異世界はなんか肌に合いません
「へっくしゅん。目がかゆ………うま………」
目が痒いし、鼻水も止まりません。
手足もちょっと痒いです。
「あの、大丈夫ですか?」
「らいじょうぶで………しゅっ。くしゅっ」
いや、ダメです。
急いで人通りの多い道から横道に入りました。
「うわっ」
横道から改めて道を見ると大変でした。
モフモフでいっぱいです。
さすが異世界です。
獣人がいました。
それも犬や猫の獣人が。
さっき声をかけてくれた人が心配そうに、こちらを見ています。
いや、それとも不審そうになのか。
猫の獣人でした。
普通に猫が二足歩行しています。
モフモフした毛皮をしています。
「にゃんちゃん可愛いなぁ」
でも私は犬猫のアレルギーなのです。
とっても重度のアレルギーなのです。
近づいたらダメです。
くしゃみ鼻水が止まりません。
回復魔法を小さく唱えましたが治りません。
アレルギーは免疫反応だからなのか。
えっ、神様からもらったチートじゃないのか。
私は嫌な予感を抱えながら、宿屋を探し始めました。
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改めまして、異世界からこんにちわ。
私は崎原薫と申します。
年は高校生16才。
交通事故で死んだら、神様に体は生前の時のままで異世界に転生させて頂きました。
チートの魔法能力をもらった上です。
ですが、アレルギーまでも再現されてました。
犬猫のアレルギーです。
異世界って獣人居ます。
結構いっぱいいマウス。
人間が見当たりません。
普通に毛が舞ってます。
「っくし。っくしゅん」
ちなみにまだくしゃみと鼻水が止まりません。
宿屋の看板娘さんが犬〔多分スムースコートチワワ〕でした。
というか、犬の獣人さんが経営してる宿屋ばかりです。
アレルギーが止まりません。
神様からいっぱいお金を貰っているので、すごく良い宿屋に泊まる事にしました。
でも、転生して最初に来た街はどこも犬の獣人さんが宿屋を経営しています。
犬の獣人さんは、マメで番犬的な意味なのかそこそこ戦闘能力が高く安全だからだそうです。
宿屋は犬の獣人さんがやっている事がほとんどだそうです。
ちなみに人は身体能力が低いし、同じ事を続けるのに獣人より忍耐がないしで宿屋を経営していません。
どうなってる異世界。
ちなみに犬や猫の獣人さんは、何故か多少邪険にされても人間種族が好きらしく好意的でした。
「ごゆっくり」
犬の獣人の客室係さんが、心配そうに扉を閉めていきました。
異世界には犬猫のアレルギーの人はいないのでしょうか。
とりあえずくしゃみ鼻水止めたい。
とりあえず何故か水洗の〔水の魔法かな?〕お手洗いを済ませ、火の魔法により温かい〔何故か適温〕お風呂を済ませました。
そして、ある事に気付きました。
いつも使ってる歯ブラシと歯磨き粉がない。
しみない歯磨き粉がないと、知覚過敏なのです。
回復魔法をまた小さく唱えましたが、知覚過敏は治りません。
傷とかダメージではないからなのかな………。
今、気づいたけど、歯医者さんに定期健診行かないと歯石の除去が………。
早くも異世界の地味な厳しさに心が折れそうになりながら寝る事にしました。
「っくしゅん。はっくし」
くしゃみ鼻水が止まりません。
多分、犬の客室係さんがベッドメイキングをして下さったからでしょう。
とりあえず仕方ないです。
憧れの異世界、こんな事もあるでしょう。
明日は異世界の定番冒険者ギルドに行かなきゃ。
おやすみなさーい。
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………
…………
改めまして、こんにちわ。
異世界の病院からこんにちわ。
「はーい、薫さん。ごはんの時間ですよー」
「はーい。ぱくっ、おいしー!」
冷めてるけど。
獣人さんが作ってるから冷めてるのかな。
猫の獣人の看護師さんにごはんを食べさせて貰いながら、こんにちわです。
アレルギーはばっちり治りました。
歯もばっちり知覚過敏なしです。
何故かというと。
「モンスターに襲われたショックが治りきるまでは入院ですよー」
「はーい」
そうです。
モンスターに襲われて、ほぼ死にかけて必死に回復魔法を唱えて、ほぼ新しい体になったからです。
あの犬の宿屋に泊まった後、冒険者ギルドに行って獣人さんから心配されながら、冒険者になりました。
冒険者になって、自信満々で街の外に出たら運悪く虎のモンスターが居たのです。
チートの魔法が使えるのに負けました。
何故か。
それは野生のモンスターの速度に、私の速度が追いつけないからです。
飛びかかってくる虎に火の魔法を唱えた所で当たりません。
唱え終わる前に噛みつかれました。
とりあえず、回復魔法を痛みに耐えながら唱えると、回復速度は食べられる速度を上回りました。
イヤな速さです。
街の外を巡回していた犬や狼の獣人さんに救出されて助かりました。
良かった。
「人間は弱いのだから無理はするな」
「そうだ、人間は守られていればいいのだ」
と叱られました。
その後、人間は無料の病院に運ばれて今の状況です。
その時、アレルギーが治ってる事に気付きました。
体をだいぶ食べられて助かったからでしょうか。
やれやれです。
もう危ないことはしません。
モフモフの獣人を愛でながら、何か私にできる事をして暮らしていきたいです。
+++++
主人公崎原薫が病院で一息ついている頃、獣人によりこんな会話がされていた。
「人間は貴重だからな、大事にしないと」
「あんな脆弱でよく生きてられるものだ」
「でも、人間ってなんだか好きなのよね。懐かしさを感じるというか、褒めて欲しくなるというか」
「守るべき存在というのは大事だからな」
「もう国には人間の存在を報告した。危なくないよう監視しないと」
「いきなり虎のモンスター相手に死にかけるからな」
「愛すべき困った種族だよ、人間は」
私は異世界行ったら多分すぐ事切れる。