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第1話 目覚めと確認

 ボクは、自分の意識がゆっくりと覚醒に向かうのを感じていた。

 あいまいだった手足の感覚が戻り、閉じていた瞼も、ピクピクと動かせる。

 ついさっきまでは、熱いも寒いも感じなかったのに、今は五感から情報が流れ込んで、ボクの新しい脳に刺激を与えてくれる。

 やがて、肉体の感覚が、全てはっきりと認識出来るようになった。


 そして、ボクは目を開いた。


 見えたのは、必然であるかのように、見た事のない部屋の天井だった。

 同時に、今のボクが仰向けに寝ている事と、寝ている場所が柔らかなマットレスに白いシーツが敷かれたベッドの上だという事も理解出来た。

 窓から日の光が差し込んで、室内を明るく照らしてくれている。


 「ここが、異世界なのかな?」


 そう呟いたボクの声は、今まで聞きなれた自分の声とは若干違う声だった。声変わりしたのかしないのか、判断に困るような、子供っぽい声だ。

 ボクは、ベッドに手を突き、ゆっくりと上半身を起こして、自分の新しい身体を観察する。


 目覚めたばかりのボクは、真っ裸だったから、細部まで確認するのに、問題はない。


 ボクの新しい身体は、やはり子供の姿をしていた。

 手足の動きには違和感を覚えないので、身長は生前と同じくらい。まあ、百六十センチに届くか、届かないか、そのくらいだ。

 おそらくは、年齢も十四歳のまま。


 でも、大きく違っている特徴もあった。


 まずは、肌の色が違っている。

 死ぬ前のボクは、勿論普通の日本人だった。肌の色は、ありふれた黄色人種のそれだ。

 だけど、今ボクの目に映る自分の手足は、綺麗に日焼けしたような、薄い赤銅色に輝いている。

 明らかに、今までのボクとは、肌の色からしても人種が違っている。


 ボクは、部屋の中を見回した。

 壁際に、大きな姿見の鏡が置かれている。

 ボクは、ベッドから降りると、床に敷かれた毛織物らしい絨毯の上を素足で歩き、鏡に近付いて、新しい身体の全てを確認した。


 予想通り、大きな姿見の鏡に映ったボクの姿は、生前の自分とは完全に別人だった。 


 肌は薄い赤銅色。髪の毛は、肩の下まで伸びた輝く金髪。大きな瞳は、澄んだ湖水のような蒼色をしている。

 それに顔立ちも、生前とは違う。

 元々のボクは、可愛い男の子などと近所のおばさん達から言われるような、童顔だったけど、この新しい身体に付いている顔は、それどころじゃない。


 睫毛が長く、パッチリと開いた大きな蒼い瞳、形良く整った小さな鼻梁、周辺の肌の色よりも色素が薄い桜色の唇。

 それらが、子供の顔の輪郭の中に納まっている。

 首から上だけ見れば、ボクでも男か女か、判断に迷うような、認めたくないけど可愛い子だった。


 それに、身体つきも変わっている。


 無駄な肉の無いしなやかな手足は、不健康ではないにしても、細い。それこそ、女の子のように華奢な体型だ。

