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そして夢に囚われる

最終話

7000文字ちょっとで、長いです。


 ☆★☆★



「続いて、ミラーハウスの恐怖をご覧あれ……」


 その言葉とともに画面が切り替わって映ったのは大王と呼ばれていた大園季美佳の姿だった。ここまでのメンバーとは違い、自分で撮影しているわけではないようだ。


「やぁ! ミラーハウス担当はあたしと隠岐君なんだ! 基本的に映るのはあたしだけ。隠岐君は頑として映らないつもりらしいよ。でも、ミラーハウスでもそれを貫けるかは分からないよねっ」

「方法はあるから」

「聞こえましたか! 隠岐君はこんな風に混ざってくれるので聞き逃さないようにね」


 一人よりも二人の方が精神的に楽なのかもしれない。大園は先の三人に比べて最初のテンションを保っているように見える。


「噂の現場はここです!」


 ジャンッと口で効果音をつけて大園はミラーハウスを紹介するように腕を伸ばした。

 その館の壁は経た時間を表すかのようにくすんでおり、蔦が這っていた。


「いやー……、雰囲気あるね」


 いかにも何かが出そうな西洋の館である。これは怖い噂を立てられるのも納得がいく。


「しっかり鍵閉まってるね。ここは閉園したけど、建物が荒らされるのは嫌だということで鍵をかけているんだっけ?」

「確か、そう言ってた」


 館の入口には『ミラーハウス』と書かれた看板があった。そして、その『ミ』の横にはウサギの頭が描かれている。


「この変なウサギ、何?」

「マスコットキャラクター。確か名前はゆめうさだったと思う」

「隠岐君って結構予習とかガッツリするタイプだよね……」


 大園は扉に手のひらをついて顔だけ振り向き、少し呆れたようにそう言った。


「ま、とりあえず開けるよ……」


 カチャリと音がして鍵が開く。彼女は一瞬固まり、ゴクリと唾を飲むとと扉を押した。その扉はギギギ…と重苦しい音を立てて黒々とした口を開いた。その奥には外からのわずかな光を受けてか、銀色のものが覗いていた。


「うわぉ……」

「あー、これ隠れるの無理だ」


 入口からでも分かる。ミラーハウスという名の通り、床以外が全て鏡になっていることが。隠岐が呟いた通り、これで隠れるのは無理だろう。


「完全に姿を現さない謎のカメラマンになる予定だったのにね」

「これは仕方ない」

「志乃の方へ行っていれば良かったね」

「でも、ミラーハウスに興味があったから」



 ☆★☆★



 食い入るように画面を見る。鏡に写った姿は現実で見るならばともかく、それをさらにカメラで映されるとよく分からないものになる。それでも、ここまで姿を見せなかったカメラマンが映っているのは間違いない。


「兄貴って……こんな顔だったんだっけ。ハハ……7年は長いねぇ」


 一年前の記憶さえも時と場合によっては驚くほど思い出せなくなるのだ。7年も月日が経っていれば……例え肉親であろうとも細部まで思い出せるものではない。きれいな思い出として頭の中で整理し、美化したり脳内で補正したりしてしまうからだ。



 ☆★☆★



 二人は鏡の館を進んでいく。証明はつかないから持ってきたライトで周囲を照らしている。それもあってか、進んでいるはずであるが鏡のせいで進んでいるのかいないのか分からなくなりそうだ。


