表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

幼かったカエル

 暴れ者のカエルは、胸につかえているモヤモヤの正体を突き止めようと必死で考えをめぐらせたが、何も思いつかずただいら立ちが増すばかりだった。



 ―――実のところ、まだ幼かったころのカエルは、乱暴者どころか身体の小さい能天気なのんびりやだった。


 ところが、どの世界にも悪質な奴はいるもので、まだ言葉も上手く話せないでいた小さなカエルを意地悪なカエル達が面白がって、悪口を言ったり暴力をふるったり、仲間はずれにしては陰でクスクス笑い者にしたり・・・いつも嫌がらせをしていたのだ。


 幼かったカエルは、傷つき哀しみ…そして怒りと憎しみに震えていた。


 小さくても力だけは人一倍強かった幼きカエルは、自分の心の痛みや苦しみを伝えるため、次第に相手に報復をするようになった。


 しかし、報復にあったカエル達は反省するどころか自らの非道を棚にあげ、幼いカエルを"悪魔"とののしり、多くの仲間を誘い込むと、追放しようと襲い始めたのである。


 そんな連中を返り討ちにあわせているうち、いつしかカエルはただの乱暴者へと成り果てていった・・・・・・。


  今のカエルには、幼き頃の心や記憶は微塵(みじん)も残されていない――。



 「あ―・・・あの犬の間抜けヅラ、ホント最高だったな。あんなに図体(ずうたい)のでかい奴が、オレのために道をあけるなんて、気分がいいもんだ。」


 考えあぐねた暴れ者のカエルは、モヤモヤの正体を無理矢理結論付けた。


  相談相手もなく、口からでる台詞(せりふ)が、独り言にしかならないカエルにとって、これ以上考え続けることはつらすぎたのだ。


 柴犬の去っていく後ろ姿が頭からはなれないカエルは、心にまとわりつくモヤを振り切るように、思い切りジャンプした。


 ―――そうだ!我ながらいいことを思いついたぞ。こいつは当分退屈せずにすみそうだ。


  風を切って(ちゅう)をまいながら、悪意に満ちたひらめきに胸を(おど)らせ、暴れ者のカエルは(ゆが)んだ()みを浮かべた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