表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/210

42

 僕は悩むふりをして少しだけ時間を稼いだ。

「んー……どうしようかな」

「にゃー? 悩まれるとはなー。破格なんだけれどもにゃあ」

「だって、刃物を持つ人にお願いする気にはないないよ」

「じゃあ、ぽいー」

 そういって、裏千華はボーリングを投げるとき同様に後ろに振りかぶるような優しいフォームでナイフを放り投げた。

 様々なデザインの刃渡りの短いナイフが足元に散らばる。

「はりはりー。時は金なり。沈黙は禁なり。勇ある弁を吟じてどーぞー」

 丁度、そのときに僕の背中に回っている手に力が入ったので僕は扇風機よりも遅く首を横にした。

「ふふーん。きっと後悔して、いつか自分にかっと来ますにゃー」

 ふと目元と口元を鋭くすると裏千華は僕の目の前から消えた。

「ぐっ!?」

 背部に白打。

 にぶい衝撃ではなく、ビンタのような熱い衝撃を受けた。

 それはまるで僕の選択を責めるようである。

 僕が咄嗟に後ろを振り向こうと横を向いたとき、僕の視界が縦に一回転した。

「あとは任せて下さい!」

 小夜が僕と立ち位置を変えるために背負い投げをしたのだ。

 衝撃はないものの僕は咄嗟の二つの出来事に混乱した。

 あまりに桁外れた戦闘に巻き込まれ身動きできなくなった。

 達人の試合に初心者が巻き込まれたなんて温いものではない。高速道路に置かれた亀の気分だ。ただ、右往左往するしかない。

 ふと気付けば僕の足元にはおびただしいナイフが落ちていた。

 いつ投げたかも、そもそもあまりに速過ぎてどちらがどちらかわからない。

 恐らく逃げても仕方ないのだろう。

 成り行きに身を任せるしかなく、僕はこのとき後悔した。

 選択肢ではなく小夜を無理やり巻き込んでしまったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