「あーっ! もう! またかっ! 方向音痴じゃないはずなのに……!」


 基本的に進む方向を決めているのは大園らしい。方向音痴ではないと言っているが果たして……。

 いや、ミラーハウスの中では方向音痴ではなくても迷ってしまうのだろう。


「大園さん、床を見れば分かるんじゃないかな」


 見かねたのか隠岐がそうアドバイスした。鏡を見るから訳がわからなくなるのだ。楽しみ方としてはそれもいいのだが、彼等は噂検証のために進まなくてはならないのだ。


「あー、そっか。ありがと! やってみる」


 その後は随分と楽に進んでいたように見えた。よく見れば鏡に映るものには違和感を持つものだ。

 そして、どうやら中心部というような場所へとやって来た。そこは、八角形に鏡が張られている場所だった。


「わぁー……ここ、中心かな?」

「たぶん」

「まだ中心かぁ。こういう所が危険なんだよねー」

「あと、入口出口」


 そのとき、鏡の一枚にぬっと黒い影が現れた。そしてそれは瞬く間に数を増やしていったのである。

 二人がいる部屋へ何者かがやって来たということに他ならない。


「だ、誰っ!?」


 その影は人のものとは思えなかった。ウサギ頭の三頭身姿だったからだ。


「ウサギ頭……? もしかして、ゆめうさか?」


 事前に情報を仕入れていたであろう隠岐はハッと気が付いたように呟いていた。


「何で、そんなのがここにいるわけ?」

「分からない。だけど……」


 その時、ゆめうさが動いた。それはバッと両腕を広げるだけの仕草であったが、二人を驚かせるには十分だった。


「「っ!?」」

『よぉう~こそ~ミラーハウスへ。ここから正気で帰りたくば、境界へ手を触れないことだ。楽しみに見ているぞ! ハァーッハッハッハ!』


 何重にも重ねられたような声が聞こえてきた。最後に高らかな笑い声を残して、その影は忽然と消えてしまった。


「今の、どういうことかな?」

「さぁ? でも、この場所で境界と言えば鏡との境くらいだから……」

「じゃあ、鏡に触れないようにすればいいのかな」

「たぶん」


 あんな謎の着ぐるみの言う通りにしなくてもいいだろう。しかし、『境界』という言葉が意味深に聞こえたのも事実なのだ。


 ミラーハウスの噂は入った人の性格が全く変わってしまうというものなのだから。


 それから、彼等は鏡に触れないように注意しながら進んでいたのだろう。基本的に映る大園は真面目な表情で慎重に進んでいた。


「隠岐君……まだ着かないかな。というか、噂検証できないね」

「あんなものが突然現れたり消えたりするんだ。何か変なことになっているのは間違いない。我慢して慎重に行くべきだ」

「分かってる」


 しばらくして、出口と書かれた扉が見えた。


「あった! 隠岐君、ゴールだよ!」

「……ハッ! 待て、大園……」


 大園が肩越しに笑顔で振り返ってから扉へ駆けていった。それを、何かに気が付いた隠岐が止める。


「……それは扉じゃない!!」

「……え?」


 ぺたり……と大園の手が平らな面に触れた。隠岐の言葉に驚いて振り返ったため、扉を見ていなかった彼女は体を止められなかったのだ。


『つ・か・ま・え・た』


 大園の声が先程のゆめうさのように何重にも重なって聞こえた。隠岐はどこから聞こえたのか分からなかったようで、カメラは一通り周囲を映し出す。


「大園……?」


 彼女はぎょっとして声の方向……鏡を見ていた。


『あなたはわたし、わたしはあなた』


 鏡に写った大園が光のない瞳でその言葉を繰り返し呟く。

 本物の大園の体がふらり……と傾いだ。


「大園っ!」


 倒れる前にギリギリ隠岐が片腕で抱き留めた。カメラはちょうど鏡に向いていたようだ。鏡に写った彼女は、青ざめて目を見開いていた。


「……」

「大丈夫か? 出口へ行こう。この反対側で、すぐだから」


 隠岐は大園の肩を抱いて立ち上がらせた。大園は両手を固く握りしめている。そして、出口が映る。これが本物の出口だ。その周囲の壁も鏡になっていた。


 その一部には、鏡に写った大園が腕を伸ばしている姿があった。隠岐がそれに気づいた様子はなく……出口が開かれ、二人は館の外へ出た。



 ☆★☆★



 ゴクリと思わず唾を飲み込んだ。最後の一瞬の映像が頭から離れなかった。

 大園は固く手を握りしめていたのだ。それは映像に映っていたから間違いない。しかし、鏡の中の大園はこちらに向けて腕を伸ばしていた。まるで、『待って』とでもいうように。


