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「僕は僕なりに仕事しないとね。じゃあ、小夜の部屋で話をしようか」

「むふー」

 僕の背中に顔を押し付け大絶賛匂いを嗅いでいる小夜さん。

 客観的に見れば美少女なのに大変残念な子だと思う。

 前を向かせ、少し離れる。

「あー」

 名残惜しそうだが、僕は話を聞きたいのだ。

「えっと……なんでしたっけ?」

「小夜の部屋に行こうって」

「ま、まだ一緒に寝るには早いですよ? いや、断るなんて全然!!」

 そういう話じゃないし、そういうことじゃない。

 折角小夜から教えてくれる気になっているのに、頭の中が花畑になっているので話が異空間に飛んでしまいやすい。

 誰かがいた方が話が進むのではないだろうか。

「あや」

 目の色がスーッと元の色に戻った。

 オッドアイではなく元の薄い赤色だ。

「その目も含めて話をしてもらうからね」

「はい」

 小夜はにこりと笑う。無邪気な笑みを浮かべながら、邪気が含んだ提案をしてくる。

「役に立ったら、キスをしてもらっても良いですか?」

「それは……」

 なんともリスクリターンがバランスが悪そうだ。

 ここまでしないと情報がもらえないと言うのなら楔を素直に待って良さそうだけども。

「悪いけど小夜」

 僕が断りの返事をする前に小夜は僕に向かって倒れた。

 遠慮なく。

 それは親愛のハグではなく、バランスを崩したように。

「あ……!」

 小夜は口を必死に開けるが呼気は放出されず、音として波打たなかった。

「初めましてー。深山裏千華みやまうらちかちゃんでーす!」

 自分で自分に向けて拍手をしながら登場した。

 乾いた音が周りに響く。

 彼女の体型は都和によく似ている。背が高く、胸が主張的。違うのは都和より女性的で丸みを帯びたシルエットをしているため安産型だと思われる。この評価が正しいのかは悪友だった同級生に聞かないとわからないけれど僕の中ではそう思った(楔は彼女を苦手としていたけど)。

「裏千華?」

「そうそう、裏千華ちゃんです」

 パジャマのボタンを大胆に外しているのでちらりと見える黒い下着が目に毒だ。さらに特筆すべきは肌は病人を彷彿とさせる青白い肌をしており、ナイフを両手の指の間に計七本もっているところだろう。

「裏千華ちゃんも挨拶したいって言うのに都和ちゃんが意地悪するからこの子で来ちゃいましたー」

 裏千華は裸足の足でゆっくりと僕の前にやってくる。

 小夜を抱えているので僕はそれを見るしか出来なかった。

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