第八話 ギルド登録します
なんとか間に合いました。
今日中に投稿出来ました。
受付の女性の無表情っぷりから、今までのプレイヤーの態度の悪さが伺える。
「では、こちらのナイフで指を切って、このカードに一滴垂らしてください」
「え?今、なんて・・・」
「こちらのナイフで指を切って、このカードに一滴垂らしてください」
あ、ハイ。
聞き間違いじゃなかったんですね。
・・・マンガとかアニメとかで指を切るとかあるけどさ、怖くない?結構勇気いるよコレ。
多分ギルドカードなんでしょ、あのカード。アレに血を垂らして自分用に登録するやつでしょ?
ううっ、怖い。けど、女は度胸っ。いきます!
ザクっ。
渡されたナイフの先端を人差し指に押し付ける。赤い血が出てくる。
ピリッと痛いけど、思ったほどじゃない。良かった。痛いのは指を切った一瞬だけだった。
カードに血を垂らすと受付嬢に顔を向ける。どうしたのかな?驚いた顔をしている。
「・・・貴方はごねたりしないのですね。他の方々は本当にどうしようもないクズばかりでしたのに」
うわー。評価低っ。マジで何したのよ、その人達。どうしようもないクズって相当じゃない?
「申し訳ありません。不適切な発言があった事を謝罪致します」
「いえ、気にしないでください。こちらこそ、同郷の者達がご迷惑をお掛けした様ですみません。悪い者達ばかりではないので、その・・・」
「はい、大丈夫です。我々は貴方のようなまともな来訪者がいる事は分かっています。・・・貴方達、来訪者にとって、この世界が遊戯盤の役割を持っていることはこちらも理解しているのです。ただ、来訪者にとってはそうでも我々にとっては現実の世界なのです」
アスフィルさんも来訪者って呼んでたし、「プレイヤー」って言葉が通じるんだね。
それにしても今の話はかなり重要じゃないですか?だってプレイヤーにとってはゲーム、アストリカ人にとっては現実。それを理解されているってことは我々はこの世界にとっての異物そのものじゃないか?
自分達の現実の世界で同じ事があったらを考えると、下手したら侵略者扱いされてもおかしくないよ?
私の表情から思考を読んだのか、受付嬢が言った。
「安心してください。別に我々は貴方達の敵ではありませんから。むしろ、貴方達の力を借りる側なのです」
受付嬢が語った話をまとめると、最近神々の祝福が弱まっていて魔物が暴れている。しかも魔物が強くなってきている。
その結果、退治されず魔物が増えてきている為、このままではいずれ、街に魔物が雪崩れ込んで来るかもしれない。
それを憂いた神々が来訪者を異世界から呼び出した。
やって来た来訪者は何度死んでも蘇るが、来訪者はこの世界に遊戯盤としての娯楽を求めてやって来ている為、どのように動くのかは未知数。
また、来訪者には自分達の現実世界があり、こちらの世界に常時居られる訳ではない。
こちらの世界の者ではないが、来訪者と力を合わせて、世界の窮地を脱せよ。
以上が神々の信託。
ってことらしい。
もっとも、この辺りではこの世界の窮地なるものを実感するような出来事もなく、来訪者と言う死んでも蘇る変わった者達が来て、冒険者になりたがるくらいの印象らしい。
死んでも蘇る変わり者って・・・間違いとは言えないけどさ。
「神々が喚んだ方達ですからね。素行はともかく、害為す者だと決め付けてしまうのは早計と言えますから。それにここは冒険者ギルド。荒くれ者達が集うのは当然で、人の話を聞かない人達にも慣れてますから」
と受付嬢が視線をやると苦笑いをする冒険者達が。
どうやら彼らは話を聞かない人達だったようだ。だったと過去形なのは、本人達が理解していて反省している様子だからね。
「その点、貴方は人の目を見て話を聞くことの出来るいい人ですね。話し方も丁寧で敬語を使う冒険者なんてほとんど見たことありません」
だって初対面の人にタメ口とか馴れ馴れしいよね?
