表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

第十三話 手紙の配達〜その4〜

またまた、ダメでした。

 



 ドルゾイさんとレコンさんと話している間に、女将さんを呼びに向かってくれた女性が帰って来た。後ろにいるおばちゃ・・・女性が女将さんかな?


「私に用があるんだって?」


 やって来た女将さんは、デカかった。

 なんて言うか、デカかい。あ、縦にね。横にじゃないよ。身長は2m越えてると思う。

 多分、竜人族。ドラゴンみたいな尻尾が生えてるし。頭の上に角がある。メッチャ強そう。


「あ、はい。ギルドの依頼で手紙を届けに来ました」


 呆気に取られながらも何とか手紙を渡す。

 近くで見るとなおデカイ。女の人を見上げるのは初めてだ。・・・いつも見上げられる側なので。


「手紙ねぇ。どれどれ・・・」


 女将さんは受け取った手紙を読むと険しい顔をした。


「なるほどねぇ、道理で・・・。あんたぁ、ちょっくら奥の部屋を掃除してくるから、お客の相手を頼むわ」


 厨房に声を掛けて女将さんは、奥へ戻って行った。

 え?ナニ?どゆこと?

 私が困惑していると、ドルゾイさんが驚いていた。


「あの女将があんなに険しい顔をしている所なんぞ見るのは、随分久方ぶりの事じゃぞ」


 なんか、ヤバげ?


「また、ドラゴンでも暴れてるとかかな?その時僕はいなかったけど、ギルドから女将さんに依頼があったって聞いてるよ」


 マジで⁉︎やっぱりあの女将さんは強いんだ⁉︎

 暴れるドラゴン討伐の依頼が女将さんにいくとか凄くない?

 その女将さんが険しい顔をしてるとか、緊急事態なのかな?

 その割に街は平和な感じだったけど・・・?

 いや、そもそも女将さんは部屋の掃除に行ったよね?

 私が思考を巡らせていると、厨房からリスかな?の獣人の男性がやって来た。


「なにかあったのかい?かみさんが対応を僕に任せるなんて珍しいね」


 この穏やかな雰囲気の眼鏡を掛けたリスの男性が、この宿の料理人にして、さっきのおば・・・女将さんの旦那さんらしい。

 レコンさんが教えてくれた。


「バドウィンよ、こっちの(わけ)ぇのがギルドからの手紙を持って来たんじゃが、読んだ途端に奥に行ってしもうての。儂らも事情を知らんのじゃ」


「ふむ、これが手紙だね。・・・なるほど、これは仕方ないね」


 女将さんが置いて行った手紙を読むと納得したみたいだ。一体なんだろう。


「今日から来訪者(プレイヤー)さん達が来るみたいだからね。宿の部屋は大丈夫かって、確認の手紙だよ」


 私やドルゾイさん、レコンさんが疑問符を浮かべていた為か説明してくれた。

 確かにプレイヤーが来た分、宿も繁盛するけど部屋の数が問題になるよね。

 話によるとこの宿は、日中を食堂として開いている分、宿としての部屋の数は少ないのだとか。使える部屋はあるそうだから女将さんが掃除しに行ったみたい。


「わざわざ確認の手紙を送って来るなんて珍しい。どう言う風の吹き回しなんだか。えと、アトラ君だったかな?君、来訪者(プレイヤー)だよね。もし、まだ宿を決めていないなら今夜はうちに泊まっていかないかい?これは無料宿泊券だよ」


