第14話 シュトリアの街
馬車で3時間半(休憩も含め)も揺られ続けたが、もうそれも終わりに近づいてきた。
そう秋人達の目の前には小さいがはっきりと外壁が見えているのだ。
それはどんどん大きくなり、ついにその大きさが分かるほどに近づいた。
高さは約30m程。それが横にずらーとある。
「おぉー! これがシュトリアの街か(中は見えない)! 見た感じ王都と同じ位でかいな!」
「それはそうだぜ、アキトよ。首都に近ければ近いほど経済が回るからな、自然とでかくなるのさ」
「なるほど。確かにそうだな」
秋人はやっとこの旅が終わると思って興奮している。
何しろ尻が痛くなる旅だったし、お約束の魔物や盗賊に襲われると言ったイベントが何も起きなかったのだ。まぁ、それが当たり前だとはわかってはいるがそれでも期待してしまう。
(これが異世界の旅だと、そんなもん認められん!)
だから秋人がこのように思うのは至極まっとうなのだ。
こんなつまんない旅なんかより、街で観光などの娯楽で遊んだ方がマシだ。
そのため秋人は馬車の旅より、シュトリアの街に期待している。
それを第三者の目で見れば、浮かれているように見えたのかもしれない。
『マスターはしゃぎ過ぎです。それに旅は始まったばっかりですよ。それでは体力が持ちません』
『はぁー、なぁ、ナビ何度も言うが、気分が大事なんだよ。余計な事言うもんじゃない』
『……善処します』
『まぁ、それでいっか』
そして馬車はシュトリアの街に入るために、門の近くにある検問場を目指している。
検問場には多数の馬車などがあり少し待たないとダメみたいだ。
『なぁ、ナビ。検問って何するの?』
『簡単な身辺調査や証明書に偽装が無いかなどの簡単な物です。あと、大きな街なのでは犯罪者かどうかを見るためスキルや魔法具などで調べたりします』
『なるほど。それなら俺は引っかからないな』
『……』
そして秋人達が乗っている馬車は検問の列に並ぶのだった。
『長い……』
『仕方ありませんよ。これだけ大きな街なんですから』
秋人達は検問の列に並んで1時間程が経とうとしている。
それでも秋人達が乗る馬車の前には5つの馬車がある。まぁ、それは王都から一緒に来た馬車だったが。
これまで見ていた感じだと1つの馬車にかかる時間はおよそ10~20分程。それが3つほどの場所で行われる。
まぁ、あと2、30分程で秋人達の番は来るだろうが、それにしても長い。
『我慢してください。必要な事です』
『それはわかってるけど……』
『はぁー、前々から思っていましたがマスターってせっかちですね』
『だって待つの面倒じゃん』
『……もう少し大人になってください』
『わかってるって』
俺自身もわかってる。自分勝手な性格だって。
それでも俺は自分の我儘を通したいんだ。
『本当に我儘ですね』
『……だから勝手に入ってくるなって』
『マスターかっこよく言ってもダメですから』
『……やっぱりダメ?』
『ダメです』
『……いや~、ナビが頼りになるから俺甘えちゃうんだよな!』
『……』
『無言やめて! ボケは無視されるのが1番きついんだって!』
『えぇ、知ってます。ところでマスター、今のはボケだったんですね?』
『……い、いや、本当に思ってることだよ?』
『そうですか。じゃあ、これからは私の言うことを聞いてくださいね?』
『……』
『いいですね?』
『……多分』
『まぁ、今はそれでいいでしょう』
そう言ってナビは引き下がった。
(マジでナビが遠慮しなくなってきたな。まぁ、いいんだけどさ……)
丁度その時、前の馬車が終わり秋人達が乗っている馬車の番が来るのだった。
(お約束は無いくせに、こいうジャストタイミングは来るんだな)
と思う秋人であった。
「産業ギルドの方ですね? 証明書お見せください」
「はい、こちらです」
「確かに」
「それでは馬車の方を調べさせてもらいます。それとお乗りになられている方も、いくつか質問させていただきます」
そして検問をしている人たちは馬車を調べる人、乗っている人に質問する人に別れ、動いきだした。
(うわ~、すげー慣れてるな。まぁ、当たり前か、これで飯食ってるんだもんな)
「では、この街に来た理由は何ですか?」
「俺はここの友人と会うためだ」
「私はハイドに行くための途中です」
