第十四話 手紙の配達〜その5〜
お待たせしました。
体調も良くなったので、また頑張って更新ペースを上げていき・・・たいな〜。
毎日は出来ないかもしれないけど、よろしくお願いします。
一先ず落ち着こうか。
と言うことで、互いにソファーに座っている。高級なソファーですよ、ふかふかしてます。汚したらどうしよう、緊張で体が震える。
「ごめんなさいね。見知らぬ他人に耳や尻尾を触られるなんて怖かったわよね?フィアラ、反省なさい」
妙齢の女性ことエルフィンさんが、金髪の女性ことフィアラさんの頭を叩く。
フィアラさんのお母さんがエルフィンさんなんだって。道理でポカポカ頭を叩く訳だよ。
それにしても、緊張してるのがフィアラさんのことだと誤解されているみたいだ。いや、フィアラさんのことは警戒してるけどね?
「だってこんなイケメン、なかなか会えないよ⁉︎人が良さそうだし、物腰丁寧だし、コレはイケメン成分補充しておかないと!」
そんな成分は無い‼︎
成分は無いし、イケメンじゃない!私、女の子ですから!顔とかだって、ほとんど現実と変わりないから!イケメンは褒め言葉じゃないから‼︎
「確かに綺麗な人だけど、礼儀を欠いていい理由にはならないわ!フィアラ、貴女も少しは落ち着きを持ちなさい」
「でも、こんなイケメンに次いつ会えるか分からないし・・・あ!」
言い訳になっていない言い訳をぶつぶつ呟いていたフィアラさん・・・さん付けいらないね。フィアラは、急に声を上げた。
「ねえ、貴方モデルにならない⁉︎」
目を輝かせて覗き込んで来たフィアラはなんか言ってきた。さっきエルフィンさんに言われただろ、落ち着きを持てって。
「あら、それは良い考えね!早速着替えとカメラを用意しないと・・・。アトラさんだったかしら?モデルになってくれますね?くれますよね?では、少しだけお待ちください」
エルフィンさん、貴女もか‼︎
勢いに負けて頷かされた私は、モデルと言う名の着せ替え人形にされた。
高級店の商品を取っ替え引っ替え着替えさせられて緊張もするし、疲れるし・・・もう勘弁してください。
「次はこれとかどうかしら、似合うと思うのだけど」
「ねえ、これ女の子物だけど似合いそう」
「あら、良いわね」
「あ、じゃあこれも」
いやーーーーっ。
確かに中身は女の子だけど、今の私は男だから!それ着たら女装になっちゃうから!
それに、すっごく煌びやかで高級そうなんだけど!
ちょっ、化粧⁉︎ダメだって!
え?コルセット?いや、待って無理だからーーーーっ。
しくしく、ぐすん。
部屋の隅に黒い物体。私ですがなにか。
2人にさんざん弄られて燃え尽きた灰になりましたよ。
もうお婿に行けない!現実では女だけど!
「はあ、堪能した♪イケメン成分の補充も出来て、新たなデザインのイメージも掴めて、もうサイコーだったわ」
「ええ、この写真は素晴らしい出来ね。・・・この写真、商品の横に飾ったら購入意欲を誘えそうね。販売責任者の子に打診してみようかしら・・・」
え、エルフィンさん。
やめて、私のHPはもう0だから、それ以上はやめてぇ。
「それにしても、勿体無いわ。こんなに綺麗なのに冒険者、それも初心者装備だなんて。この水色の服は見事な物だけど、他がダメね。うん、これはダメだわ」
今度はダメ出しですか?
もう勘弁してくださいーーーーっ。
「そうだわ!モデル料を払っていなかったわね。さ、これを受け取って」
ダメージを受けて疲弊した私の様子に気付いてないのか、何も変わらない態度で机に何かを置いた。
「あれ?お母さん、それっていいの?渡しちゃって」
「モデル料だもの。この『ティネシラ商会』の名を貶めない為にも、良い仕事をしてくれた人にはきちんと見返りを用意しなくてはいけないわ。それに・・・」
言いながら私を横目で見る。
「アトラさんが商品を着て街を歩いていれば、良い宣伝になると思うの。デザインも素敵な冒険者の装備となれば、お金に余裕のある冒険者や街を行き来する行商人に人気が出るはずよ。そして何より、目の保養になるもの!」
エルフィンさん、最後のは要らないと思いますよ。
と言いますか、何か嫌な予感がするのですが・・・。
机に置かれたモデル料と言う名目のそれは、先程私が着替えさせられた物の一つじゃないのですか?見覚えがあるんですけど!
