幼かったカエル
暴れ者のカエルは、胸につかえているモヤモヤの正体を突き止めようと必死で考えをめぐらせたが、何も思いつかずただいら立ちが増すばかりだった。
―――実のところ、まだ幼かったころのカエルは、乱暴者どころか身体の小さい能天気なのんびりやだった。
ところが、どの世界にも悪質な奴はいるもので、まだ言葉も上手く話せないでいた小さなカエルを意地悪なカエル達が面白がって、悪口を言ったり暴力をふるったり、仲間はずれにしては陰でクスクス笑い者にしたり・・・いつも嫌がらせをしていたのだ。
幼かったカエルは、傷つき哀しみ…そして怒りと憎しみに震えていた。
小さくても力だけは人一倍強かった幼きカエルは、自分の心の痛みや苦しみを伝えるため、次第に相手に報復をするようになった。
しかし、報復にあったカエル達は反省するどころか自らの非道を棚にあげ、幼いカエルを"悪魔"とののしり、多くの仲間を誘い込むと、追放しようと襲い始めたのである。
そんな連中を返り討ちにあわせているうち、いつしかカエルはただの乱暴者へと成り果てていった・・・・・・。
今のカエルには、幼き頃の心や記憶は微塵も残されていない――。
「あ―・・・あの犬の間抜けヅラ、ホント最高だったな。あんなに図体のでかい奴が、オレのために道をあけるなんて、気分がいいもんだ。」
考えあぐねた暴れ者のカエルは、モヤモヤの正体を無理矢理結論付けた。
相談相手もなく、口からでる台詞が、独り言にしかならないカエルにとって、これ以上考え続けることはつらすぎたのだ。
柴犬の去っていく後ろ姿が頭からはなれないカエルは、心にまとわりつくモヤを振り切るように、思い切りジャンプした。
―――そうだ!我ながらいいことを思いついたぞ。こいつは当分退屈せずにすみそうだ。
風を切って宙をまいながら、悪意に満ちたひらめきに胸を踊らせ、暴れ者のカエルは歪んだ笑みを浮かべた。