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「次に沢山当たると晩御飯が食べる時間がずれてしまうので降参して頂けるとありがたいのですが」

「……」

 僕は何も言わない。

 代わりに身体の動作をチェックする。幸いにも力が抜けるのは左腕だけであり、足腰や体力には直結していないようだ。

「なにをしておるんじゃ」

 沈黙を破ったのは姫城さんで僕の横を通り、千華と対面した。

「伊織様。お久しぶりです」

 先程、ナイフを投げつけて来たとは思えない程に柔らかい対応で少し戸惑う。

「転入性いじめかの?」

 語気がやや強い。

 冷静なタイプかと思えば違うのかもしれない。

「伊織様、そんな鋭い目をするのは止めて下さい。私は怯えてしまいます。ただ、寮の平和と楽しさを求めているのです」

 ちらりと千華は僕の方を見る。

 説明に困り助けを求めているようにも見える。

 勿論、説明はしない。僕は不利な状況に陥っているので巻き込むことに決めた。

「な、周様!?」

 寮の方向ではなく山の中に向かって走った。

 がむしゃらに後ろを振り返ることをせずに。

 足音が一つになったのを確認し、丁度良く見つけた大木の後ろ側に隠れ背中を預けた。

「ふぅ……」

 一息。耳を澄ませるが人的な音はしない。あるのは木々が葉を揺らす音と、沢が近くにあるのか水の音、生き物の音は虫以外に聞こえない。

 どうやら捲けたようだ。

「やはり、持続しない」

 僕の目が長時間持続しないように身体面の強化もあまり持続されないようだ。

 あのときすぐに発動されていれば負けであったが、一瞬の隙をつけて良かったと思う。

 さて、姫城さんはどう動いてくれるか。

 僕の見立てでは中立に近い味方だと思うが。

 言ってても仕方ないか。

 とりあえず、刺さりっぱなしのナイフを抜こう。

 深々と刺さっている割には痛くなく、抜いて出血はおろか傷跡もない。それどころか、皮膚に刺さったのに服も破れていない。

 どういう原理なんだ。

 これで武器を手に入れたが一本。それも当てる場所をかなり選ばないと無効化出来ないものだ。

 体力自体を数の概念で回復されては敵わない。

 ではどうするか。

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