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「トイレ行くときにだよ」
特にやましくはないので正直に答える。
「トイレの中で?」
「なんでさ。トイレの中でだったら変態でしょうが」
先程僕は楔に入られたけれど。そこは置いといて。
「何か気になるの?」
ちいろからワイングラスを受け取りながら対応する。まさか形状からしてワインを入れられるかと焦ったがお茶を入れられた。高いお茶なのだろうが、ワイングラスに茶色は似合わない。
「んー、小夜が初対面で懐いているから」
懐いているだけでこの言われよう。もはや主人以外に懐かないペットのようだ。
少し呆れた表情を小夜に見せたが、嬉しそうに笑うだけだった。
「先輩方、遅れて申し訳ないっす!」
六人目が大きな声と共に楔と部屋に入ってきた。青味が濃いツインテールは彼女の激しいお辞儀ですごい飛び方をしている。外見は運動が得意そうなスレンダーな体型で快活な表情をしているのが特徴的だ。
時間に遅れてしまったこともあり食事を開始するためにも一旦席に着かされたので自己紹介する時間はなかった。
「もう一人は遅れてくるので先に食べていて欲しいとのことでした」
楔はそう付けたし、小夜の横に座った。
食事前の挨拶は都和が立ち上がり行った。
「姫小百合寮に新しい仲間が一人きてくれました。転校生であり、周囲の環境に戸惑っている彼女なので私たちが手伝っていきましょう」
なんともくすぐったい挨拶だった。
その後は、義務教育のように皆で手を合わせて食事にありつくことへ。
「頂きます……って七人目は遅れてくるとして八人目は誰なの?」