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小夜は嬉しそうに僕の結ったところを撫でるのだった。
「えへへ」
羽衣は小夜の反応に対して嬉しそうに笑う。
「今までは小夜先輩はこうもはっちゃけてくれることがすくなかったので嬉しいっす!」
「僕は何もしていないよ」
「……ふむ、どうやら周先輩と小夜先輩の秘密がわかっちゃったっす」
羽衣は笑みを一転し、僕の顔を神妙に見ながら呟く。まさか、僕が男だと気付いたのだろうか。確かに服については見られているし、下着については苦しい返答をしているがここまで怪しまれるだろうか。
しかしそれは杞憂で斜め上の返答を頂く。
「もう、二人は恋人なんすね!」
僕は椅子から落ちかけた。ちいろはあちゃーっといった顔をしている。
「……あのね。僕はお、女なんだよ」
「この世には同性愛があるっす!」
駄目だ。色々と駄目な子だ。
「ほら、失言したからお酒だ。酒の席だ周も許してやってくれ」
面倒見が良いちいろはこの場を流した。
流してくれてすごく助かったが、羽衣はどうも妄想癖が強いようだ。この学園に入ったのもまさか……心理的距離をまた一歩広げておいた。お姉さまが見つかると良いね。うん、僕の知らないところで見つけて欲しい。
「さあ、再開っす!」
酒を一気に飲み干すと、嬉しそうに割りばしを僕に向けてきた。
実はというと、割りばしの回収した順番と雑なシャッフルだったため知っている。
「はい、僕が王様。三番の人がモノマネをする」
「自分っすかー!?」
ちょっとした仕返し気分。
「えっと、ではでは。ちいろ先輩の武勇伝シリーズから一つ。抜け駆けをしたファンが突発的に叩かれそうになったときに言い放った言葉っす」
「あ? おい、馬鹿やめろ!」
「それは…………私のためか?」
羽衣の満足げな顔に僕は思わず笑ってしまった。
「ちぃ!」
不機嫌そうに言い放つと、黙って酒を二つ入れられた。
僕と羽衣らしい。