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移動距離わずか。都和の部屋に帰室。
健やかな寝息がベッドから奏でられていた。
起こすのも忍びないが三十分後に起こす約束があるので僕は彼女の横まで行って声をかけた。
「都和ー?」
返事はない。
一歩踏み込み耳元で声かけしたが反応はない。
さすがに揺さぶってわざわざ起こす程ではないと思い、僕はベッド脇に座りしばらくぼんやりすることにした。
穏やかな時間が流れ、気付けば楔との約束時間になってしまった。
最後に部屋から出るときに都和の名前を呼んだが起きなかったので僕はそのまま手ぶらで部屋を抜け出し脱衣所に向かった。
下手をすれば小夜と出会うことも考えられたが、それは杞憂であった。
「誰もいない」
一応、お風呂場の方も覗いたが誰もいなかった。
約束時間十分前。
ちらりと視線の片隅に映った備え付けのバスタオルとタオルは沢山置いてある。
「……」
僕は手早く服を脱ぎ脱衣かごに服を押しこみ風呂に入ることにした。
中は先程見たとおり広く、湯船は同時に三人が入っても苦ではなさそうだ。
蛇口の数も三つあるので最大六人は入れそうだ。
「というか、このお風呂場は誰の趣味なの?」
檜風呂。
良い趣味だと思う。
木と照明の効果もあり、浴室はとても落ち着ける温かい色合いになっている。
ゆっくりと入るのも悪くはなさそうだが、楔の約束もあるので残念ながら急いで入らないといけない。
とはいえ、折角の湯船だ。入らないのはさすがに勿体無い。
僕は雑に頭と身体を洗い流し、ゆっくりと肩まで浸かった。