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「あ、周さん……!?」

 都和の横の部屋のためか小夜が出たところにばったりと会う。

 どことなく慌てている様子だ。

「どうしたの?」

「うぅう……」

 じーっと僕の方を見るも彼女からは僕に話しかけようとはしない。

「どうしたのって」

「その、えっと……」

 先程は強気に僕に攻めて来たわりには僕以外を相手にしているかのように弱気だ。人格変化を考えたが、目の色はオッドアイではない。顔は真っ赤だが。

「あの、ちょっと待って下さい」

 目を閉じ胸に手を当て深呼吸一つ。

 そして小さく口を動かし、目を開ける。

「ふー、こんばんは周さん!」

 さっきとは打って変わってテンションが上がっている。目の色は変わらず。

「えっと、単純に精神統一法ですから気にしないでください。こんなことでもしないと私は周さんに大胆に好き好き言ってられませんから」

 そういっても小夜の顔は変わらず真っ赤であり、あんまり効き目はなさそうだった。

「ちょうど寝ようかと思ってたところでしたので、周さんも一緒に寝ませんか……?」

 口元を隠しながら言うも、後半に行く程に声量が低下し聞きとりにくかった。

「こっちが恥ずかしくなるから言わないでよ」

「それでも……です!」

 強い子だと思う。

 ヤンデレ気質だが。

「明日、話の続きを聞かせてもらっても良い? それとお手伝いの方もお願いしたいんだけど」

「構いませんが……んっ」

 語気は弱いが、手を伸ばし少し口を僕に近づける。

「……」

 いや、いやいやいや。

 こんなのさすがに条件として飲み込めないぞ。

 五秒経ち小夜の手がどんどんと引っ込み、顔に不安な表情が浮かびつつあるので僕は決心して踏み込む。

「小夜……」

 ハグをしつつ。

 僕は当てるようにキスをすることに決める。

 とはいえ唇なんて出来るわけもなく目標は頬だ。

「あにゃ!?」

 計算違いだったのは僕からのハグに驚いたことである。片足を半歩後ろに行ったところで顔が少し横を向いた。

 それに伴い目標の場所が動き、僕の避けようとしていたところにわずかにかする。

「ご、ごめん」

「……じ、人生最良の日です」

 そういって小夜は膝から崩れ落ちるようにしゃがみこむ。腰が抜けたらしい。

「部屋まで送ろうか? お姫様だっこして欲しいって言ってたし」

 無言で激しく頷く小夜。

 顔は真っ赤で羞恥が強いためか両手で隠そうとしている。

 ひょいっと都和と違い軽すぎる小夜を抱え、僕は中に入りベッドに下ろす。

 なにかして欲しそうな潤んだ目をしているが、してしまったら小夜は死んでしまう気もしたので最後に軽くだけ頭を一撫でして部屋から出て都和の部屋に戻った。

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