 元々のボクだって、逞しいとは言えなかっただろうけど、もう少しは男っぽかった筈だぞ。

 あるべき物が付いているから、確かに男だとは断言できるけど、これがなかったら、ボクも生まれて初めて恐怖で泣いたかもしれない。


 「……あの、『何か』は、何を考えているんだ?」


 どういう方向に面白がられているのか、判らない。

 こんなボクを見て、腹を抱えて笑っている姿が幻視出来そうだ。


 ボクは憮然とした表情を作って、新しい身体の観察を終えた。 


 さて、いつまでも裸でいる訳にも行かないよね、まずは着る物を探さなくちゃ。

 その為に、部屋の中を改めて見回すボク。


 この部屋は、二十畳くらいはありそうな広さを持っている。

 床には複雑な文様が織り込まれた絨毯が敷かれ、三人くらいは寝れそうな大きなベッドに、机と椅子、本棚、大きな箪笥も置かれていた。

 窓には、ガラス戸が嵌められ、カーテンが取り付けられている。

 白い壁は、漆喰が塗られているらしい。


 異世界と聞いて、ボクはゲームに良く出て来る中世ヨーロッパ風の世界を想像してたけど、この部屋の調度品を見る限り、結構文明度は高いように思えた。


 取り敢えず箪笥の中を覗くと、今のボクにピッタリと合いそうな服や下着、それに靴なんかがたくさん納められていた。

 シャツやズボン、下着に靴下、ベルトや手袋、寝間着、部屋履き、履き易そうな靴。そんな品が一式揃っているのだ。


 ボクは、木綿だと思うパンツを穿き、シャツを着た。

 特に暑くも寒くもなかったので、紺色に染められた丈夫そうなズボンを選び、革のベルトを締める。

 足には靴下を穿いて、革の靴も履いた。

 これで、ようやく人前に出られる格好になれたよ。


 「えーと、まずは状況を整理しないといけないよね」


 服を着たボクは、ベッドの縁に腰掛けて、誰に言うともなしにそう呟いた。

 すると、まるでこの瞬間を狙っていたかのように、ボクの頭の中に、知らない知識が溢れ出した。


 「うわっ! 何だ、これっ!?」


 咄嗟に両手で金髪を押さえて、ベッドの上で、ボクはもがき苦しんだ。

 それでも、この記憶が、予めこの身体の脳に刷り込まれていたものだという事は、理解出来た。


 この新しいボクの身体は、名前をアオト・セイレストと言う。

 両親は、近隣諸国にまで名を知られた英雄的冒険者だったが、二か月前にこの世を去った。

 他に身寄りは無く、天涯孤独となったアオトは、親の遺産を相続してこの館で一人暮らしをしている。

 この館は、ジルドリア王国の堅牢な城壁に囲まれた、王都フォーセスの一角にある一軒家だ。

 地下室を持つ二階建てで、そこそこは広く、部屋数も十以上はある。


 他にも、このアオトという少年が生きて来た、十四年の人生の記憶が、ボクの中に蘇って来る。

 両親の事、出会った人々、街や国の知識、話す言葉や学んだ文字や学問、どれも早回しで映画を見ているような感覚だったけど、意外とすんなりボクは受け入れる事が出来ていた。


