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飛び込んだカエル
カエルは草陰にひそみ、近づいてくる足音に耳をすませた。
ズリズリと引きずるような足音が間近にせまった時、カエルは足音の主の前に、勢いよく飛び出した。
「おぉっ!!」
突然目の前に飛び出した小さな影に驚き、しりもちをついたのは、杖をついたおじいさんだった。
「やあ・・・なんだ、カエルじゃぁないか。急に飛び出すからぺしゃんこにするとこだったわい。」
おじいさんはカエルを優しく道端によせると、「よいこらしょ。」と立ち上がった。
杖をつきながら去っていく、おじいさんの後ろ姿を見送りながら、カエルはなぜか物足りなさと虚しさを感じた。
―――飛び出したカエルに驚いた時の、おじいさんの顔は見ものだったし、愉快な気持ちになって笑えたが、今はただ空っぽになった心だけが残されていた。