90
「ほ、本当ですか?」
疑われた。
それもそうだろう。武器を持った犯人に丸腰で立ち向かうがごとくの差があったし。
「千華には勝ったよ」
あのままでは裏千華には負けていたが千華に対しては僕の勝ちだ。そうでなければ報われない。
「えっ、めくるめく桃色の修行しましょうよ?」
「……参考までに僕が天想代力を使う修行って?」
「能力が溢れるまでちゅーして、漏れ出た能力を使って慣れていく練習です」
最悪、都和の中の子に苦戦するようなことがあれば僕は天想代力を自在に扱えるようにならないといけないのだろうか。少し、頭が痛くなる。
「お、周ー。帰ってたのか。心配していたんだぞ」
考えているところに都和が二階から降りてきた。
そしてそのまま笑顔を絶やさずに僕の横を通り過ぎていく。
「ちょっと、待って」
小夜に押し倒されている場面に出くわしたからって、そんな優しい表情で行かないでくれ。
「小夜ももういいでしょ?」
「は……はい!」
急に人が来て驚いたのか我に返ったかのように恥ずかしくなって、袖で顔の半分を隠そうとする。
でも降りようとはしない。
「小夜?」
「だって……」
腰が抜けていた。
僕は呆れつつ、ぐるりと強引に小夜との位置を変える。
「えへへ」
嬉しそうだ。
「よいしょ」
立ち上がり、僕は都和と向かい合わせへ。