表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
土を盛りすぎる人  作者: 東東
1/8

『ねぇ、アナタ、どうしてそんなに淋しそうな目をしているの?』

「マダム、僕のこの淋しさの理由を聞いて下さるのですか?」

『勿論よ。是非、聞かせてちょうだい。語ることで、聞くことで、人はその心を分け合うものよ。アナタの淋しさ、ワタクシに幾許か引き受けさせていただきたいの』

「この汚れた僕なんかを相手に、そんなことを仰って下さったのはマダム、アナタが初めてです! あぁ、なんと嬉しいお言葉なのでしょう! そのお言葉だけで、この心は救いの光を見出すことが出来そうなのですが・・・、あぁ、マダム、そのお優しきお言葉に甘えても宜しいのでしょうか? 僕の淋しさの理由を、語っても宜しいのでしょうか? 僕は、僕は・・・、とても、とても淋しいのです。最早耐え難いほど、淋しいのです! 何故ならば僕には、ただ一人も友と呼べる者がいないのです! ただの、一人もです!」

『まぁ! それはなんと哀しいことでしょう! そんなに哀しいことがあるのなら、アナタがそんなにも淋しそうな目をしているのも分かります。えぇ、分かりますとも! ・・・でも、それでしたらこうしたら如何かしら? 今日から、ワタクシがアナタのお友達になるのです! そうすれば、アナタがもうそんな淋しげな目をすることはなくなりますわ!』

「あぁ! マダム、アナタはなんてっ、なんて素晴らしい人なのでしょう!」


 そこは、狭く、薄暗い、真四角の小屋の中。寒さと、暗さと、淋しさだけを詰め込んだ箱のようなその中で、声色を変えて一人二役を演じている演者に、声をかける者はいない。

 逆に、演者が声をかけることもない。誰も、いないのだ、その場所には。演者と、他は・・・、その両手に掲げられた、もう一本の腕、二役目を務める『彼女』以外には。

『彼女』は、その『腕』は、優美な曲線を持ち、長い指先を薄い玻璃のような爪で縁取った、細く、白い『腕』だった。白く、とても、白い。色をつけるべき血を一滴も持たぬ白。『腕』だけの『彼女』、沈黙を、永遠の沈黙だけを持って。


 それは、『彼女』が人形遊びの主役として選ばれた、翌日の夜のことだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