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甘さがひかえめのクリームが、中の果物の甘さを引きあげる。
うん。これはうまい。
それに、口当たりが軽く口の中に残りにくい。
「美味しいだろ?」
都和に聞かれ、素直にこくりと僕は頷く。
「お気に入りのケーキ屋なんだ。今度、一緒に行こうな」
再度頷いた。楽しみだ。
僕が夢中にケーキを食べていると。
「餌付けされてる……」
楔がぼそりとそんなことを言った気がする。聞かなかったことにする。
デザートを食べきり、少し談笑しているとお酒の脱落者が早くも見つかった。
「んんー……なのじゃ」
姫城さんだった。身体が傾いている。頬も赤い。
「本当にお酒だったのか」
「シャンパンよりアルコール度数は低くしているんだが、炭酸入りとはいえ早いよな」
ぐてーっとしている姫城さんを立たせ、都和が介助しながら部屋から出ていく。
「手伝おうか?」
後ろから声をかけるも。
「良いさ。私がしたんだから」
「のぅ……」
都和は僕の申し出を断った。自分の後始末は自分でするらしい。
僕は何も言わず見送ることにした。
姫城さんを横にしてまでお酒が飲みたかったのだろうか。
「ん!」
都和がいなくなって大胆になったのはやはりというか小夜だった。
僕の膝の上に乗ってくる。別に重くはないし、拒みはしない。
「酔ってるの?」
「まだ、三杯ですよ?」
いつの間にか僕の見ていないところでお酒が進んでいた。
「飲みますよね?」
くるりと僕の方を上目遣いで見てそんなことを言う。
絡み酒なのだろうか。いつも通りの気もする。