「私とこのお兄さんはクルス村に行くため」
そうアリサが言った時にクルスが反応を示した。
秋人はそれを見て、笑いそうになる顔を引き締めてまっすぐにクルスの事を見た。
うん、無理。笑うの我慢できない。
秋人それはもうニヤニヤとしてクルスの顔を見ている。
クルスはそんな秋人を見て「むッ」っとしていたが、あいにく秋人はそれを気にするほどの良心は持ち合わせていなかった。
まぁ、幸い検問中だったので何か言ってくることはなかったが。
「では、皆様の荷物を見してもらえないでしゃうか?」
「俺のはこれだ」
「私はアイテムボックスを持ってるわ」
「俺も。ちなみにこいつのも入ってる」
「そうですか。では、少し鑑定させてください」
「良いですよ」
『マスターこれはアイテムボックスに変な物が無いかを鑑定するだけであってステータスなどを見るわけではありません』
「俺も大丈夫です」
『わかった。てか、そんなピンポイントで鑑定出来るのかよ』
『いえ、これは、ただ登録された危険な物、例えば麻薬、偽金、人体などの登録してある物が入っていた場合のみ分かると言うものです』
『へぇ~、登録って?』
『それは後で説明します。とりあえず今は検問の方に集中してください。疑われますよ』
『了解』
「はい、ありがとうございました。次にそれぞれ犯罪履歴が無いか調べていきますので、この水晶に手を乗せてください」
「ほい」
「はい、大丈夫です。では次の人」
「はい」
「はい、大丈夫です。では次の人」
……
……
……
と馬車に乗っている人全員が水晶に手を置き、水晶は何の反応も示すことなく終わった。
「はい、ありがとうございました」
そして検問の人は頭を下げて、馬車を下りて行った。
まぁ、簡単に言えばこれだけだった。質問の内容もあまり大切ではないみたいだったし、多分犯罪履歴が無ければすぐに入れるんだと思う(あったら長くなると思うが)。
あとは馬車などを調べ終わるのを待つだけだ。
まぁ、産業ギルドの物だから、他の馬車と比べてすぐに終わると思うが。
待ってる間に先ほどの事をナビに聞くのだった。
『で、さっきのどんな仕組みなんだ?』
『簡単に説明しますと、犯罪を犯した者は魔力や何の犯罪をしたかなどの細かい事をアイテムに記録させます。記録したアイテムは一か所に集められ、その記憶したデータを神記晶と言う名の”神器”に記録させます。そして神記晶と繋がったアイテム(水晶)で、マスター達がが受けたように神記晶と繋がった水晶で調べます。そして、もし神記晶に記録された魔力の持ち主だったならば、水晶が反応する、という仕組みになっています』
『なるほどね。で、神器って何? 大体予想はついてるけど』
『えぇ、マスターが思っている通りです。神の武器として知られています。一様言っときますが構造やどんな物があるかとかは言えませんからね。盟約に触れますから』
『わかってるって』
(知られている、か。正解でもあるだろうけど、少し違うんだろうな。まぁ、ありがちな設定だな)
そして馬車の方も検査が終わり、進み始めた。
そして秋人達はとうとうシュトリアの街の門を潜った。
そこに広がるのは————
……
……
……
王都と同じ風景だった。なんかこの感じ、王都を出た時も感じたな。
まぁ、確かにすぐ近くにある街だから、そこまで変わるものじゃないとわかってはいるが、こうも何も変わらないとつまらないな。
(はぁー、なんで現実はいつもこうなんだ)
『……』
そして無慈悲にも馬車は産業ギルドを目指して進んでいる。
その流れる景色(乗るために開けられている後ろを見て)を眺めながら秋人はもう諦めていた。
『なぁ、ナビ。お前の言う通りだよ。お約束なんて物は現実には存在しないんだな』
『……そんなしみじみ言われても困ります……』
「お兄さん大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。少し現実って物を思い知らされているだけだから」
「?」
「……」
クルスは秋人の顔を見ながら何かを考える様なしぐさを取った。
しばらく考えていたクルスは、考えがまとまったのか秋人の顔を見ながらこう言ってきた。
「アキト、この街には奴隷がいるよ」
「!? ……ど、奴隷だと!」
「うん」
なん、だと。
——奴隷——
あぁ、なんて響きがいいんだ!
