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反省はしないけれど。
「それで教えてくれる?」
「構わないですが、何をですか。質問を受け付けますよ」
小夜が嘘を吐くとは考えにくいが、まずは外堀から。
「能力のメリットとデメリットについて」
「んー、そうですね。メリットはその能力に応じるのでなんとも言えないですがデメリットは大きく分けて三つくらいですかね。周さんはこのデメリットが何かわかります?」
「一つは目の色が変わること?」
こくんと小夜は小さく頷く。
僕をベッドに座るように促すと彼女は椅子を持ってきて僕と正面に並ぶ。僕が椅子の方で良いのだが話を脱線させたくないので口を動かすことを続ける。
「もう一つは……身体が乗っ取られることで良い?」
「その考えで良いと思います。ですが、私は特にそんな変わることも乗っ取られることもないので、能力元によると思いますよ?」
意外だった。
ということは小夜に関してはこの二つ目の縛りはないらしい。
「小夜ってノーリスクで運用できているの?」
「ヒミツです」
可愛く言っても見逃すわけはなく、ほっぺたをぐーっと左右に引っ張る。
「言いなさい」
「えへへー」
構われて嬉しそうに笑う。
小夜はわざと秘密なんて言ったのだろうか。そうだとしたらやはり僕には扱い切れない子だ。
「このまま周さんの推理も聞きたいですが長くなっちゃいますので補足説明していきます。一つ目は外見変化です。目の色が変わり次に体型や髪が変わります。これは能力が扱いやすくなるようにだと私は思っています」
僕は納得し、頷く。
そういえば能力を扱う前や使っているときはオッドアイだ。しかし、身体的変化には気付けていない。沢山の能力を使ったときに変化が出るのだろうか。
「もう一つは勝手な解釈ですが解離性同一症(多重障害)に似ていると思います。どちらが前に出るかを競っているんだと思います。私の場合は頑なに出ませんけれど」
声を聞いたこともないという。
意思疎通していないとのこと。
「ですから私のデメリットはいつこの爆弾が目覚めるかですね」
無邪気に笑う。
「心配していないの?」
小夜は笑みをそのままに頷く。
「十年前、出てくる状況に陥って助けてくれたのが周さんなんですよ?」
僕を恐れているので出てこないらしい。
僕が一体十年前に何をしたと言うのだろうか。人間違いではないのだろうか。
「本当に僕だったの?」
「はい。証拠もあります」
「えっと、あーそうか。つまりその爆弾が恐いから僕の近くにいるってこと?」
小夜に睨まれた。全然鋭い目つきではなく、むしろ微笑ましいが僕は笑わずに素直に謝る。
「ちょっぴり心外です」