「ミラーハウスで別人のようになるのって……」


 鏡に触れることで鏡の自分と入れ替わってしまうからでは……とは、何の根拠もない推理ではあるが、そう外れてはいないように感じた。


「けど、兄貴は無事だった……と思う」


 視線の先の画面は、例のごとく真っ黒になっている。


<続いて、観覧車の悪夢をご覧あれ……>



 ☆★☆★



 桃色の帽子を被った若槻と、顧問の草場が一緒に覗き込んでいるかのような状態で映った。


「えーと、これで映っているんだよな?」

「赤いライトが点いているので大丈夫だと思いますよ、先生」

「じゃあ、状況説明からか。若槻、頼む」


 この二人の映像はドリームキャッスルの裏をバックにしているものから始まった。


「さて、私達は今、ドリームキャッスルの裏手に回って来ています。なぜかと言いますと、この方向に私達の目標である観覧車があるからなんです」


 若槻は撮影者の後ろへ回り込むように動いた。彼女を追ってカメラも百八十度動く。


「見えますか、あれが観覧車です。あ、言い忘れていましたが、今撮影しているのは草場先生です」

「プロのカメラマンじゃないから多少荒くても許してくれ」

「あはは。それを言うなら隠岐くん以外は皆そうですよ。……それでは、観覧車まで行ってみましょう」


 遠目に見る観覧車はそこまで古いようには見えなかった。裏野ドリームランドの観覧車は丸い形で半分以下がカラフルな色に塗られているようだ。そのセンターにはおなじみのウサギ頭が笑顔を浮かべている。ゆめうさだ。

