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神殺しの英雄譚  作者: 漆原 黒野
第1章 旅立ち編
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第10話 買い物

 



 秋人の先導で歩いていたら、隣から質問が飛んで来た。


「あ、そう言えばさ、少し話しを戻すけど、お兄さんは最終的にどこを目指してるの? それともシュトリアの街に行くだけ?」

「うん? いや、違うぜ。最終的に目指しているのはクルス村だよ」

「え!? うそ!? それ私が目指してる1つ前の村じゃない! やっぱりこれは運命だわ!」

「え!? マジかよ! さすがの俺も運命感じるは!」

「でしょ! やっぱり私とお兄さんは出会うして出会った運命の出会いなんだわ!」

「かもな!」


 そう言っていつもなら否定するような事を秋人が同意したため、アリサは嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、アリサとはクルス村まで一緒に行動しそうだな」

「そうだね! ……それまでに取り込まなくちゃ」


 アリサは秋人に聞こえない声でつぶやくのだった。

 だがらと言って秋人が気付かないと言うわけではない。


(まぁ、今はこれで良いか)


 そう思う秋人だった。






「アクセサリーショップ?」


 そう、アリサの言う通り今秋人たちはアクセサリーを売っている店に居た。

 この店はそこそこ高級な店らしく売っている物はかなりすごいらしい。って言っても、俺はそんなにアクセサリーとかに興味無いから価値がよくわからないけど。


「そう。良いもんがあったら買おうかなって」

「へぇ~、女性にプレゼント?」

「あぁ、決めるのは俺だけど女性、アリサの意見も聞きたいかなって」

「ふ~ん、わかった。私に任せなさい!」


 そう言って秋人とアリサは店の中に入って行った。


「いらっしゃいませ。どんな物をお求めでしょうか?」


 この店の店員らしき男性が話かけてきた。


「えーと、女性にプレゼントしたいのですがどんな物が良いですかね?」


 店員は秋人の隣に居るアリサをチラリと見てニッコリと笑顔を向けた。


「あ、一様言っておきますが隣にいるアリサではありませんよ」

「あ、そうですか。これは失礼しました」


 そう言って店員は頭を下げて来た。


「……違うのか、残念」


 アリサがなんか言っているが小さすぎて聞こえなえないな。


「よろしければ私がいくつかお選びいたしますが、どうします?」

「そうですね、とりあえず良いのが無いか見てみます」

「ごゆっくりとお選びください」


 そう言って店員は何処かに行ってしまった。


「さて、アリサどんな物が良いかな?」

「う~ん、まず、渡す女性ってどんな人?」

「そうだな、頭がよくて綺麗な人かな」

「……それだけ?」

「説明するの苦手なんだよな」

「とりあえず、女の子がもらってうれしいものを選べば良いんでしょ?」

「そうだな。出来ればシンプルな物が良いかな」

「わかったわ。とりあえずいくつか選んでみましょうか」


 そう言ってアリサはアクセサリーが並んでいる棚に行き選び始めた。

 秋人はそのあとを追うように歩いて行きアリサが見ているものを覗きこんだ。


「髪飾り?」

「そう、女の子は髪を気にするからね、プレゼントとしては無難だと思うんだ」

「なるほど」


 そう言って秋人はアリサが見ている棚を見て見たが、どれも同じような感じに見える。多少、形や色が違うだけであまり変わらないように見える。


(はぁー、よくわかんねぇ)


 秋人はオシャレというものがあまりわからない。

 まぁ、だが、見る眼だけはあった(観察が得意だからだと思う)。

 そう思った秋人の目に1つの髪飾りが映った。

 その髪飾りは薔薇の様な形を明るい赤色だった。

 そうアリサに似合いそうな感じだった。


(これいいな)


