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僕は都和の反転に巻き込まれて女の子になっている。
都和は能力をコントロールが出来ず、人格が乗っ取られそうになっていることに悩んでいる。裏千華がこちらの身体でというので人格は裏千華が乗っ取ろうとしているのではないかと予測される。
能力者の戦いは僕のような一般人が介入できる速度ではなく、身体的損傷以外を主としており物理的な損傷は元通りになる。
能力者は少なくとも都和と小夜と千華は確実であり、楔も持っているのではないかと推測される。
僕の目的はシンプルで男に戻ること。
「裏千華がきまぐれに僕を男にして都和に手を出さないことに決めてくれたら解決するのになあ」
言うは易し。
「お待たせしました」
小夜が戻ってきた。
無垢な笑みを浮かべるのは変わりなく、やはり佇まいは可憐とも言える。こんなにも僕が頑張って褒めているのに。
「さあ、私をお姫様だっこして下さい!」
残念な子にしか見えないのはなんでだろう。人がいると内気だし。
「小夜」
「はい!」
「それぐらいはしてあげるから落ち着きなさい」
「あぅ……」
お預けを喰らった犬みたいに目は僕に必死に語りかけていたが僕はその眼光に負けず部屋の案内を頼んだ。
二階の奥から一つ手前。都和の部屋の横である。
室内は女の子らしく甘い色を使った配色だと思う。片付いているが小物類は多く、ベッドの上には普通の枕が一つに抱き枕が二つ、クッションが一つと雑貨屋に置いてあるようなでかいデフォルメされた猫がスペースを圧迫させていた。
「よいしょ」
自然に鍵を閉める小夜。確かに邪魔が入られる心配はあるが僕は少し身の危険を感じた。じーっと鍵を閉める動作を見ていると小夜は慌てて弁明してくる。
「いや、だから無理強いはしませんって……私ってそんなに信用ないですか?」
「わりと……」
曖昧に言葉を濁しておいた。
「わりとどっちなんですか!」
踏み込んできたが曖昧にしておいた。
「御想像にお任せします」
「……」
僕から二メートル離れた。どうもネガティブに捉えたようだ。
「信用されるまで近づきません」
ちょっと涙目だった。さっきは僕が無理に巻き込んでしまっているのにさすがに可哀想だと思い直し、僕は手を伸ばす。
「冗談だってこっち来なさい」
「むう」
今から教えてもらう立場なのでここでヘソを曲げられても困る。
僕から近づき、小夜の頭を撫でた。
嬉しそうな声なき声を発する小夜の表情の変化を見ながら妹と同じ扱い方をしてしまったことに気付いてしまう。中学の悪友は女性の頭や髪を無闇に撫でないようにと言っていたがアドバイスは上手く活かせなかった。許せ友よ。