奴隷、それは主人に尽くし、奉仕してくれる存在!
いつでも、どんな時でも俺を癒してくれる存在!
そしてあんなことやこんな事をしても許される存在!
あぁ、そう、これだよ! こいうのを待ってたんだよ!
奴隷、自分の好きなように出来る存在。
ゲヘへへーーーー! じゅるり。
「ハッハッハーー! こうしている場合では無いな! 早速奴隷を買いに行こう! さぁ、夢の奴隷生活へ」
「……」
「……」
アリサとクルスはこちらをゴミでも見る様な目つきで見てきた。
おい! クルスお前が言ったことだろ! なんでそんな目で見るんだよ!
「別に良いじゃん! 俺も男だし! 性欲とかもあるし! なんたって可愛い子に奉仕されたい!」
「……キモ」
「……さいってー」
「……アキトよ、それはない」
な、なんだよその眼は。
ま、まぁ、確かに変な事言ってる自覚はあるけど、そんな目で見なくても良いじゃん!
と、ゴミやクズを見る目をしている2人に言ってやりたい!
言えたら、どんなに楽か。
はぁー、なんでこんな時だけお約束の反応なんだよ。
こんっちくしょーーーー!
『マスターキモイです』
グサッ! バタリッ。
秋人は倒れて動かなくなった。まるで屍のようだ。
な、ナビにまで言われるだと。
死にたい。いや、死のう。
「お兄さん……」
「……」
「まぁ、男の宿命だよ」
何の宿命だよ。
あと、覚えとけよクルス。
この仕打ちいつか必ず晴らす。
「もうやめてー!」と言っても許さない。
その顔を屈辱に満ちた顔にしてやる。
そう、あんなことやこんな事をしてやる。
多分いや、絶対その前に殺されると思うけど。
……
……
……
飽きたな。
「どっこらしょっと」
そう言って秋人は起き上がり、先程までのちゃらけた雰囲気を引っ込め、至極真っ当そうに、話を続けるのであった。
「まぁ、お遊びはこの辺にしてさ、まだ着かないの?」
そこには今までの事がなかったように振る舞う姿があった。
無理にとか空気を読んでとか、そいう類のものではなく、普通に疑問に思ったことを聞く様な感じの姿だった。
その豹変っぷりはさすがのクルスとジンバも困惑顔をしている。
「どうしたお前ら?」
「……え、えぇ、もう少しかかるみたい」
「……4、5分てところじゃ」
「そうか。いい加減尻が痛いんだよな」
「……」
「……」
だが、そんな中でもアリサは秋人の変化を気にすることはなく平然とした姿でこちらを見ている。
「飽きるの早いね。まぁ、お兄さんらしいけど」
「よくわかってんじゃん」
本当お前はすごいな。この短時間で俺の事をよく理解してる。
それともスキルのお陰か?