「さ、アトラさん。着替えてください」
また、ですか・・・。
エルフィンさんとフィアラに無理矢理渡されたそれに着替える。
渡されたのは、黒いロングコートと黒いズボン、黒いブーツだった。
ロングコートはベルトやスリットなどを上手く利用して、短剣くらいならコートの内側に隠すように装備出来るようになっている。もちろん動きを阻害しないように工夫されていて軽い。
ズボンも伸縮性が高い生地と、耐斬性に優れた糸による刺繍で、動き易さと防御力を考えた作りになっている。
ブーツは履き心地が良いように中敷が敷かれており、さらには足音を立てないように靴底に工夫がされている。
3つとも装備としては中々の性能なのだとか。しかもデザイン性も考慮されていて縁取りや刺繍などを銀糸で統一されている。
この3つの装備と〔水精霊印の服〕を身に付けた私を誰が初心者冒険者だと言うだろうか。
身の丈に合ってないでしょうが!初心者のくせに装備だけ一丁前とか、成金のボンボンなのか私は。
「あら、良くお似合いよ。まるで貴方の為に作られた物のように馴染んでいるわ」
「流石お母さん、チョイスが見事だわ。これ以上は無いってくらい似合ってますよアトラさん!」
お褒めに預かり光栄です・・・。
身の丈に合わない格好って、こんなに精神ダメージがあるんだね。初めて知ったよ。
「あらやだ!もうこんな時間。ごめんなさいねアトラさん、長い間拘束してしまって。・・・そう言えば、ギルドの手紙を届けに来てくれたのでしたね」
忘れてたの⁉︎
時計を見ると5時近くだ。この店に着いたのが3時ちょっと前だから、約2時間も着せ替え人形になってたのか。ははっ。
とにかく、手紙を渡そう。
「・・・なるほど、フィアラ。ちょっとあれを持って来て」
エルフィンさんは手紙を読むと、フィアラさんに何かを取りに行かせた。その間にさらっとサインをしてくれたらしい。
「はい、これサインね。あら?どうかしたの?ソファーに座ってフィアラを待っててちょうだい」
もう、なんか疲れた。
この装備は凄いけど、凄いからこそ貰えないよ。けど、返したところで絶対に受け取って貰えない。てか、私の初心者装備取られちゃって着替えがない。
しょうがないよね?貰っちゃうよ?
「持って来たわ。お母さん、これでいいでしょ?」
フィアラが戻って来た。
持って来たのはショルダーポーチだった。もしかして魔法鞄かな?
「これは魔法鞄よ。肩掛けにしないでベルトで固定することが出来るタイプで、使い易さから冒険者に人気のある商品なの」
ソウナンダー。
何でそれを私に渡すのですか?
「アトラさん、これを冒険者ギルドに持って行ってくれる?手紙に書いてあるのよ、魔法鞄を用意するようにって」
何だ、ただの配達か。
手紙を届けるだけの筈なのに色んな物を貰ってるから申し訳なくてつい身構えてしまうよ。
「分かりました。では、この魔法鞄をお預かりします。必ず、冒険者ギルドに届けますね」
「ええ、よろしくお願いしますね」
さて、冒険者ギルドに戻って魔法鞄を届けて報告しますか。
ようやく『手紙の配達』クエストが終わりだよ。
なんか、すっごく長かった気がする。
ようやくクエストが終わりました。
あとは報告だけです。
一応次で区切りがつく予定なので、他の人視点の話と掲示板回を考えてます。
掲示板回は説明の補足をメインにしてるのでネタとかは少ないです。
てか、ネタないです。
ごめんなさい。
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。