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「ちょっと確かめさせて」

「嫌です」

 羽交い絞めになりつつあるが、僕は男の子。さすがに拘束を振りきれる。

 いや、本気で来られたり体勢が悪いと出来ないけれど。

「もしかして昔会ったかなーって。その子はお腹に傷があったからさ」

「僕のお腹は綺麗だよ。善玉菌もちゃんと悪玉菌より多いから」

「腸内環境じゃないぞ」

 そりゃそうだ。

 携帯電話を拾う。幸いにも画面には傷が付いていない。最先端の技術万歳。

 この間も隙あらば抱きついて来そうだったので発想を柔軟にしてみる。

「触られるくらいなら見せてあげるから」

 僕は制服の上着を捲る。

 少し官能的だがいやらしいことをしているわけではない。

「んー」

 まじまじと真剣な表情で見られる。

 少し恥ずかしい。

「そのまま触らないでよ」

 勿論、今僕が見てもお腹に傷はない。

 勘違いだ。誰と勘違いしたのだろうか。それはともかく、その子は男か女かどっちだったのだろうか。

 だが、諦めの悪い都和はさらに顔を近づける。

「もういいでしょ。僕でも恥ずかしくないわけじゃないんだか……ひぃあ!?」

 お腹にキスをされた。

 反射的にパーが出て、屈んで見えた背中に遠慮なく強打する。

「いっ、たー!」

 自業自得だ。僕は直ぐにお腹を隠す。

 なぜこうも僕はセクハラされるのか。

「僕の中での都和の好感度が下がりました」

「目の前に良い肌があったのなら、口にしたいのが女だ!」

 駄目だこの子。冗談なんだろうが、冗談に聞こえない。

 男だったらきっと女性の敵であっただろう。

「……前頭葉機能が弱いの?」

「えへへ」

「褒めていないって」

 結局、こんなくだらないやり取りに時間が大分かかってしまった。

 携帯電話は一人で取りに来れば良かったかもしれない。

 別にそんな悪いとは思っていないけれども……ってその考えはちょっとこの環境に毒されているかもしれない。

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