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僕はフォークを持ちながらなんとなく八人目の情報を手に入れようとする。喋ってないと質問攻めにあっても困るし。
「んぇえり!」
ちらりと見た都和の口はリスの頬袋となっていた。そこまで口に入れたのなら無理に喋らなくて良いのだけど。ていうか、箸で食べている。食器の並べ方からして食事マナーが必要かと思われたがそうではないらしい。外側から食器を選ぶ必要が無くなり一安心し、僕も箸を持った。
都和の返答を待つべく口の中の物が無くなるのをゆっくりと待っていたが、都和はどんどん口に運んでいく。
「……」
「んあ、あまね。たへないふぁ?」
どうやら食事中はあまり話さないようだ。
「……姫城生徒会長」
話さない都和の代わりに正面の小夜が答えてくれた。先程いやらしいことを口にした子とは思えない程の変貌でやはり戸惑う。
「あの忙しそうな会長さんなのか」
「会長はあんまりこっちの寮に来ません……」
家でも仕事があるのだろうか。僕はフォークに刺した魚の切り身を口に放り入れつつ思案。ということは基本は僕を入れて七人しか寮にいないことになる。
その後は雑談タイム。基本的に話しているのは僕と都和(食事後半は口を開いてくれた)とちいろで、内容は特筆すべき内容はない。それでも都和が寮にお酒を持ち込んだ日に限って生徒会長が寮に来た話やちいろが自分のファンクラブを壊滅に持ち込んだ話は食卓を明るくさせ、ご飯がとても進んだ。
「ぐぅ……きつい」
その結果、動けない程になってしまった。いつもはしっかりコントロールしているけれども美味し過ぎた。
「たくっ、小食だな」
ちいろはそう言いながら水を入れてくれた。
爽やかな香りのする水のためか口の中がさっぱりした。
「水の中に入れてあるハーブが消化を手伝ってくれるからゆっくりしてろ」
ぶっきらぼうだが、やはり気配りが細かい。