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セブンスワールド  作者: あすぷ
第1章 START UP
5/19

#待ち合わせ

 耳元に感じる不快な振動音で目が覚めた。

 その震源を目がけて横になったまま右手を伸ばすけれど、目覚めて間もない朧げな感覚では距離感が掴めず、諦めて起き上がるまで右手は空を切り続けた。

 まだ完全に開ききらない瞼の隙間から、ようやく手にした震源の画面には『アラーム』の文字が小刻みに震えながら映っている。

 なんだよ、アラームじゃんか。

 夢に出てきたカナに騙されて悔しいとも情けないとも違う変な気持ちで思い返して見ると、いつもとは違う不思議な夢だった。

 夢の中で会話ができたことも、珍しく妹が出てきたことも不思議ではあったけれど、それとも違う違和感を感じる。

 まるで、今朝見送ったばかりの現実のカナに会ったような、夢なのにリアルな感覚だ。

 まあ、夢なんだけど。

 ついでに、このアラームが17時を告げるアラームだってことも、夢だと良いんだけど。

 

 ”博多駅の筑紫口に17時だぞ、忘れんなよ”


 ……ヤバイ。

 昨日カズキから言われた言葉が、どこからともなくリフレインしている。

 LINEのアイコンには12件の新着メッセージを知らせる通知が出ていた。

 状況からして、十中八九カズキから遅刻を咎めるメッセージなのは間違いないが、せめてもの抵抗としてジワリとねじ込むようにゆっくりLINEアイコンを押し込む。

 秒速1センチほどの速度で押すという抵抗もむなしく、LINEは光ファイバーと4G回線を伝って超高速でカズキに『既読』を知らせやがる。

 メッセージには


 『今どこ? こっちはもうすぐ着く』

 偉いねー、ゆとりを持った30分前行動。偉いねー。


 『既読つかないけど、見てるか?』


 見てないから既読ついてないんだけどねー。


 『おーい、寝てんのか? マジで寝てんのか?』


 お察しの通り、寝てましたねー。超気持ちよく寝てましたねー。


 『駅で待ち合わせてるの俺じゃなくてシオン先輩だからな。遅れるなよ』


 ……………………………………………………は?

 読み終えてほんの一瞬だけ思考が止まったが、我に返るや否や慌ててカズキに電話をかける。

 昨日電話で言っていた『任せとけ』は、こういうことだったのか。

 先ほどまで瞼を閉じればすぐにでも夢の続きが見れそうな感覚だったのに、今はこれでもかと目を見開いて夢なら覚めろと心底願いつつコール音を聞いている。

 一定間隔で鳴り続けるコール音が重なっていくようにイライラは大きくなり、10回目の音でピークを迎えると秒速100センチほどの速度で終話ボタンを押した。

 とにかく、急いで駅に向かおう。

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