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僕は困りつつも適当に八等分に切った。
「美味しそうです」
そう言ったのは小夜で、中は確かに果物が何重にも入っていて手の込みようが期待を煽る。
切った後は綺麗にちいろが皿に並べて手渡してくれた。
「シャンパンでも開けますぜい!」
ノリノリの都和。取り出したビンは明らかにお酒に見えるが、姫城さんはケーキの方に注視しており止めることは出来なかった。ちいろと楔がしっかり見ていたので水を差すのもなんなので僕はあえて飲み込んでおいた。
楔が用意したグラスの半分に都和が明らかな白ワインを注いだ。それにちいろが炭酸水を注ぎ入れる。
これでカクテルのスプリッツァーの出来上がりである。って、出来てはいけないのだが。
僕は小さな声で都和に聞く。
「お酒は二十歳からなんだけど大丈夫なの?」
「ダイジョウブダイジョウブ。ゼンゼンオサケジャナイアル」
「……せめて、小夜と羽衣と姫城さんはジュースとか」
「小夜は年上だぞ?」
あ、そういえばそうだった。いや、知っていてわざとなんだけど。
なんて少し話している間に、グラスが皆の手元に行き渡ってしまった。止める隙がまるでなかった。
「酒癖が悪い子なんていないよね」
「……」
頼む。都和、こっちを見てくれ。
「ここまで来たら同罪だから」
「そんな不吉なことを今言われても」
「それでは、周の二日目を祝してー」
斬新なことに二日目なのを祝すらしい。つっこみはしない。
「かんぱーい!」
杯を軽く上げ、僕はもう深く考えずに口に含んだ。
甘く、ほとんどただの炭酸ジュースのようだった。
「お高いやつですんでね」
都和はしたり顔をする。
本当にお酒なのだろうか。いや、あまり飲まないようにしておこう。
次にケーキを口にする。