 「今日から、ボクが新しいアオトなのか。今までのアオトは……、元々存在しなかったのかな?」


 流れ込んだ知識を受け止めたボクは、アオトの事を、いや違う、アオトはボクだ。

 このアオトは、あの『何か』が、世界の一部を書き換えて用意した、文字通りの異物なんだ。

 多分、関係者の記憶や、街のあらゆる記録が改竄されて、アオトが最初から存在していたようにされている筈だ。


 「ボクを物語の中に滑り込ませる為に、本の中にページを付け足したんだね」


 凄い権限の作者だよ。例えるなら、書店で売っている自著に、作者だからって勝手に修正を入れるような暴挙だよね。

 ボクは、改めて思う。

 あの『何か』は、悪魔だったんじゃないだろうかと。


 「でも、ボクもう契約しちゃったしな。気を取り直して、まずは情報の整理をしよう。まず、ここは異世界の大きな街。所謂ファンタジー世界って言う場所だ」


 気にしても仕方ない事は、気にしない。

 折角別人になれたんだから、ストレスなんて御免だよ。

 ボクは、嘆くよりも新し知識の検証を優先する事にした。


 この世界の名前は、ラン・ヴァース。

 地球とは異なるが、大陸があって、海があって、様々な生き物がいる事は変わらない惑星だ。

 知的生命体も、人間だけじゃなく、定番のエルフやドワーフの他に、魔人、獣人、蜥蜴人、鉱石人なんて種族もいて、共存と対立を行いながら暮らしている。

 科学はそれ程発達していないけど、魔法や魔石を使った文明が発達しているので、結構生活レベルは高いらしい。


 そして、この世界には、危険なモンスターも存在しているそうだ。

 地下迷宮や古代遺跡、辺境の大地や、謎の秘境なんかにモンスターは生息していて、人間や他の種族はモンスター達と戦っている。


 そうした場所を探索し、モンスター退治や宝探しを職業としている人達を、冒険者と呼んでいるんだね。

 この世界のボクの両親も、そうした冒険者の一員で、かなり有名な人だったらしい。


 冒険者や、国々の兵士達が戦う為に使うのは、勿論武器と魔法だ。

 剣や槍、斧に弓矢という、定番武器を振るい、鎧を纏い、盾を構える戦士達。

 炎や氷の魔法で敵を撃ち、風で矢を逸らし、岩の巨人を操り、光で傷を癒し、闇の呪いで敵を弱らせる魔法使い達。


 剣と魔法のファンタジー、その王道を行くような設定の世界に見えるね。


 その上、これはゲームだと、全力で主張するような特徴も、この世界の常識として刷り込まれている。

 そうだよね、なにせ、ステータス画面が呼び出せるんだもんね。


 「まるっきり、コンピューターゲームと同じ発想なんだよね」


 知識にあった通りに、軽く念じた瞬間、ボクの身体の前に半透明な板のような物が現れたんだ。

 それは、手で触っても通り抜けてしまう、幻影の存在。

 この世界の、モンスターでは無い知的生命体なら、誰でも必ず呼び出せる、自己の分身。

 それが、ステータス画面だった。

 画面には、ボクの現在の状態が表示されている。


 名前 :アオト  年齢:14  性別:男  種族:人間

 レベル:300

 HP :13795/13795 MP:13765/13765

 筋力:582 敏捷:592 知力:591 精神:587 生命:586

 幸運:583

 所有スキル

  神威執行Lv★ 光魔法 Lv★ 闇魔法 Lv★ 剣術  Lv★

  格闘術 Lv★ 密偵術 Lv★ 野伏術 Lv★ 軽装備 Lv★

  命中強化Lv★ 回避強化Lv★ 肉体強化Lv★ 運動強化Lv★

  魔法強化Lv★ 攻撃強化Lv★ 防御強化Lv★ 筋力強化Lv★

  敏捷強化Lv★ 知力強化Lv★ 精神強化Lv★ 生命強化Lv★

  幸運強化Lv★ HP増加Lv★ MP増加Lv★ 魔法破壊Lv★

  異常耐性Lv★ 世界知識Lv★ 二刀流 Lv★ 宝物庫 Lv★

  鑑定  Lv★ 表示偽装Lv★


 「えーと、表示ミスなんて事は、無いよね? ミスじゃないなら、思いっきりチートってやつだよね、これ」


 ボクは、ステータス画面に表示されている自分の能力を見て、その異常さにちょっと引いた。

 確か、あの『何か』は、世界を引っ掻き廻せる『特別な力』をサービスしてくれるって言っていたけど、このステータスが、その力な訳なんだね。


 「レベルが300か。これって明らかに異常なレベルだよね」


 新しい知識に検索をかけてみると、この世界のシステムに関するものが、ボクの頭の中に浮かび上がって来た。


 ラン・ヴァースでは、レベルはスキルLvの合計によって決まる。

 スキルは、得た段階ではLv0だけど、地道に修業を積んだり、モンスターを倒した時に放射されるという、魔素と呼ばれるものを身体に取り込んで行くと、1レベルずつ上昇して行く。

