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「美味い。もう一杯!」
都和は少し落ちつけ。
お腹が落ち着くまで楔とちいろと小夜が片付けているのをのんびりと見ていると。
「どうもっす!」
都和が席を立つのと入れ替わりに遅れて来た子が横にやってきた。会話ですでに名前はわかっている。
絹屋羽衣。
一つ下の後輩気質な女の子だ。ノリが良い年下だから気軽に話せる。
「羽衣は手伝わなくて良いの?」
「周先輩こそ」
「僕はまだお客様だから良いの」
「おおう、僕にもそんな時代はあったっす。でも、今は遠い昔……そう、二か月前!」
案外近い。当然と言えば当然だが。
「僕は料理担当ではないっすから」
「料理が下手なの?」
「違うっす。レパートリーがないっすから」
「例えば?」
「カレーとハンバーグだけっす」
確かに少ない。でも、その二つが作れればもっと何か出来そうだが。
「料理の勉強しないの?」
「僕が勉強したところで……」
ちらりと視線を外す。その先には楔とちいろ。確かに料理上手な人が二人いては作る気にならないだろう。
「むっ……」
後ろから服の端を掴まれた。
「小夜?」
「……作れるから」
嫉妬したようだ。別に好きな相手が料理作れなかったら僕が作れるようになるだけだけどそこまで好きな女の子が出来るかの方が問題だ。
「んんー……!」
僕が曖昧な反応を見せていると小夜は後ろから抱きついてきた。可愛いとは思うけれどもそれは犬猫に向けるものと同じ感情だ。
「おおう、小夜先輩が懐いておられる……これは明日は大雪っすね」
小夜の行動は後輩にも言われる始末である。小夜は学校で孤独なのだろうか。
羽衣の言葉を聞いて小夜のハグが強くなった。小さくても柔らかな胸が僕の背中に感触を伝えてくれているが、まだまだ微笑ましいレベルである。あまり言いたくはないが成長するのだろうか。
「一緒に……お風呂に入りましょう?」