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「そうは言っても、使い方と言うよりどうすれば能力が発動するのかわからないんだって」
制御不能なのはここに来る前に聞いている。
車を持っていても動かなければただの箱だ。しかし、不幸にも僕はその車がなんらかの原因で動いていたところに僕はぶつかっている。
「だから、この場所に来たのは何か考えがあってなんだよね?」
「うん!」
良い返事だ。しかし、目線は明後日の方向であり僕は全く安心出来ていない。
「この件はクーリングオフで頼みます」
「都合を付けて断るさ。まずは携帯電話の電源をオフ」
将来は悪徳業者にでもなればいいのに。
思わず項垂れる。
それを見た都和は僕を少し励まそうと頑張る。
「ほら、女の園に来たんだからハーレムを作るとかあるだろ?」
頑張りの方向は僕には理解できない。
「僕は枯れているんで……」
「その歳でかよ!?」
さすがに人間なので性欲がないとは言い切れないものの、性別が違う今ではそんなところに割く余裕はない。
結局のところ、日が暮れてお金のない僕に選択肢なんてあってなかった。観念して歩くしかない。二酸化炭素が足に巻きついたかのようにちょびっとだけ重たい足を引きずり魔の巣窟へ。
「しかし……森って感じだね」
見たまんまの感想を口に出す。アスファルトで舗装されているとは言え、この学園は山の中に程近いので周りに木が多い。広葉樹だろうが、僕にはこの木の種類がなんなのかはわからない。