 その習熟の段階は、0から10を意味する★まで進む。

 Lv0は、そのスキルを持っているだけで、何の恩恵も無い状態。

 Lv1で、見習いと呼ばれ、Lv3で一人前。

 Lv5になると、達人と認められて、Lv7にもなると、極めて優秀な達人であり、その存在は希少になって行く。

 Lv8が凡人の限界と呼ばれ、Lv9ではその分野における国家的な第一人者になる。

 そして、スキルLvがMAXの★に至った者となれば、それは半神半人の神話級の英雄であり、世界的な有名人と呼ばれるそうだ。


 ボクは、そのスキルを三十個も持っていて、全てのスキルがLv★になっている。

 だから、レベルは300。

 この時点で、神話の英雄を超える怪物じゃないの、これ。


 「HPとMPが、一万超えてるし、能力値も全部500以上だもんね」


  HPとMPは、レベルの上昇によって、通常10前後上昇する。

 能力値も一緒で、レベルアップ毎に、確実とは言えないものの、各能力が1点ずつ上昇する可能性を持っている。

 レベル0の人間のHPとMPは、通常10前後。

 能力値は一桁が精々というのが、この世界の一般常識だ。


 それに比べて、ボクの数値が異常に高いのは、全部スキルの恩恵らしい。


 神威執行、肉体強化、魔法強化、精神強化、生命強化、HP増加、MP増加、これらのスキルによって、レベルアップ時に、HPとMP、それに能力値の上昇にボーナスが付いているのだ。

 その結果が、異常な数値に表れている。


 低レベルのうちに、これらのスキルをMAXにして、ボーナスの恩恵を最大限に貰えば、レベル300に達した時に、こんな数値になってしまったんだね。


 これって、軍隊と戦っても負けないんじゃないかな。


 「でも、全部のスキルがMAXって事は、新しいスキルを得ない限り、ボクはこれ以上レベルアップ出来ないって事だよね。まあ、する必要もなさそうだけど」


 スキルLvの合計でレベルが決まるのだから、スキルが無ければ、或いはLvがMAXなら、それ以上レベルアップしないのは理解出来るよね。

 そんなラン・ヴァースでスキルを得る手段は、今のところ三つ。


 誰でもそうらしいけど、生まれた時には必ず一つは何かのスキルをLv0で持っている。

 人間はランダムだけど、各種族は、それぞれ種族固有のスキルに加えて、何かのスキルを持っていて、時に、二つ三つのスキルを持った赤ん坊も生まれて来るらしい。

 

 後天的にスキルを得るには、修業や学習、仕事を通して、技術や知識を学ぶという手段が一般的なんだ。

 時間は掛かるけど、古代から実証されて来た手段であり、ほとんどの人達は、このやり方で自分が望むスキルを手に入れているそうだ。


 そして、三つ目の手段が、スキルを付与出来る魔石の使用だ。

 稀に発見されるらしい、スキルの魔石を使用すると、その人は即座にスキルをLv0で得られる。

 一番確実で、時間も掛からない手段だけど、この魔石は基本レアアイテムで、あまり市場には出て来ない。

 見つけた人が、自分で使う事が多いらしいね。

 それでも、売れば大金になるし、よりレアなスキルの魔石なら、それこそオークション行になる。


 という事は、ボクは当面新しいスキルは得られないって事か。

 まあいいさ、今の時点で多すぎる、高すぎるっていうスキルとレベルなんだから。


 「じゃあ、次はスキルの確認かな」


 ボクは、ステータス画面に羅列されているスキルの一つ一つの効果を確認してみた。


 まずは、神威執行。

 うわ、これが一番ヤバいスキルだ。

 勇者だ、勇者のスキルだ。それとも、あの『何か』が悪魔なら、魔王のスキルと言っても良いかもしれない。

 神威執行のスキルには、レベルアップ時に、HPとMPの上昇にLv分がボーナスとして加算され、能力値も1点上昇する効果があった。

 これがあるだけで、HPとMPは3000点くらい余計に加算されているし、能力値も300点上乗せされているんだね。  

 このステータスの異常な能力値は、これのせいだったんだ。


 気を取り直して、二つの魔法スキル、光魔法と闇魔法を見た。


 光魔法は、様々な光を生み出して、傷を癒したり、防御力を高めたり、敵を攻撃したりといった、冒険者にとっては、必須とも呼べる回復系や治癒系の魔法を使用出来る、重要な魔法だった。

 一般には、聖職者と呼ばれる人達に使い手が多いから、聖なる魔法なんて呼ばれ方もしていて、冒険者の間でも光魔法の使い手は、一目置かれた存在になっているそうだ。


 それとは反対に、闇魔法はと言うと、傷を負わせたり、敵の能力を下げたり、HPやMPを奪ったり、或いは、毒や病気、呪いなんかのバッドステータスを与える系統の魔法なんだって。