 ここまでのどの事例にもあいつが関わっている。今回の観覧車も何かがあるのではないかと思ってしまう。


「観覧車の噂は、そこの前を通り過ぎるときに声がするというものでした。だから、私達はただ歩くだけで良いことになりますね」

「いや、聞こえても聞こえなくても原因は何なのか確かめるんだろ?」


 二人は雑談しつつ観覧車に向かって歩いていく。


「そうですよ。さっきのは冗談ですよ。……私本当は幽霊とか苦手なのですが……」

「若槻は大王……じゃない、大園に頼まれたんだったか。苦手なら無理しなくて良いと思うがなぁ」

「でも、季美ちゃんに頼まれたら断れませんから」

「明るい元気キャラで、ちょっと強引でも許せるのが大園の、大園たる所以だな」


 そうやって話しているうちにも観覧車までの道が映る。どこも雑草がのびのびと生えている。それでも、かつて石畳だった跡があるのでそれに沿って歩いているようだ。


「結構育っているな、雑草。観覧車は奥の方だからわざわざ行く人が少ないのか?」

「歩きにくいです……」

「ここは、入れないように鍵をかけているが、清掃や整備の人は雇っていないようだからな。雑草も生え放題だ。……っと、そろそろ観覧車だぞ」


 斜め前から見上げるように観覧車が映った。道なりに進めばちょうどその前を通りすぎることになる。


「では、ちょっと歩いてみましょう」


 若槻が前を歩いていく。いざ、通りすぎる……というところで一瞬固まったが、ぐっと堪えて進んだ。


「うーん……何も聞こえなかったよな」

「そうですね。でも、たまたま幽霊がいなかった可能性もあります」

「そうか? 幽霊に不在も何もないと思うが……こういうところにいるのって地縛霊とか、そういうものだろ?」


 意外とオカルトのことを知っているようだ。それが、顧問となった理由かもしれない。


 二人は観覧車の方へと向かった。ずいぶんと錆びた乗り場が近付いてくる。


「若槻、これが鍵だ。開けて近くまで見に行くぞ」

「はい」


 若槻がガチャリと鍵を開けた。

 コツ……コツ……と靴音が響く。階段を数段上がったところが観覧車乗り場だ。


「普通の観覧車だな」


 乗り場から静止したゴンドラが一つずつ映る。特に珍しいわけでもない、ごく普通の観覧車だと言える。


「そうですね。ゴンドラの中も特に変わったところはありません」


 ゴンドラの内部にあるのは椅子、空調設備などだった。何か特別なものがあるわけではないようだ。では、どうしてこの観覧車に妙な噂があるのだろうか。


「観覧車は……何か事故が起こったとかは聞かないよな?」

「いえ……子どもが忽然と消える噂は観覧車も関わっていたと思います。確か、ゴンドラが一周する前にいなくなってしまったと……」

「なるほど。そうだとしたら観覧車が動かないと検証できないんじゃないか」

「あ、確かにそうですね」


 もう一度ゴンドラを映していく。ここでは恐ろしいことにならずに済みそうで安心する。





『出して……』





 か細い声が聞こえた。

 その瞬間、カメラはバッと正面のゴンドラへと戻る。


「せ、先生……今……」

「若槻も聞こえたか…ヤバそうだったら直ぐに逃げるぞ」

「はい」


「誰か、いるのか……?」

『……出して』

「どこにいるんだ」

『ゴンドラの、中……』


 はっきりと聞こえた。会話も出来るらしい。映像は少し小刻みに揺れていた。おそらくカメラを持つ草場が緊張に震えているのだろう。


「若槻、念のため下がっていろ。道のところまで」

「はい……」

「今ゴンドラのとこに行くから」


 ゆっくりとゴンドラへ近付く。そして、窓から中を見られる位置までやって来た。


 右の椅子を見る。誰もいない。

 左の椅子を見る。誰もいない。


 内部にはナニかがいるような様子はなかった。がらんどうだ。


「……いない、よな?」

『出してよぅ!!!』

「っ!?」


 下の方からガバッと頬のこけた少女が飛び出してきた!


『出して出して出して出して出して

 出して出して出して出して出して

 出して出して出して出して出して

 出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せぇ!!』


 ガタガタとゴンドラは大きく揺さぶられる。こちら側の窓にびっしりと手の跡がつく。


「っ、逃げるぞ、若槻!」


 恥も外聞も無く二人は逃げ出した。あれほどまでの異常が起こっていたら当然のことだろう。


 だが……


「うっ!?」

「いやぁ!!」


 一歩踏み込み、彼等が戻ろうとした道は……草が生えていた道は、人の手で埋め尽くされていた。踏み入れてしまった足が取られる。


「うぐっ……あ」

「きゃあああ!!」




『あなたたちが……わたしたちの代わり……』




 暗転



 ☆★☆★



「続いて、ドリームキャッスルの真実をご覧あれ……」


 かつては白く美しかったのだろうその城も、人の手が入らなくなると途端にくすんだ色へ変わってしまったようだ。ここ、裏野ドリームランドの中心にあるドリームキャッスルは昔を想像できる分、余計に夢から取り残されてしまったように感じる。


「……これで、撮れているか? 撮れているものとして始めようと思う。こちらタカだ。今はドリームキャッスルの噂検証に向かうところだ。見えるだろうか。あれが目的の場所になる」


 緑の帽子を被ったタカが映った。彼は腕を伸ばして尖塔を示す。


「……噂は、あの城の中に拷問部屋があるというものだった。ありえない」


 簡単に噂を述べるとタカは首を振った。

 彼自身は、噂は事実無根のものだと判断したようだ。


 無理もない。

 ドリームキャッスルは遊園地のアトラクションなのだ。拷問部屋などという、無駄なものを作る意味はないからだ。


「……だが、鍵まで寄越されては調査しないわけにはいかなくなった。だから、これからあそこに入って一通り見てみようと思う。もちろん、アトラクションではない場所も入っていいと許可をもらってある。では、行ってみるとしよう」


 正面の大きな扉が近付いてくる。そして、タカはふっ……と別の方向へと進んだ。

 カチャリと大扉の隣にあった扉の鍵を開けて中へと入る。おそらくそこはスタッフ用のものだ。

 そして、ドリームキャッスルの内部へ……。


「……大扉は人が一人で開けられる構造をしていない。そもそも、ドリームキャッスルツアーはここから入ることを想定していなかった。帰りに正規の入り口を通るつもりだから、楽しみにしておいてくれ」


 タカが持つライトで辺りが照らされる。

 城の中は西洋の城に見られるような凝った作りをしておらず、むしろ現代的な構造だった。そっけない壁や床を映していく。少し離れたところにはエレベータがあった。電気系は切断されているので今は使えないだろう。


「……この辺りはスタッフルームというか……裏で働く人が基本的に使う場所だから快適にしてあるのだろうな。この近くからドリームキャッスルツアーで歩く通路に出ることが出来るらしい。一応行ってみるか」


