

 世間の噂通りの魔王でしたら、私たちなど使い捨ての存在かと思います。

 ですが、レン君は自分の保護対象に対してはとても優しい存在です。

 かつての私でしたら、とても信じられませんが、瀕死の私を救い私達の為に尽くしてくれる愛おしい人です。

 代わりに少年の姿をした、とんでもない子なのですが……。


「それで、私にどうしろと言うのですか?」


「まずは兄貴達の縄を解けと言いたいが、よく見ればお前もいい女だな……よし、そこで着ている物を全て脱いで机に手を付いて待機しろ。そしたら俺が可愛がってやるよ」


「わかりました。その代わりにエリシャさんにはこれ以上何もしないで助けると約束をして下さい」


「大切な売り物になるんだから、殺しはしないぜ。ただ、ちょっとお仕置きをしなきゃいかんがな」


「だ……め……セラスさんだけでも……」


「お前は黙っていろ」


 エリシャさんが私だけでも逃げて欲しいと言いかけましたが、少し首を絞められたのか最後まで発することができずに苦しそうにしています。


「エリシャさんに何もしない約束の筈です」


「俺は殺さないとしか言ってないぞ?」


 私が何か言おうとする前にもう片方の手でエリシャさんに刺さっている剣に手を掛けて軽く動かすと動けない体が僅かに反応して苦しそうです。


「なんでもいいから、早くしろ。お前に選べる権利なんかないんだよ。それともこいつを見捨てて逃げるか魔導士らしく俺に魔法でも使ってみるか? もっともこの間合いなら、魔法が発動する前に俺の剣がお前に届く方が早いがな。大して威力の無い魔法だったら、こいつを盾にでもしてしまうが仲間なんだろ?」


 私の考えなんてお見通しのようです。

 それに私が戦うとしたら、どのような行動をするのかも予測をしているのです。

 こうなれば、私がここで相手の言う通りにして耐えれば良いのです。

 時間を稼ぐことができれば、レン君がきっと助けてくれます。

 村の人達を助けたいと自分が言い出したことなのにレン君に言われた通りに相手の実力もわからないで自らの首を絞めたのです。

 だからと言って知ってしまった以上は村の人を助けたいと思うのは間違っていないと思います。

 ただ……私達の実力が伴わなかっただけなのです。

 そして、レン君なら何とかしてくれると考えている私の甘えでもあります。

 全盛期の時の力は今は無いと言っていましたが、それでも私達よりも遥かに優れています。

 なんといっても、レン君は元は人類に最も恐れられた最強の魔王なのです。

 恐怖の対象として教えられていましたが、実際は女性に対しては優しい魔王様です。

 最強なのは、レン君の趣味の方なのではないかと私は思っています。

 手に持っていた杖を捨てて私が衣服を脱ぎだすと相手の男性はいやらしい目で私を見てきます。


「地味な服装の割にはいい体をしているな。体だけなら、こいつよりも楽しめそうだな」


 レン君以外の男性に素肌を見せたくはなかったのですが、エリシャさんの命が掛かっているのですから仕方がないのですが……この状況でも私には覚悟ができていません。

 早くレン君が気付いてくれることを祈るだけです……。

 



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