 そう思った秋人はその髪飾りを手に取ろうとしたが、隣から声がかけられたため秋人はそちらを向いた。


「お兄さんこれなんてどう?」


 そう言って見してきたのは薄い青色の花の形をした可愛らしい髪飾りだった。


「う~ん、そうだな。可愛らしいというよりも綺麗って感じの方が良いと思うんだけどな」

「そう? これも良いと思ったんだけどな。ていうか、そいうのは早く言ってよね」

「悪い。俺オシャレとかよくわかんないんだよね。だからさ、アリサが頼りなんだよ。な、頼むよ?」

「もう、しょうがないな~」


 そう言ったアリサは母親の様な顔をしていた(これが母性本能?)。

 そして頼られたのがよほど嬉しいかった様で満面の笑顔で喜んでいる。


「お兄さんが送るんだから、しっかりお兄さんも選びなよ?」

「あぁ、わかってる」

「じゃあ、私あっちの方にある物見てくるから」

「わかった。俺はもう少しこの辺見てみるから良いのがあったら呼んで」

「了解」


 そう言ってアリサは歩いて行った。と言ってもほんの2、3m程だけど。

 秋人はアリサが近くに居なくなったため、先ほどの店員に意味ありげな目配せをした。

 店員はその意図を正確に読み取ったらしく、うなずくそぶりを見せた。

 秋人はそれを見て意図が伝わったと思い棚に向き直り、先ほど良いなと思った髪飾りを手に取りすぐに棚に戻した。

 秋人はそのまま次の棚に行き良いものが無いかを見るため歩き出した。


『……マスターわざわざこんな面倒なことをしなくて良いのでは?』

『まぁ、そうなんだけどな。やっぱ、こいうのは気分が大事だと思うんだよな。それに個人的にアリサとは仲良くしときたいからな。ステータスの件もあるし』

『マスターがそうおっしゃるならば別に構いませんが』

『それに折角現れたヒロイン的な存在を逃すわけにはいかないからな!』

『……そうですか。ですが、1つだけ忠告させていただきます。知らない項目がある方とはあまり関わらない方が良いですよ』

『……それはど言う意味だ?』

『何度も言いますが詳しくは説明はできません。ただ、関わっても余り良いことは無いとだけ』

『ふ~ん、そうか。まぁ、そんなのは結局どうでも良い事なんだけどな』

『どうでも良いんですかマスター? もしかしたらマスターの敵になるかもしれませんよ?』

『まぁ、そん時はそん時だ。はい、この話終わり。さて、アリサにプレゼントする物を選ぶとするか』

『……』


 秋人は次の棚にある品を見ていき良いものが無いか見て行った。

 別にこれはアリサのプレゼントに、と言う事では無い(アリサのプレゼントは先程のでいいと思う)。

 これからは探すのはそう、テンプレ的展開!

 ただのアクセサリーショップなのにチートアイテムがあった!

 やっぱり、これはテンプレ展開に必要不可欠な要素だ!

 さて、俺様に使われる幸運なアイテムはどこにいるのかな?

 だが、忘れてはいけない。

 この世界、ファンタジー世界だが、だからと言ってお約束が通用する世界ではないと。




 数十分後。

 結論から言えばこの店にチートアイテム的な物は無かった。


(なんだよ、なんなんだよ! お約束のはずだろ! 何でないんだよ! おかしいだろ!)


 秋人の理不尽すぎる物言いは誰に届くことも無くむなしく消えて行った。


『マスター。その無駄な期待はしない方が良いと思いますけど』

『わかってるよ。でも、それでも! 俺はお約束と言うものを信じたいんだ!』

『言ってる事はかっこいいですけど、それただ単にマスターがテンプレに会いたいだけですよね?』

『そうとも言うけど、でもさ、異世界に折角来たんだからお約束ってのを経験してみたいじゃん。楽しみたいじゃん』

『……はぁー、好きにしてください』


 ナビはあきらめたようにため息をついて言ってきた。


『もとより俺の好きにやるけどな』

『そうですね。私にマスターの行動を制限する事は出来ませんもね』

『そいう事』


 付き合いはまだ短いがしっかりと俺の事をわかっている感じのナビに少し評価を上げるのだった。


「お兄さん良い物あった?」

「お! アリサ。こっちはそこそこ良い物見つけたけど、そっちはどうだった?」

「うん、いくつか良い物があったよ」

「そうか。で、どんな物だ?」

「とりあえず、こっちに来て」

「了解」


 そう言ってアリサの後について行く秋人。

 そこには透明な(当たり前)ガラスケースがあり、その中の1つを指をさして説明してきた。


「まず、1つ目はこれかな」


 そう言ってアリサが指をさしているものは先程と同じ髪飾りの様だ。

 その髪飾りは先程と違い美しいと表現出来る程に綺麗な物に見える。

 そして形は星の様な形をしていて、色は濃い青色のブルー。

 星の形をしたその中心には黄色に光る宝石(?)が取り付けられていた。

 さながらこれは夜空に光る星の様だ。

 綺麗で。

 美しく。

 気高さが感じられた。


「すごく良いじゃん!」

「そうでしょ、そうでしょ! でも、値段がね……」


 アリサは秋人に共感をしてもらえて嬉しそうにしていたが、値段の話をした瞬間その元気が一気に亡くなった。

 確かにこれほど綺麗なら、さぞ、お高いんだろうと思って値札を見てみたら、なんと驚き2万9800コルだった。


(た、たけーーーー! なんだ、これ! アクセサリーってこんなに高い物なのかよ! 日本円にした約30万円だぞこれ! さすがにこれは無いは)


「い、いや、さすが高すぎない?」

「まぁ、一様このガラスケースに入ってる物は全部これくらいの値段だよ。と言うか、この店自体そこそこ高級な店だから」

「あ、あぁ、今実感してるは……。でも、安いやつもあるだろ? さすがにこの値段は買えないな」

「やっぱり、そうだよね。出せる金額聞いてなかったから一様ある程度、値段はばらばらのを選んどいたから」

「お! それは助かる。じゃあ、そうだな、5000コル位かな。これでもそこそこ良いの買えるだろ?」

「うん、大丈夫だよ。この店意外と安い物も置いてあるから」

「よかった。じゃあ、5000コル以下で良いのがあったら見してくれ」

「うん、わかった。こっちだよ」


 そう言ってアリサは安いものが置かれている棚の方に向かった。

 秋人は歩いている状態でものすごい冷や汗を流していた。


(さっきの、髪飾りいくらだ? さすがに手にとれるような感じだったからそんなに高くはないと思うけど、万が一があるからな。大丈夫だよな?)


