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廊下に出て人気がないことを確認し、僕は都和に確認する。
「呪いってなに?」
「遅いってこと」
それは鈍い。
都和は抜けているのか切れ者なのか未だに判明しない。後者だと信じているが。
「誰に聞いた?」
都和は僕の方を見ないで尋ねる。
剣呑な雰囲気を醸し出された。
あれ、聞く相手を間違えたのかもしれない。
少し歩いてしまったことを後悔し、僕は攻める。
「都和以外にも僕にこういうことが出来る人がいるの?」
「うふふ」
さっきの危険な雰囲気を台無しにする笑い方だった。楔の演技指導が入っているかのようだ。
「なぜ笑った!?」
僕は思わず柄にもなく大声を出してしまう。感情が乱れてしまった。
小走りで逃げる都和を追い適当な部屋に入る。
大きな扉だとは思ったがまさか中が風呂場だとは思わなかった。
「風呂場なんだけど」
扉に何かプレートでも貼って置いて欲しい。いつか間違えそうだ。都和の部屋にはあるというのに。
「周、風呂場じゃなくてここは衣服を脱ぐ脱衣所だ」
正確に言うとそうだけど。僕が言いたいのはそうではない。
「……商談を上手く持っていくためには立ち話ではなく、座る必要があるんだよ?」
「フローリングの上に座るか?」
わざと言っているのだろうか。
もしかしてはぐらかそうとしているのだろうか。
「僕が言いたいのはこんな落ち着かないとこで話をしたくないってこと」
「勘違いされては困るが私に情報はない!」
「……っ」
ないのか。
そこまで思わせといてないのか。
どっと疲労が押し寄せる。
「天想代力について知りたいなら小夜に聞けば良かったのに」
聞きなれない単語が出てきた。
頭の中で漢字に中々変換できない。
「天国の天に、想像の想に君が代の代。これで天想代だ」
注釈が入った。
頭の中でその言葉を脳に刻む。
「その、天想代力って?」
「人の想いを自分の力に変換すること」
「つまり?」
「自分の願いや人の願いを使って私だったら反転させることになるんだ」
人の願いを事象にする力だという。
能力発現の原動力はわかった。
「じゃあ、僕が強く男の子に戻りたいって思えば僕の願いを都和が能力に代えて元に戻せるの?」