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避難開始

ヴァルルニ族の、のどかな集落。


雲がゆっくりと動き、

雲の切れ間から、陽が射してくる。


アルレテが、小さな手で、

わっしわっしと雑草を引き抜いていく。


蚊がプーンと顔の近くを飛んでいる。

蚊は追い払っても追い払ってもやってくる。

雑草は抜いても抜いても生えてくる。



ダカッ、ダカッ、ダカッ、ダカッっという音が近づいてくる。

アルレテがそばかすだらけの顔をあげる。

すぐ側を、馬が走り抜けていく。

あの服のデザインは、ファルティアの軽装弓騎兵だ。


集落の中央にある広場に、人々が呼び集められる。


アルレテも母親の後ろにくっついて、広場に行く。



ファルティアから来た軽装弓騎兵のキオナイスが、

集まった人々に、カエサルの略奪許可の件を伝える。


人々に絶望が広がってゆく。


アレルテの顔が真っ青になる。

母親の服を引っ張って言う。

「私たちみんな、殺されてしまうの?」


母親は、自分自身もショックを受けながらも、

アレルテを抱きしめ、震え声で言う。

「大丈夫。

私達、大人がきっとなんとかするから。

必ずあなたたちを守るから」



「ファルティア軍は来てくれないのか?」


キオナイスが答える。

「昔は、それぞれの部族が、それぞれの部族を襲撃し合っていました。

だから、一つの部族だけに襲撃が集中することはなく、襲撃に対抗することができました。

しかし、今回は違います。

カエサルによって、ガリア中で、襲撃が禁止されています。

そして、ヴァルルニ族への襲撃だけが許可されているのです。

ですから、ガリア中で襲撃をしたい人たちは、すべてヴァルルニ族へ押し寄せることになります。

全ての襲撃が、ヴァルルニ族だけに、集中してしまうのです。

それだけの襲撃から集落を守ることができる軍隊は、

ヴァルルニ族どころか、ガリアのどこにも存在しません」


「じゃあ、俺達は見殺しにされるのかよ」


「サーシャ様が避難場所を用意しました。

すぐに、そこへ向かってください」


アレルテが言う。

「畑は?

ねえ、畑はどうなるの?

毎日、一生懸命草むしりして、水やりして育てた作物は?」


母親が、アレルテの頬に手を添えて言う。

「悔しいけど、今は、生き延びることが先。

生きていれば、またいつか戻ってこれるわ」



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