 そう秋人は先程の髪飾りがいくらなのかを見ずに店員に意味ありげな視線をやったのだ。


(あんなことやっといて「高くて買えませんでした」なんて事無いよな? そんなことになったら恥ずかしいなんてもんじゃ無いぞ)


『大丈夫ですよマスター先程の髪飾りは1000コル程です』

『そ、そうか。よかった~』

『さすがに高いものをあんなところに置くことはしませんよ』

『1000コルでも、十分高いと思うけどな』


「2つ目はこれだね。値段は5000コルちょっとだけど良いよね?」

「あぁ、あくまで大体そんぐらいってだけだから」


 今度は髪飾りではなくネックレスの様だ。

 それはすごく綺麗ではあるんだが、俺には何が良いのかわからないような物だった。

 キラキラと輝いていて目が痛い。

 こんなものつけていたら眩しくて気が散る。


「いや、これはないな」

「え!? うそ!? これ良いと思うんだけどな?」

「そうか、なんかキラキラし過ぎでうっとしいだろ」

「えー、それが良いんじゃないの?」

「いや、無いな」

「そうかな?」


 これが男と女の価値観の違いだな、と思う秋人であった。




 それから、いくつかアリサに紹介してもっらったが、良いと思う物は無かった。


「4つ目なんか良いと思ったんだけどな……」

「いや、あれは違う気がする。綺麗ではあったが」

「うー、じゃあ、お兄さんは何買うの?」

「そうだな、実はもう買う物は決まっているのだ!」

「な、なんだってー! 折角私が選んで上げたのにもう、決まってるって、そんなのないよ。で、どんなの買うの?」

「まぁ、何を買うかは秘密。と言うわけでアリサ、外で待っててくれ」

「ちぇ、見してくれたって良いじゃん。お兄さんのケチ」

「まぁ、そういわずに、な」

「はぁー、しょうがないな」


 そう言ってアリサ渋々と言った感じで店の外に行くのだった。

 アリサがこちらを覗き見ていないかを確認した秋人は先程意味ありげに視線をやった店員に話しかけた。


「すいません」

「はい、こちらですよね?」


 そう言って店員がアキトに渡してきたのは赤色の薔薇が着いた髪飾りだった。


「あ、はい、そうです。ありがとうございます。それでいくらですか?」

「980コルです」

「じゃあ、1000コルでお願いします」


 そう言って秋人はポッケから1000コルを出して店員に渡したのだった。


「はい、確かに。今お釣りを持ってきますね」

「あ、いいですよ。連れを待たせているんで。それに面倒なことをさせてしまいましたから」

「そうですか、では、ありがたくチップとして受け取っておきましょう」

「そうしてください。では、自分はこれで」

「はい、ありがとうございました。またのお越しを」


 そう言って店員は綺麗に頭を下げるのだった。

 秋人はそれを見て後、店を出るため扉に向かうのだった。

 店を出た秋人は周りを見まわしてアリサがどこに居るのかを探した。

 そしてアリサはなんとクレープを買ってこっちに向かっているところだった。

 ちなみにこの世界の料理はかなり進んでいて日本、と言うか地球の食文化にも届こうかといった感じだ。あと、転移者なのか転生者なのかはわからないが、地球の食文化もあるみたいだ。米もその1つらしい。(byナビ)


「お前何してんの?」

「クレープを買ってただけだけど? あ、はい。これお兄さんの分」


 そう言ってアリサは左手で持っている、チョコクレープをこちらに渡してきたのだった。

 ちなみにアリサのはイチゴだった。

 てか、チョコやイチゴもこの世界にあるのかよ。


「え? 俺の?」

「当たり前じゃん」

「でも、良いのか?」

「良いの、はい」


 そう言ってアリサはクレープを突き出して来た。

 秋人はそれを受け取りお礼を言うのだった。


「ありがとう」

「どういたしまして」


 その顔は満足げな顔だった。

 秋人はそれを見て、またしてもドキッとした。

 アリサのこいう飾らない顔はすごく綺麗で大人っぽかった。

 確かにあざとい感じも、それはそれで良いが秋人的には飾らないほうがよかった。


「お前……」

「うん? どうしたのお兄さん?」

「いや、何でもない」

「そう?」

「それよりさ、帰りに少し寄って行きたい場所があるんだけど良いか?」

「さっきも同じ事言ってたよね。まぁ、別に良いけど、でも本当に時間無いよ?」


 今の時間は5時10分前。

 あと2、30分で日は落ちきる様な時間だ。


「あぁ、大丈夫。すぐ終わるから」

「なら良いけど」

「それじゃあ、着いて来て」

「わかった」


 そう言って秋人とアリサは歩き出した。




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