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 さすがに否定するのは失礼なので手伝ってもらうことにして僕は後悔する。

「ええっと、こうすればよろしいでしょうか?」

 そういって、僕の前に周り抱きつくようにして小夜を抱えようとする。

 どう考えてそう思ったのかは謎だが、僕に上半身を預け過ぎて逆に重くなっているんだけれども。

「……ぐっ」

「ぐ?」

 飛び出た悲鳴を僕はなんとか胸先で押し殺す。

 完璧、不意打ちだ。小夜が小さいことと、千華が大きいせいで豊満な部分がぶつかったのだ。

 ゆっくりと距離を置き口を動かす。

「……良い。その格好じゃ前に歩けないし。扉だけ開けてくれる?」

「はい」

 小夜とは違った意味で無垢だ。

 そういえば、小夜と千華は高校三年生か。

 どちらも真逆の意味で見えない。

 絶対誤魔化しているか、能力の弊害だと睨んでいる。

 飛び級って言ってもらった方が幾分気が楽だ。

「ところで周様」

 階段の方で僕は問題発言を聞くことになる。

「その身はいくらでしょうか?」

 耳を疑ったものだ。

「なに?」

 聞こえなかったことにしてみた。

「周様の身柄はおいくらですか?」

 丁寧に聞かれた。

 僕は精神的なガードを下げたことを後悔した。

 さすがに階段の中腹で身体の向きを後ろにするわけにはいかず、首だけ後ろを向ける。

 おだやかな笑みは変わらずで。千華は僕の方を見ている。

「……」

 僕は真意を測りかねていた。

 敵性と思われたのか、はてさて気に入られたのか。

 突飛なことを言う人だと思っていなかった分、ショックも大きい。

「小夜を送ってからお返事をお聞きします」

 僕は予防線として起こすべく弱く小夜の背中に爪を立ててみる。

 だが起きない。全くといって。

 肝心なところで役に立たないかもしれない。


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