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「ここに住んでいるのは何人なの?」
都和はにっこり微笑んだまま立ち上がり、僕の視界からフェードアウトしてしまう。
都和についてわかったこと。都合が悪いとゆっくりと逃げたり、やんわりと話をそらす。反応がわかりやすく、嘘を吐かないところは好感が持てるが話を詰めないといけないので手間がかかるのが面倒だ。
「待って待って、逃げないでよ」
僕はソファーに座ったまま振り返り、都和の方を見る。
都和は困った顔で小さく口を動かし末広がりと言う。商売人には嬉しい数字だが僕は嬉しくない。
「八人しかいないの?」
「……周を入れて」
ということは、僕と都和と楔と小夜ですでに半分は顔を知っているということになる。逆に人が少ないのはありがたいのでここはぐっと飲み込んでおこう。それより、すでに半数近くが僕の性別を知っているのはどうなんだろうか。
「じゃあさ、こんだけ広いなら僕も部屋があっても良いよね?」
「別に良いけども、掃除しないといけないからすぐには無理だな」
確かにこんだけ広ければ掃除の手が伸びないか。それにお嬢様であると掃除するのも人任せだろうから特にかという勝手な想像が働く。
別に僕は姫小百合寮に長居するつもりはないので都和の部屋で我慢する方が疲労しないので部屋については諦めることにする。
諦めたと言った際に都和が口角を上げたところは僕は見逃さない。
「私がここに連れて来たんだから、何でも頼ってくれよ」
頼もしいことを言いながらも。
「出来ればセクハラをやめてくれる?」
「やだ」
僕を困らせる気満々だった。
都和が携帯電話を弄りだしたので、僕はそのままソファーにもたれかかり疲労回復に努める。後ろには倒れないが柔らかなソファーは心地よく、目を閉じると安らかに眠れそうだ。
しばし、目を閉じているとふと視界が暗くなった。
部屋を暗くしたわけではなく、都和が僕の前に立っていた。
「寝るつもり?」
「意識を手放したいの……」
少しだけ静かにしてくれればすぐ意識なんて手放せますので気にしないで欲しい。
「夕食食べてからゆっくりしようぜ?」
「……まだ早くない?」
「食事を並べるのも淑女の嗜みさ」
それよりも食事の用意を手伝った方が淑女っぽいが。