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「あまり人付き合いは得意ではないのです……」
小夜はコミュニケーションに難ありだった。
芝居モードの楔に対して距離を置くから相当だ。
「将来苦労しそうだね」
感情を込めずにさらりと言うと思わぬ反撃を受けた。
「周さんのところに永久就職させて下さい」
僕の顔を上目遣いで見ながらそんな恥ずかしいセリフを言われて僕の方が大ダメージだ。それはそれなりの層には効果が見込めただろうが、僕には効果をなさない。小夜は客観的に見たら可愛いだろうが僕の趣味ではない。といっても自分でも好きな女の子のタイプなんてわからないんだけども。
「僕にそんな会社のコネはないよ」
さらりと返し、僕は手をパーにする。小夜は名残惜しそうにゆっくりと一本ずつ指を広げ、離れた。迷惑にはなりたくないと思ってか。
「それじゃあ僕も用意があるから。またあとで」
「はい、夕食のときに」
小夜は遅々として廊下を戻っていく。まるで呼び止められるのを待っているようだが、僕はその後ろ姿に声をかけようとはしなかった。ただ、小夜はちらちら見てくるので曲がり角まで僕は目を離せないでいた。
万が一に付き合うとしても中々価値観が合わないため苦労しそうと他人事のように考える。一緒に過ごしても苦痛ではなさそうだが。
前を向き直し、正面には都和の部屋。
扉に鍵を入れる穴はなく、薄い隙間があるのでどうやらカードキーらしい。
一緒に住むと言っても今はカードがないので僕は近くの呼び鈴を押した。廊下には何の音も響かないが、扉が開いたところをみると鳴っていたらしい。
「はいはーい」