 その使い手には、邪悪な者や闇の眷属が多いので、有効性は知られているものの、一般からは忌避されているらしい。


 ボクは、この光魔法と闇魔法を、どちらも最高位の術者として扱えるんだね。


 剣術は、その名の通り、刃の付いた剣や刀、短剣なんかに分類される武器を取り扱えるスキルだ。

 Lvが高ければ、命中やダメージにボーナスが付き、特殊な剣技も使用出来る。

 これが、MAXという事は、ボクの剣技は剣聖クラスなんだね。なるほど、なるほど。


 格闘術は、素手や格闘武器で戦うスキル。これもMAXだから、ボクは、拳王でもあるのか。


 密偵術、野伏術は、迷宮や遺跡、野外を探索する時に、罠を発見したり、解除したり、宝箱の鍵を開けたり、敵を追跡したり、気配を消したり、或いは、隠れている相手を見つけたり、危険を察知したりと言う、冒険者の必須スキルだ。


 剣と魔法を極め、それに密偵であり、野伏でもあるボクは、ソロでも活躍出来る万能型の冒険者になれる訳だ。


 軽装備は、布や革で出来た防具を身に着けた時に、その防御力にボーナスが得られるスキル。

 強化系のスキルは、その名前の通りに各能力を強化してくれる。

 命中、回避、肉体、運動、魔法、攻撃、防御、全てにおいてボーナスがMAXだ。

 能力値を強化するスキルもあるから、ボクの能力値は、どれもステータス画面に表示されている数値よりも、100は高いようだね。

 HP増加とMP増加は、レベルアップ時に、HPとMPの上昇にボーナスをもたらすスキルで、今のボクは、なんだかんだでレベルが1上がると、HPとMPが、50点前後増えるんだ。


 魔法破壊は、触れるだけであらゆる魔法効果を解除出来る特殊なスキル。

 異常耐性は、眠り、恐怖、毒、麻痺、病気、石化、封魔、魅了、即死なんかの色々なバッドステータス効果への耐性を高めるスキル。

 世界知識は、百科事典のように、世界のあらゆる知識を与えてくれるスキルだ。

 専門分野の知識系スキルには詳しさでは劣るけど、その雑学の範囲は広く浅い。それでも、ボクのLvはMAXなので、そこらの賢者よりも多くの知識は引き出せそうだね。

 二刀流は、両手にそれぞれ武器を構えて戦う技術を与えてくれるスキル。

 宝物庫は、ステータス画面を使って、荷物を虚空に収納する事が出来るスキル。

 鑑定は、他人のステータス画面を調べたり、品物の正体や能力を知る事が出来るスキル。


 そして、表示偽装のスキル。

 これも反則の特殊スキルだね。

 その効果は、ステータス画面の偽装だ。

 ステータス画面の数値を書き換え、スキルの存在を隠蔽、或いは追加して、本来よりも強く見せる事も、弱く見せる事も出来るという、世界の常識をひっくり返すようなスキルだった。


 「なるほど、このスキルがあれば、ボクも普通の人を装える訳なんだ」


 あの『何か』も、結構考えているじゃないか。

 感心、感心。


 なんて、思うと思う?


 「うん、良く判ったよ」


 一通りのスキルの効果を確認したボクは、笑顔で深く頷いた。

 でも、この笑顔は、ボクにとっては無表情を意味しているよ。


 「アイツ、絶対にボクに平穏無事な人生を送らせる気は無いって事が、良く判った」


 何が『特別な力』だよ、何がボーナスだよ。このステータスとスキルは、滅茶苦茶じゃないか。

 過ぎたるは及ばざるがごとしって言葉くらい、ボクだって知ってるよ。

 こんな力、厄介事しか生まないじゃないか。


 この世界で自由に生きて構わないだって? 何も干渉しないだって?

 勇者になっても、魔王になっても良いだって?


 じゃあ、ボクの結論を言うよ。

 勇者になろうか、魔王になろうか、勿論答えは決まっている。


 「どっちも嫌だっ!!」











 









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