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 呟きながら僕は布団で都和の肢体を隠す。

「いや、起こすけど」

 揺さぶり、声かけをしてなんとか覚醒させる。

「くっ、こんなところにも能力の弊害が」

「都和の元からなんじゃないの?」

「よくわからんなー。低気圧でもないのに」

「低血圧って言いたかったわけ? そうだとしても低血圧と目覚めの関係はないって言うよ。都和も着替えて下に行って顔でも洗おうよ」

「んぁ」

 布団から手を生やしてくる。それは着替えさせてくれといわんばかりだ。僕は優しさの代わりに制服を放り投げた。

「つれないな」

「甘えないの」

 僕は都和に対し、背中を向けて手でなんとか寝癖を真っ直ぐにしてみようとするがどうも綺麗にならない。ヘアアイロンがいるのだろうか。いっそ、髪を洗うのも悪くなさそうだが。

「よっし、ばっちし」

 都和が着替え終わったので僕らは顔を洗うべく脱衣所の方へと向かう。

 タオルは置いてあるのを使わせてもらおう。

「よう、おはよーさん」

「……おはよー」

 脱衣所にてちいろに遭遇した。

 朝風呂に入ったのか髪は乾いているが身体から湯気が出ている。

「周は朝に弱いのか?」

「テンションは上がらないけれど、苦手でもないよ」

 だから、その櫛を片手に僕に近寄るのは止めてほしい。

「んー」

 都和は都和でおざなりに手でちいろに挨拶をすると、そのままちいろの横をすり抜けて顔を洗い始めた。

 ちいろはというと簡易な椅子を持ってくる。

「座るか?」

「良いです。自分で出来ますから」

 櫛を貸してもらい、数分格闘。

 僕の長い髪の毛は全くデレない。

「あー、目が覚めて来た」

 都和は寝癖が少なく、軽く手で梳くとデレていった。ちいろの犠牲にはならないのか。

「……う」

 背中からちいろの無言の圧力を感じる。

 僕は鏡越しにちいろを見た。

 手をわきわきし始めている彼女の目は左目が赤く、右目が青い。

「うぇ!?」

「どうした周?」

 鏡越しに見てるから目の色がいつもと違うのか。

「な、なんでもないです。今日は髪をお願いして良い?」

「ふん、仕方ないな」

 乱雑に言うがちいろは嬉しそうであり僕の髪を触り始めるのだった。

 髪の触り方は手慣れているのか特に気になることはないが目の色が変わっているため緊張する。

 まるでエレベーターで刃物を持った人と一緒になってしまったかのようだ。

 人格は変わってはいないようだが、すでに五秒は経過している。全然楔の忠告が活かされていない。むしろ聞かなかった方が精神衛生面を考えると良かったのではないのだろうか。

 都和はというと、コンタクトを装着し始めていた。

 目が悪かったのか。

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