まぁ、どちらにしろアリサは俺の事を理解しているのは変わらない。
何故そこまで俺の事を理解してるかは知らんが。
秋人の考えは実に分かりやすく単純だ。
初対面の相手などは印象良く、愛想をふりまく。
丁寧で優しいく、頼りになる。
そんな印象を与えるようにする(表の顔)。
そして俺の本質が分かる奴には自分の為だけに動く。
人の事を考えないで自分勝手に振る舞う。
秋人がやりたいと思ったらやるし、つまんないと思ったら速攻でやめる。
気に食わないと思ったら徹底的に叩き潰す(心身共に)。
簡単に言えば、これが秋人の本質だ。
こんな自分勝手な行動をしても、多分お前は俺に付いてくるだろうな。
何故かそう確信があった。
そして馬車は産業ギルドに着いた。
そこは王都にあった産業ギルドよりかは幾分か小さい物で、見た目はほとんど一緒だった。
そして秋人達は馬車を下りて、産業ギルドの中に入って行く。
そこで秋人とアリサは次の目的地、エリトラの街行きの馬車のチケットを買いクルス達と合流した。
余談だが、クルス村に行くにはいくつかの街や村などを経由していかなければいけない。
大体直線距離にして1000km前後。多分馬車や道の関係で迂回とかもすると思うから、もう少し長くなると思うが。余談終了
ジンバはシュトリアの街そのものが目的地だったので旅はこれで終わりみたいだ。
クルスは隣の国、ハイド(国の名前)を目指しているため違う馬車に乗るようだ。そのためここからは秋人達と別行動になる。
そしてジンバが「せっかく仲良くなったんだから飯でも行かないか?」と言ったため、秋人達はジンバの案内で食事をすることになった(奢りでは無いみたいだ)。
特に喋ることもなくジンバを先頭にして歩いて行く。
そしてジンバはどんどん人の気配の無いほうへと向かって行った。
路地裏や人一人分がやっと通れるような狭い道などの怪しすぎる場所を歩いている。
それに文句を言う人は誰一人としていなかった。
クルスはこれまでの経験で危険ではないとわかっている。
アリサは直感的に大丈夫だと感じている。
秋人は——
『なぁ、ナビ。この辺に飯が食えるとこあるのか?』
『ありませんね。それにジンバさんは「店で」とは言ってませんからね。マップといえども”店では無い物”を表示することはできませんし』
『あぁ、なるほど。そいうことね』
『……マスター期待してました?』
『………………少し』
『……そうですか』
そう秋人は期待していたのだ。
「仲間と思わせて実は敵でした!」的なものを。
まぁ、マップは味方って出てるし、クルスも反応しない時点で、そんな事は無いだろうとわかってはいたが。それでも少しは期待してしまう。
「ここだ」
そして突然ジンバは立ち止まり、そう言ってきた。
ジンバが立ち止まった前にはこじんまりとした。というか「店?」と疑問に思う様な外見だった。
(確かにお約束にはこいう店が意外とすごいところなんだろうけど……ぶっちゃけ入りたくない)
そうなんて言えばいいのか分からない。
でも何故か入りたくない。
そう思う。
それは嫌悪?
よくわからない。
でも、近づきたくない。
「これは! ……ジンバさん貴方はもしかして……」
「ほう、これを見ただけで分かるとはさすが最強に足を掛けた者じゃな」
「……」
「? よくわからないけど中に入ろうよ」
「……おぬしには効かないのか?」
「うん? なんか嫌な感じはするけど別に問題無いと思うけど?」
「……なぜそう思う」
「だって私の勘が大丈夫って言ってるもの」
「……はっはっはーーーーーーーーーッ! 問題無いか! これは一本取られたわい!」
「? よくわからないけど楽しそうだね」
「そりゃもうな! これほど楽しくなったのは久しぶりじゃ」
なんなんだあいつら?
この嫌な感じで、入りたく思う感じ。
クルスは大丈夫なのは置いとくとして、なぜ、アリサは平気なんだよ。
それじゃあ、俺よりアリサの方がすごいみたいじゃないか。
「勘が大丈夫って言ってる」からだと、大丈夫と分かっていても嫌な感じは消えないだろうが!
……嫌な、感じ……?
ちょっと待て! なんで俺に効いてるんだ?
その前に何で爺(国王)の時やクルスの時に俺は恐怖を感じたんだ?
おかしいだろ。俺には【状態異常完全無効】があるんだぞ!
嫌な感じや恐怖って状態異常だろ?