 STAFF ONLYと書かれた扉を開けて進むと、凝った装飾がなされた柱が映った。映像はそのまま天井や床、通路の向こう……と動く。


「やっぱ客向けの場所だから凝ってるな」


 コツコツと歩く音が響く。タカが出てきた扉からおよそ百メートルほど歩いたところに、アトラクションがあった。そこには『キャッスルメモリー』という言葉がある。おそらく、アトラクションの名前だ。


「確か、裏野ドリームランドの歴史を辿るというものだったはずだ。もちろん、設定上のものだ。それによると、この城は裏野ドリームランドの全てを記憶しているそうだ。

 実は、ここの裏には警備室があるんだ。だから、部分的には合っている」


 そして、彼はまたSTAFF ONLYと書かれた地味な扉を通って裏へ戻ってきた。


「どうせなら警備室も見ていこう」


 そうしてやって来た警備室。もちろん、ハイテクな機材がそろっていた。黒い画面がいくつもある。おそらく、かつてはそれぞれのアトラクションの様子が映ったのだろう。


「……特におかしい所はないな」


 そのとき、カチリと何かのスイッチが押された音が聞こえた。


「何だっ!?」


 パッと映ったのは黒々と口を開けた穴だった。一瞬映っただけだが、タカの足元にあった。そこを、悲鳴を上げる余裕も無く、落ちていく。


 ゴトン


 投げ出されたカメラが音を立てて床に落ちた。ジジッ……と画面にノイズが走り、それがなおった後、辺りはシン……と静まっていた。


 ……コトリ


 そこへ、誰かがやって来てカメラを持ち上げて机に置いたようだ。

 一体誰が?

 パッと警備室の画面の一つが変わった。タカの恐怖に引き攣った顔が映る。その視線が向かっている先へと映像が動いた。


『ひとつずつ、ためしてみようか』


 ドリームキャッスルには、多種多様な拷問器具を壁に並べた、赤黒い部屋があった。

 そこまで映すと、映像はぷつりと切れてしまった。



 そして、流れるエンディング。



 ☆★☆★



「……これで、終わり……?」


 結局、兄貴がどうしてこれを作ったのか分からなかった。だが、話を聞こうにもこのDVDに登場した人達は今はもう誰もいないのだ。


 乾一聡カズ:行方不明

 小渕翔吾ショウ:行方不明

 幣原剛史タケシ:行方不明

 近衛岳明タカ:行方不明

 若槻志乃:行方不明

 大園季美佳おおきみ:自殺

 隠岐祐介:行方不明

 草場蓮(顧問):行方不明


 これが、今の彼等の現状である。兄貴と大園は帰ってきた。恐らくは、あの裏野ドリームランドから。しかし、その数日後に大園は自殺してしまった。聞いた話だと、大園は自殺などするような性格ではなかったらしい。だが、部活の友達と遊びに行って、帰ってきたらまるで別人のように(・・・・・・・・・)明るかった性格が暗くなり、部屋に引きこもるようになっていたらしい。

 一方で、兄貴は変わらずにいたと思う。7年前の記憶で、曖昧だが……とくにおかしな所はなかった。実の妹のみならず、両親も同じ意見だ。それなのに、突然いなくなってしまったのだ。


 DVDを見て思う。裏野ドリームランドによって何かが狂わされたのではないか、と。あの遊園地は訪れた人を取り込んでしまうのかもしれない。死の世界へと。


「優希―、ご飯よ-! 降りておいで」


 フッ……と日常へと戻る。


「分かったー」



 ☆★☆★





 パッとスポットライトに照らされたウサギの着ぐるみが警備室の画面の一つに現れる。


「いかがだっただろうか。一部の来場者には我等ドリームランドの広報を(おこな)ってもらっている。これが君達の疑問に答えたものであれば良いと思う。

 裏野ドリームランドでは、ご覧の通り刺激的なアトラクションを用意している。現世から切り離された世界を提供しよう。君達の来場を楽しみにしているぞ。ハァーッハッハッハッ!」


 そう高らかに笑うと、一礼しスゥッと消えていった。





          Fin.



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