第九話 初めてのクエスト
早速クエストを受ける為に壁際のクエストボードにやって来た。
「あれ?そう言えばアルカは?」
チュートリアルを終えてから姿を見ていない気がする。もしかして置いて来ちゃった⁉︎
と思ったら胸ポケットに入って寝てる・・・。確かに小さく縮み込めば入れるのか、今のアルカなら。って、チュートリアル中も寝てなかったっけ?
あ、起きた。
「アトラさま、ひつれいです。アルカ、ちゃんとかんがえてポケットはいってた。めだつのよくないとおもって、せーれーになったアルカはかくれるべきだとおもった」
アルカなりに考えて行動してくれていたらしい。今もポケットから聞こえる程度の小さい声で喋っている。
しかし、幼児退行してない?確か思考レベルの低下があるって言ってたけどさ、それってこう言うこと⁉︎
あ、だからよく寝てるのかな?
「アトラさまがめだちたくないってしってるから、かくれてたのに、ひどいです。せーれーはめずらしいから、いっしょにいたらめだつから、ポケットにいたのに、ひどいです。ぷんぷんです」
うんうん、精霊と居ると目立つのね。分かったよ。
幼児退行したアルカは何か、なんて言うか・・・可愛いな。妹みたいで。現実に妹なんて居ないけどね。
でも、アルカにはこのまま隠れててもらおう。うん、ゆっくり寝てて良いよ。
「ぶぅ。そのうち、おいしいものいっしょにたべるの。やくそくね。やくそくしたらゆるしてあげる」
「はいはい。約束、約束。美味しいものを一緒に食べようね」
かぁ〜わい〜い。ナニコレ、これが萌え?萌えなのか⁉︎
アルカの台詞聞きました?「おいしいものいっしょにたべるの」って言ったんだよ?一緒にだよ?
うちの子メッチャ優しい〜。
ヤバイ。私今メッチャ不審者。自覚あります。
ともかく、アルカの事は隠そう。こんな可愛いもの、すぐに誘拐されちゃう。
「ふぅ、これにしよう」
落ち着いた私は、これ以上不審者にならない為にもクエストボードから受けるクエストを選ぶ。
Eランクは『雑用』、『採取』、『討伐』の三種類のクエストをこなしてDランクに昇格することが出来るらしい。
なので、まずは『雑用』の『手紙の配達』を受けてみようかな。
このクエストの手紙の配達先が宿屋と雑貨屋と武器屋と薬屋だから都合が良い、ってか多分その為のクエストなのだろう。この街の事を知らない見習い冒険者に、冒険者として必要な物を揃えられる場所を教える、その為の。
クエストボードから依頼書を剥がし、受付に並ぶ。
登録受付で手続きをしてくれたエルフの女性ではなく、屈強な体躯の男性だった。道理でこの受付だけやたら空いている訳だ。
「すみません、クエストを受けるのは初めてなのですが、こちらのクエストを受注するにはどうしたらいいのですか?」
見た目は強面だが、受付に居るって事はギルドの職員なのだろう。なら、怖がる必要はないな。
「おう、兄ちゃん初心者か?俺を恐れずこの受付に来るたぁ、なかなか将来有望じゃねぇか。そうだ冒険者たる者、俺の面程度で恐れ慄く様じゃあ勤まらねぇ。兄ちゃん、気に入ったぜ。名前教えてくれや」
「わた・・・俺は、アトラと言います。確かに貴方は如何にも凄腕の冒険者‼︎って風格がありますが、別に敵意を向けられた訳でもなく、ただ受付をしているだけなので怖がる必要がありません」
あぶない、あぶない。うっかり「私」って言いそうになった。別に言ったところで話口調が丁寧なだけって思われるかもしれないけど、冒険者だしあんまり丁寧過ぎてもね。腰を低くし過ぎてもナメられるだけだし、少しは砕けた感じにしないと。
もちろん、礼儀は欠かさない程度にね?