 そう言って旦那さんはチケットをくれた。


「この手紙に『将来有望な冒険者』と君の事が書いてあるんだ。もしかしたらいいお得意様になってくれるかもしれないからね、遠慮なく使ってくれ」


 好意は有難いが、手紙の内容が気になるんですけど。

 どうして私の事が書いてある訳?しかも将来有望って何を根拠に言ってるんだよ。


「あ、サインが必要なんだっけ?・・・はい。かみさんのじゃないけど、僕は一応この宿の亭主だからね」


 旦那さんにサインを貰ったので、この宿の手紙配達は完了だ。あと一つでクエストも終了する。

 旦那さんとドルゾイさんとレコンさんにまた来ることを告げ、『休息吐息(ヒールブレス)の泊まり宿』を後にする。

 最後の手紙は東門付近のお店だ。




 やって来ました、最後のお店。

 現在、中央部から東門へ向かう大通りに面した大商店の目の前。そう、最後の印はここ。この大商店に付いています。

 一見さんお断りな雰囲気ですよ。高級店ですよ。こんなところ、初心者冒険者が来るとこじゃないよ!お店の前に黒服のカードマン的な人達が立ってるし。

 ねぇ、本当にコレ初心者用のクエストなのかな?どこぞの薬屋とかさ。私の肝でも試してるのかな。

 考えても仕方ない。依頼で来てるんだし、とりあえず黒服の人に事情を話してみよう。


「すみません。こちらのお店に手紙を届けに来たのですが、どうしたらいいですか?」


「依頼ですか?手紙を見せてもらえますか。冒険者ギルドの印があるな・・・少し待っていてください。中に行って来る、少しの間頼む」


 2人いた内の右側の人、熊っぽい方の人に手紙を渡す。するとギルドの印を確認してもう1人の犬っぽい人にこの場を任せ、店の中へ入って行った。


「すまない。この店は見ての通りの大商店だからな。こういった確認が必要なんだ」


 うん、そうだと思います。犬っぽい人がわざわざ言わなくても分かります。一見さんお断りなんでしょ?

 あ、熊っぽい人が戻ってきた。


「大変お待たせしました。中へどうぞ、奥の客室にてお待ちください」


 うう、緊張する。いくら依頼だからって高級店に入ってますよ、私。

 うわ、なんか従業員の人もその所作が綺麗。凄い、マジで高級店だよ。


「手紙をお持ちくださった方ですね。こちらの部屋へどうぞ」


 あ、はい。どうも。

 ウサ耳の女性が扉を開けてくれる。丁寧にどうも。

 応接室かな?高級そうなソファーと机が対面状に置かれている。

 座って汚したらヤバいし、とりあえずソファーの横に立ってよう。

 しかし、凄いな。

 部屋を照らすシャンデリアは華美でありながらもオシャレで、趣味が悪いとか一切感じない。

 飾られた絵画も繊細な色使いが美しいし、それを飾る額縁も控えめながらも細工が細かい。

 置物も窓枠も絨毯も、どれを見ても高級そう。

 私なんでここにいるんだっけ?場違い感半端ないんだけど!

 居た(たま)れない思いで私が待っていると、誰かが部屋に入って来た。


「あら、あらあらあら。まあ、ステキ!」


 目を輝かせてその女性はやって来た。

 一つに束ねた金の髪をなびかせて、凄い勢いで近付いて来る。ああ、また濃い(・・)人だ。

 じろじろと検分されて、落ち着かない。誰か助けて。

 やめて、尻尾に触らないで!耳もくすぐったいから!

 検分されていると思ったら、見ているだけでは足りなくなったのか、尻尾を触ったり猫耳をモフったりやりたい放題だ。

 私が動けないでいると、


「これ、客人に対して何をやっているのですか!」


 後からやって来たご婦人に、金髪の女性が頭を叩かれて私から離れた。


「すまないね。これは美しいものに目がなくて、直ぐに手を出す悪癖があるの。こんなでも腕の確かなデザイナーをしていてね、仕事では重宝しているの。普段はこんな、だけれどね」


 妙齢の女性は、金髪の女性の頭を叩きながら言う。あれか、紙一重ってやつか。


「酷いわ、私だって仕事にプライドを持っているのよ!その為に美しいものをより近くで見て、デザインの質を高めたり、美的センスを磨いたりしているの!そう、これは仕事の為に仕方なく、仕方な〜くやっている事なの!」


「言い訳は結構よ。ほら、お客人に謝りなさい」


「うう、痛い・・・。そこの猫耳の綺麗なオトコの人、いきなり触ってごめんなさい」


 叩かれていた頭をさすりながら、頭を下げた。多分反省はしてないと思うよ、この人。

 こんな高級店のデザイナーをしている人なのだから、これでも凄い人なんだ・・・よね?

 とりあえず、近付いて来ないでください。お願いだから。







しばらくの間は2日か3日に一度の更新になると思います。

すみません。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