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「いや、これが恋愛シミュレーションゲームなら周ルートが出来たのかなーって」
「いつフラグを立てたのさ」
呆れて物が言えない。
「冗談はさて置いて」
「冗談しか言えてないよ。それでなに?」
「目の戻し方ってどう教えればいいのかなーって」
頭の切り替えが早過ぎて目の色が変わっていないことに対して気付かなかった。なったらなりっぱなしかよ。
目を数回パチパチしてみるが都和は首を横に振る。あまり意味がないようだ。
「どう治してるの?」
「え、人前で言うのは恥ずかしい……」
科を作ってわざとらしくクネクネする。僕はそれを見てから食堂のドアを開けた。
「にょあ!?」
どうせ皆この目をしているんだ。
隠しているよりかは情報が集まるだろう。
「おはようございます」
楔が柔和な笑みを浮かべながらやってくる。眼鏡の奥の瞳は僕の瞳をばっちり見ている。僕が小さく頷くと楔は軽く失笑してから言葉を紡ぐ。
「遅かったですね。急いで来られたと思うので目を閉じ深呼吸をして心を落ち着かせてから中にお入り下さい」
「?」
やってみてから気付いたが、どうも目の色を戻す方法らしい。
楔的には僕の作戦は無いみたいだ。
「はい、中へどうぞ。今日は手巻きのようにしてあります」
手巻き。朝から寿司かと思ったが違った。
長いテーブルの上に大皿でフルーツやチョコやジャムといったトッピングが所狭しと並んでいた。
手巻きと言うよりは耳を落した食パンを使っているのでサンドイッチに近い。