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「え、ああ」
歯切れが悪かった。
訝しげに都和の顔を見ているとばつの悪い表情をした。
「気を悪くして喋らなくなると思ったのに、そんな気持ちを刹那に砕かれた私の気持ちになってくれよ」
「僕はそんな小さい心の持ち主じゃないって。長いものに巻かれるタイプの人間だから。それにしても、学園を出たときは夥しいくらいの人だったのにこの辺りは全然人の影がみえな……あの都和さん。こっち見て目を合わせてもらえますか?」
事なかれ主義で、望むは植物のような人生な僕でもさすがに看過出来なくなってきた。
僕にとってのトラブルメーカーになりつつある都和に対して、威圧するように睨めつけていると。
「わー、寮に戻ってきたぞおー」
そんな風に棒読みて、先程からちらちらと視界の隅に気になっていた洋館を指さした。外観は僕の中では寮というよりかは別荘といった方がしっくりくる。外観の顔である赤茶色のレンガの外壁は手入れが行き届いているためか汚れは然程気にはならない。さらに洋館を印象付ける大きなガラス窓はいくつもの小さな窓が合わさって作られたかのように芸術的だ。建てられた場所も場所だからか威厳あるようにも見えるし、まだ建てられて間もないようにも見える。