しかも今の私は男だ。うん・・・。女性に対して失礼な言動なんて駄目でしょうが。
それに敬語って男女平等だよ?男でも女でも使う。つまり、私のことがバレにくい。まあ、敬語って言ったってデスマス調なだけだけど。
「それなのに初見での失礼な態度での対応、本当に申し訳ありませんでした」
頭を下げる受付嬢。気にしなくていいのに。
「気にしてませんから、顔を上げてください。それに失礼と言うほどの事ではありませんから」
無表情って言っても言葉は丁寧だったし、コンビニのバイトとかもっと酷い人居るしね。
「ありがとうございます。すみません話が長くなってしまいましたね。こちらが貴方の冒険者ギルドに登録をした証、ギルドカードです」
渡されたカードには先程垂らしたはずの血は付いていなかった。どこ行ったのかな。
カードには自分の名前と二つ名、ギルドランクが書かれている。
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【アトラ=アステラ=レイナシオン】
二つ名/初心者冒険者
ギルドランク/E
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二つ名が変わっている。冒険者ギルドに登録したからだろう。
「これで貴方は冒険者になりました。さあ、これからいざ冒険へ・・・の前にギルドについて説明しますね」
そう言って受付嬢は紙を差し出した。
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〜冒険者ギルドまとめ〜
ーギルドの利点ー
1、ギルド連盟に参加する国への自由な行き来
2、ギルドに依頼されたクエストの受注
3、クランの設立
4、素材の買取り
5、ギルド施設の利用
6、身分の保証
ーギルドからの強制ー
1、緊急クエストの強制参加
2、指名依頼の受注
ークエストとギルドランクの説明ー
1、自身のギルドランクから一つ上のランクのクエストまでしか受けることが出来ない
2、クエストを失敗ばかりしているとギルドランクが下がる
3、Cランクから上のランクに上がる際には試験がある
4、クエストを失敗すると賠償金が発生する
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差し出された紙はギルドについての説明だった。
「話を聞かない人用に、一目で分かるギルドの説明が用意してあるの」
苦笑いをして言う。
確かに分かりやすいが、用意された理由がね。
「来訪者の方々は、冒険者ギルドに登録しないと、この街からは出られない様になっています。なので、必ずここに来て登録する訳ですが・・・」
なるほど、何人いるのかは分からないけど同じ説明を何度もする訳だもんね。まとめがあると楽だね。
そりゃ、アストリカ人でも登録する人はいるだろうけど一度に大人数の登録って事はそうそうないと思うし。
道理で如何にも仮設ですって感じの登録受付がいくつもある訳だ。
「正直、来訪者の方はほぼ強制登録ですけど」
身分の保証って大事だよね。
私達は異世界から来ただけのよそ者。ってか異物。そんな私達の為なんだろうね。
多分、登録しないと宿も借りられないし、物も売って貰えないと思う。
あと、この世界の窮地ってやつをどうにかする為に喚ばれたのだから強制クエストは当然か。
「どうですか?貴方の目から見て、このまとめで説明は足りていますか?」
「はい、大変分かりやすく、まとめられていると思います」
マンガとかアニメとかゲームとかを参考にしているんだなぁ〜と言うのが正直な感想かな?
でもその分理解しやすい。ある意味、馴染み深いからね。
「あ、でも一つ質問が。このギルド施設の利用とは一体・・・」
「ギルド施設とは冒険者ギルドに併設された『訓練場』、『図書館』、『解体場』の3つがあります。各施設については、初利用の際に施設の職員に聞いてください。ギルドカードを提示すれば中に入れます」
来訪者の方から質問を受けたのは初めてです。と、受付嬢は笑った。
本当に大丈夫なのかな?ちゃんと聞いて理解しておかないと後々困ると思うけど。まあ、私には関係ないか。
「そうだ、早速クエストを受けたいのですが、クエストを受けるにはあの紙を持って受付に行けばいいのですか?」
壁際のクエストボードには、ランク分けされて依頼書が貼ってある。
「そうです、説明が足りてなかったですね。登録をされたばかりなのでEランクのクエストしか受けられません。Dランクに上がれば1つ上のランクのクエストも受けられるようになります」
ランクは上からS、A、B、C、D、Eの6つがあり、Eランクは所謂見習い扱いなので、Eランククエストを一通りこなすことでランクアップなのだとか。
一応Sランクの上にSSランクがあるらしいが、神々に認められた祝福持ちの事を指すので、実質あってない様なものだとか。
まあ、Dランクまで行けば普通に冒険者として一人前扱いして貰えるから、まずはDランクに上がる事を目標にするとしよう。
「では、頑張ってください。貴方の道行きに神々の祝福がありますように」
自傷行為って怖くないですか?
そんなことない?
ちなみにアトラくんは結構早い段階で冒険者ギルドに来てるので、スタートダッシュ組しかまだ登録に来てません。
ので、まともな人もいるけど、ゲーム感覚の阿呆が多いです。
ってか、またもや説明回ですみません。
なるべく1日に一話の投稿を目指します。