女性と態度が違う?当たり前でしょ、女性にやたら強気な男とかサイテーじゃん。
仲が良いならともかく、女性に対しては出来るだけ丁寧な言葉を使うよ。今の私は男なんだから。
「そんな事言う奴はお前ぇくれえだ。面白れぇ奴だな。アトラって言ったなぁ、クエストだっけか?あぁ、『手紙の配達』か流石に分かってんじゃねぇか。よっしゃ、ちょっと待ってろ今手紙持って来っから」
そう言って受付の奥に向かった。強面の受付の人が機嫌良さそうにしていたからか、他のギルド職員の方が珍しい物でも見たかの様子で私を見ている。
ギルド職員だけではない。背中からも冒険者達の視線を感じる。
うん、目立ってる。
おかしいな、アルカはポケットで寝てるのに。
私が刺さる視線に耐えていると、強面の受付の人が手紙を持って帰って来た。
「お前さんにこの手紙を預けるから、この地図の印の付いている店に届けてくれ。手紙をその場で開封してもらって、サインをもらって帰って来るだけの簡単なクエストだ。順番とかは特にねぇが、今日中には届けてくれ。じゃ、行って来いや」
【クエスト『手紙の配達』を受けました】
【メニュー表示に『クエスト』が追加されました】
【メニュー表示に『地図』が追加されました】
強面の人に送り出されると、アナウンスが鳴った。
メニュー表示が追加されたらしい。
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名前/アトラ=アステラ=レイナシオン
二つ名/初心者冒険者
・ステータス
・スキル
・称号
・アイテムボックス
・地図
・クエスト
・フレンド
・ログアウト
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メニュー画面を開くと『地図』と『クエスト』が追加されている。
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進行中クエスト
『手紙の配達』
期限/今日中
冒険者ギルドからの依頼。
4枚の手紙を指定された店に届けて、サインを貰おう。また、手紙の内容を確認してもらう必要がある。
渡された手紙には冒険者ギルドの印が付いている。
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渡された手紙と地図はアイテムボックスに入れておけば失くなる心配は無い。
入れる時に気づいたんだけど、チュートリアルで貰った〔初心者の短剣〕はアイテムボックスの中に入っていた。
チュートリアルの時に手に持ったままだったから何処に行ったのか分からなかったんだよ。すみません、単純に忘れてただけです。
「さて、まずは・・・」
ステータスから地図を選択してみる。アイテムボックスに入れたそれと同じ物が、ウィンドウとして宙に表示された。なるほど、アイテムボックス内の地図を表示するものなのかな?
地図上には赤い印が4つある。まずは一番近い所から行ってみようか。
中世的な街並みを何気なしに眺めながら歩く。・・・中世的なイメージってだけです、ファンタジーって言ったら中世ヨーロッパのイメージでしょ?
レンガで組まれた壁の家、アスファルト程ではないが整地された街道、ランプのような街灯・・・はまだ明るいから付いてはいない。
街並みだけでもファンタジーだよ。けど、そこに住む住人はもっとファンタジー。
駆け回る子供達は種族の差もなく、仲良く遊んでいるし、武器屋の前で呼び込みを行っているのはエルフだ。
ログイン直後にもこの賑わいに感動したけど、街を歩くとさらに感動的だね。
おっと、この店が一つ目の配達先だ。
アトラはアルカの事を忘れがちって、思われるだろうがそれは違う‼︎
単純に作者が書くのを忘れてただけだ‼︎
・・・はい、すみません。
勢いで書いているので色々忘れてしまいがちです。気を付けます。
さて、アルカさんですが幼児退行してしまいました。
頼りになる冷静なお姉さんだったのに、舌ったらずな幼女風になりました。
アトラくんもうっかり萌えに目覚めるくらいちっこ可愛いです。
上手く書けずに申し訳ない。
それはともかく、やっとこさクエストですよ。
長かった・・・
いや、全部未熟な自分の所為ですけどね?
長い目で見てください。
読者の皆様、お読み頂きありがとうございます。
では、また次回。