じゃあ、なんで俺は恐怖を感じた?
それに今も嫌な感じがする。
おかしい。なんで俺は不快感を感じてる?
なんで俺はこんなに動揺している。
『マスター【状態異常完全無効】は外的要因のみに発動するものです』
『外的? 今もそうだし爺やクルスの時も外的要因だろ?』
『う~ん、何て言えば良いんですかね? それにスキルもそこまで完璧と言う事では無いですし……』
『? よく分からんな』
『……【状態異常完全無効】は外的要因によって発動するものです。そこにマスターの感情の変化は関わりません。そして恐怖や嫌な感覚はマスターの感情の変化なだけで、外的要因にはなりません』
『つまり、ただ単に俺が嫌だと思ったり、恐怖を感じただけだと、状態異常に認識されないと言うわけか?』
『はい、そうでなければマスターは感情の変化が出来なくなります。それに【状態異常完全無効】は自分の意思でどうこうできるものではありません。まぁ、外的要因でも例外はありますが。例えば回復とかですかね。これが状態異常に認識されますとマスターは一切回復などが出来なくなりますから。それに「常態」では無く「状態」ですから(言葉ってすごい)。過剰に変化が無い限りマスターの感情に効力が発揮される事はありませんよ。でも例えば、恐怖で心が壊れる様な事があれば、さすがに効力が発揮されますが』
『ふ~ん、多分分かった。でもさ、俺の感情に変化があった時効力が発揮されないんじゃ、感情操作の時とかどうするの?』
『それは外的要因になりますから、効力が発揮されます』
『……俺恐怖感じたんだけど? それに今も嫌な感じがするんだけど。これ外的要因だよね?』
『恐怖はただ単にマスターの感情の変化なだけであります。もっと言ってしまえばマスターの忍耐が無いだけです。嫌な感じの方は、生理的嫌悪を増幅する効果があるだけで、人によっては大丈夫という事もあります。ただ……これを大丈夫と思う人はある意味逝かれています』
『? どいうこと?』
『誰もが嫌う物を増幅しているので、これが平気という事は……』
『……なるほど。誰もが嫌う物……つまりG的存在だな』
『そいうことです。でもなぜ人はあれを嫌うのでしょうか?』
『え?』
『あれは、栄養も高く、繁殖力も高い。これほどの好条件にもかかわらずなぜ人はあれを嫌うのでしょうか? マスター分かりますか?』
『……お前言ってる事が分かってるのか? あ、いや、いい。どうせお前の事だから分かって無いだろう。それと今お前、少しだけだが自分で自分の正体明かしたぞ?』
『え? あああぁぁぁぁぁぁぁ! わ、私としたことが!』
『お前人じゃ無いんだな』
『い、いえ、別にそいうわけではありません!』
『まぁ、いい。話を戻すがつまり【状態異常に完全無効】は俺の都合よくできてるわけだな?』
『……はい』
『そうか。それとお前やっぱりバカだろ』
『!? 「やっぱり」ってどいうことですか!』
『そのままの意味だよ。あとバカは否定しないんだな』
『~~~~~~~~~~ッ!』
てか、忘れそうになってたけど、この嫌な感じテメーのせいかジンバ。
クルス共々覚えとけ。
絶対後悔させてやるから。
(うん、すっきりした!)
それはともかく秋人とナビの会話はずいぶん長くなってしまっているがこれは問題無い。
まぁ、お約束の「思考が早くなり現実の何倍もの時間になる」という事ではなく、ただ単にあいつらがお喋りをしていただけだ。
内容は分からないが、どうやらアリサとクルスが喧嘩をして、それをジンバが止めようとしている。
(ジンバお前に同情なんかしないが頑張れ)
秋人はそんな3人の事はほっとき、勝手に店のドアを開けて入って行くのだった。
「お邪魔します」
さすが秋人。他人の事など気にしない。
「ちょっ! アキト!」
それに気付いたジンバが叫んだが、そんなことで秋人が止まるはずもなく店に入るのだった。




